"成人式に消えた母と十三着目の振袖" 第13話
10遅れの写真
事件から1、元乃の舗跡には若者向けの契約相談が設された。政と被害者団体、信販会社が費用をし、成式、就職、賃貸宅など、族の保証を得にくいが狙われやすい契約を無料で確認する所になった。乃の名は板から消えたが、正が起きた経緯は展示へ残された。
13番のの振袖も、被害者全員の同を得て展示された。ただし《悪いの証拠》として壁へ吊るすのではなく、同じ1着が13へ販売されたように使われた仕組みを、契約の写しとともに説した。写真と氏名は希望しただけを載せ、語りたくないの空欄もそのまま残した。
紗季は相談で働き続けながら、の仕事へも週3戻った。事件を解決した娘として講演を求められても、母の失踪をな発見談へまとめる依頼は断った。なのは特別な族の物語ではなく、分証の写し1枚と、読まずに署名させる1枚のが、普通の活を何も縛ることだった。
相談では、類を読めないことを責めないという規則を最初に掲げた。族だから、無料だから、急いでいるからという理由で署名したへ、《なぜ確認しなかった》と先に問えば、被害は再び隠れる。何を説され、誰が同席し、断ったとき何を言われたかを順に聞く方式へ変えた。
広告
ある母親は、娘の成式費用をくするため紹介者欄へ友3の名をき、でその全員へ勧誘が届いたと相談した。紗季は母親を加害者と決めず、紹介制度の説と友の同を分けて確認した。乃の事件に似ていても、同じ結論へ急がないことが、過から学んだ最も難しい習慣だった。
瀬葵は息子と緒に展示を見に来た。自分の写真はさず、当言えなかった言葉だけを提供していた。《助けられるにも、嫌だと言う権利がある》。11歳の息子には、母が昔悪いに追われたとは説せず、困ったとき相談できる所を緒に見に来たとだけ話した。
真壁は写真館の仕事へ戻らなかったが、被害者の契約写真を撮した責任について証言し続けた。指示されたまま撮るだけでなく、本が何のための写真か理解しているか確認する規則を業界団体へ提案した。過に殴られた被害だけで、自分がく異常を見逃した責任を消そうとはしなかった。
奈津子とは、に1度だけを交わすようになった。母は島で直したの話をき、紗季は相談件数や季節のことを返した。謝罪を毎回繰り返すことも、失った10を美しいいで埋めることもしなかった。返事をけないは、理由を説せず休んでよいと決めた。
千鶴からのには、刑務所の作業で縫製を担当していること、自分が姉よりをしているといながら、実際にはに選ばれる自分をしていただけだとかれていた。
広告
紗季は半、い返事を1度だけ送った。《育ててもらったことは覚えています。だから、されたことも忘れません》。それ以の結論はかなかった。
藤の振袖は、神戸から戻ったあとも紗季のにあった。母が直したい裏には、古い針穴としい糸が並び、どこまでが2014の仕事か分からない。紗季は専に保処置だけを頼み、成式のを再現するために着ることはしなかった。
31歳の誕、紗季は黒島へった。奈津子には会うとだけ伝え、何を話すか決めずにへ乗った。港では母が待っていたが、振袖も束も持っていなかった。2は島の堂で昼を取り、胃の術にべられなくなった物や、紗季が護師にならなかった理由を初めて詳しく話した。
奈津子は、10に約束した写真を撮ってよいか尋ねた。紗季はし考え、成式の振袖を持って来なかったことを伝えた。「あのの続きみたいな写真にはしたくない。今は今として撮るならいい」。奈津子は頷き、港の売にいた職員へ携帯話を渡した。
写真ので、2は肩を抱かなかった。奈津子はしれてち、紗季も無理に笑わなかった。背景には観向けの美しいではなく、積まれた発泡箱と作業用の軽トラックが写っている。撮り直しますかと聞かれたが、紗季はその1枚でよいと答えた。
帰りので写真を確認すると、奈津子はカメラではなく娘の横顔を見ていた。紗季は、それをの証とも悔の証拠とも決めなかった。写真に写った事実だけを残し、母が何をっていたかは次に会ったとき本へ尋ねればよい。
2014113、奈津子は成式の朝にから消えた。を盗んだ犯ではなかったが、正しいことだけをした母親でもなかった。妹夫婦の犯罪を暴こうとし、被害者を救い、同に娘と葵の選択を自分の判断で奪った。
10、紗季が見つけたのは、無実という言で取り戻せる母ではない。と臆病さ、勇気と独断を同じに持ち、失敗したあとく帰れなかった1のだった。
が岸をれる、奈津子は次はいつ来るのかと聞かなかった。紗季も毎来るとは約束しなかった。ただ、撮った写真を送るための所が変わっていないか確認した。
母の方は、もう謎ではない。
けれど母娘の続きは、見つけた側にも、見つかった側にも、まだ決められていなかった。
今度は誰にも署名を求められず、2が自分の言葉で決めていくことになった。
――完――
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
夫が毎日3回トイレを磨く理由
結婚五年。紗季は、温厚で家事にも協力的な夫・玲央と、四歳の娘・莉乃と平穏に暮らしていた。ただ一つ奇妙だったのは、夫が毎日三回もトイレを掃除し、誰にも触らせなかったこと。 ある日、法医学者の親友・美代子が、トイレの排水設備から人間の歯と古い血痕の痕跡を発見する。調査を進めると、この家では六年前、玲央と同棲していた婚約者が突然姿を消していた。夫婦|真実|真相1.5万字5 246 -
完結第18話
昭和38年、つなぐなと言われた救急電話
