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"成人式に消えた母と十三着目の振袖" 第10話

島で母が選んだ名

黒島へ向かうは1に2便しかなかった。紗季は弁護士を通じて島の役へ連絡し、奈津子へ会いたいというだけを伝えてもらった。居所を聞きして突然訪ねれば、母が娘にしたことと同じになる。会うかどうかを本に決めてもらうため、返事を3待った。

届いたのは、《港の待所、午2。1で来てください》というい連絡だった。差名は川奈津子で、偽名ではない。紗季は葵にも真壁にも同を頼まず、証拠の原本は持たず、聞きたい質問だけをノートへいてに乗った。

待所の隅で、のカーディガンを着た女性が古い漁師用の着を縫っていた。髪はほとんどく、胃の術で痩せた体は10よりさく見えたが、針を布へ通すに糸先を唇でえる仕は変わっていなかった。紗季がづくと、奈津子はを止め、ちがらずにをげた。

紗季は、会った瞬に母だと分かる自分を像していた。実際には、横顔を見ても確信できず、指のきを見て初めて記憶がつながった。10探した相が、顔ではなく裁縫の癖によって母へ戻ったことに、堵より戸惑いを覚えた。

奈津子も娘の現の顔を写真でしからなかった。ちがって抱きしめようとはせず、紗季が指定された子へ座るまでを膝に置いていた。

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会いたかったというを、相へ触れる許と取り違えないためだとで話した。

「来てくれてありがとう、とは言えない。呼んだのは私じゃないから」

最初の言葉は謝罪でも再会のびでもなかった。紗季も母と呼ばず、なぜきているとらせなかったのか尋ねた。奈津子は、最初の2は脅迫が怖かった、次の数は紗季の資格や仕事を壊すとった、そして千鶴夫婦の力がまったあとは、自分が責められるのが怖かったと答えた。

2022、奈津子はインターネットで紗季が消費活相談員になった記事を読んでいた。若者の契約被害を防ぐ講座で、《守るために本へ黙って決めない》と話す娘の写真も見た。その点で連絡すればよかったのに、奈津子は島へ移り、聞も携帯話もざけた。

「千鶴の脅しがなくても、私は会わなかった。あなたが正しい仕事をしているとって、余計に自分を見せられなくなった」

紗季は、怖かったという説を理解することと、10を許すことは別だと伝えた。母が詐欺を止めようとしたことには謝できる。960万円を盗んでいないと分かったこともうれしい。しかし娘のを守ると決め、本に何も尋ねなかった為は、俊夫たちが若い女性のを無した構造と完全には切りせない。

奈津子は反論しなかった。

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公証役のあと、千鶴ののくまで2度ったこと、くから紗季が護師の制で勤する姿を見たことを認めた。声をかけず、元気そうだから会わないほうがよいと自分へ言い聞かせた。その判断に娘の同はなかった。

「私は護師になっていない」

紗季が言うと、奈津子は初めて顔をげた。護学は卒業したが、病院実習での族に関わることが怖くなり、資格を取ったあと消費活相談のへんだ。母は制姿を見ただけで、娘が望んだを歩んでいるとい込んでいた。

240万円について、奈津子は業務横領に当たる能性を理解していた。被害者へ返せば正しいとい、を守る正式な続きを信用しなかった。葵親子の移先も、本と相談するがないという理由で決めた。緊急だったとはいえ、自分が正しければの選択を回しにしてよいと考えたことを認めた。

紗季は、横浜へ戻って証言するがあるか尋ねた。奈津子はすぐには答えず、島で引き受けているの修繕と、術の通院を理由に迷った。娘と再び暮らせるかではなく、法責任を負い、被害者へ自分の為を説できるかという問いだった。

翌朝、奈津子は港へ見送りに来た。には、乃の帳簿と自分の送記録をまとめた封筒があった。

「横浜へきます。あなたのためではなく、私が説を残すために」。その言葉を聞いても、紗季は抱きしめなかった。

がる直、奈津子は藤の振袖が戻ったか尋ねた。紗季は戻ったとだけ答え、着るとも捨てるとも言わなかった。母が直したものをどう扱うかは、今度こそ自分で決めるつもりだった。

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