昭和38年、山間の電話交換所で働く澄子は、診療所から県立病院への緊急電話を受ける。重傷の17歳を救うための連絡だったが、主任は「その電話だけは絶対につなぐな」と命じた。 少年が亡くなった後、澄子の判断ミスとして処理されようとする。しかし記録を調べると、救急回線が止められていた時間にも、工事会社と本社、町役場の間では電話がつながっていた。時代|歴史|昭和|ミステリー2.3万字5 3 -
完結第14話
赤ちゃんの声が聞こえる姪が、夫の嘘を見抜いた日
生後一か月の息子を見た六歳の姪・美久は、「赤ちゃん、お父さんにひどいことをしないでって言ってる」と告げる。その言葉に、夫・徹だけが激しく動揺した。 育児をせず、暴言を重ねる夫に違和感を抱き始めた亜鳥。やがて美久が書斎で見つけた封筒から、亜鳥を被保険者、徹を受取人とする高額な生命保険の書類が発見される。 さらに調べると、徹には隠していた借金と別の女性がいた。夫婦|真実|真相|親子関係1.4万字5 1133 -
完結第10話
31年間、母が捨てなかったマットレスの秘密
31年間、両親が頑なに使い続けてきた古いマットレス。中央は大きく沈み、父の腰痛も悪化していたが、母はなぜか買い替えを拒み続けていた。 息子のデイヴィッドは、両親を旅行へ連れ出した隙に新しいものと交換しようとする。ところが搬出業者から、「お母様を寝室へ入れず、まず一人で確認してください」と切迫した電話が入る。 マットレスの下から現れたのは、古い手紙や小さな靴、写真、ぬいぐるみ。そこには両親が31年間、息子にさえ存在を明かさなかった幼い娘・グレースの記憶が封じられていた。 娘を失った悲しみから逃げるため、名前すら口にしなくなった父。そして誰にも見つからない場所で、毎年娘へ手紙を書き続けた母。古い寝台が取り払われた日、沈黙の下に閉じ込められていた家族の時間が、ようやく光の中へ戻り始める。ミステリー|真実|真相|親子関係1.5万字5 674 -
完結第15話
午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる
午前2時17分。夜勤看護師の由衣は、面会時間を過ぎた病棟で黒いコートの女性を目撃する。 女性が立ち止まったのは、家族との連絡を拒み続ける71歳の患者・久世修一の病室前。だが受付記録にも防犯カメラにも姿はなく、乗り込んだエレベーターからも忽然と消えていた。 修一は女性の特徴を聞くと顔色を変え、10年間疎遠だった娘へ連絡してほしいと頼む。やがて判明したのは、黒いコートが10年前に亡くなった妻・美佐子のものと同じだったこと。そして彼女が息を引き取った時刻も、午前2時17分だった。 妻の最期に間に合わなかった父と、その父を許せなかった娘。再び同じ時刻にエレベーターが開く夜、10年間止まっていた家族の時間が静かに動き始める。ミステリー|夫婦|真実|真相1.4万字5 120 -
完結第17話
離婚したので、義実家への月50万円をやめました
「この家は俺と愛人と子供が使う。離婚後も、両親への月50万円は払い続けろ」 そう言って離婚届を突きつけた夫に、美緒は何も争わず署名する。夫は豪邸も高級車も手に入れたと思い込み、数日後、愛人と赤ん坊を連れて戻ってくる。しかし玄関の鍵は開かず、車も消えていた。家も車も、美緒が経営する会社の資産だったのだ。 さらに仕送りを止められた義母は、美緒の口座から500万円を引き出そうとし、愛人の住居契約からは偽造された署名が見つかる。嘘で築かれた「新しい家庭」が崩れ始める中、夫は美緒が離婚を急いだ本当の理由と、目前に迫っていた数十億円規模の契約を知ることになる。人生逆転|嫁姑|夫婦|真実|第二の人生|不倫1.7万字5 723 -
完結第10話
昭和51年、閉山した炭鉱町から消えた父
昭和51年、炭鉱が閉山した3日後、保安係だった父・修一が姿を消した。玄関には泥のついた長靴と作業帽が残され、母は「探さなくていい」と口を閉ざす。だが娘が父の作業着から見つけた紙片には、閉鎖された坑道の名と、謎の時刻が記されていた。 調べるほどに浮かび上がる、改ざんされた保安記録、帳簿から消された作業員、そして会社が隠そうとする閉山直前の事故。やがて坑道に残された録音から、父が誰かを救おうとしていた事実が明らかになる。しかし数十年後に届いた父の名札には、さらに不可解な言葉が刻まれていた。 「北の出口から出た。家へは戻れない」 父はなぜ、生きて坑内を出ながら家族のもとへ帰らなかったのか――。時代|歴史|昭和|ミステリー|真相1.5万字5 236 -
完結第12話
万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した
ロンドンから帰国した紗季は、父が経営するショッピングモールを客として訪れた。ところが突然、身に覚えのない万引きを疑われ、警備室へ連行される。鞄から出てきたのは、見たこともないネックレス。さらに警備員は「六万円払えば見逃してやる」と、用意済みの自白書を突きつけてきた。 だが彼らは知らなかった。紗季が次期経営幹部として帰国した、社長の娘であることを。そして父への一本の電話をきっかけに、隠しカメラの映像、消された記録、何十人もの被害者が浮かび上がる。これは警備員の小遣い稼ぎではない。モールそのものを奪うため、会社の中枢で仕組まれた巨大な罠だった――。真実|金銭問題|修羅場2.1万字5 607