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"二十六年目の告白" 第2話

嵐の夜の児

けたたましい非常ブザーが鳴り響き、当直医との護師がドアを蹴破るようにして崩れ込んできた。

「患者さんが暴れています! 拍数急昇、百を超えています!」 「鎮静剤をく! 点滴ラインが抜けます、押さえて!」

医師たちが取り乱す浩司の肩を力づくでベッドにねじ伏せる、私は静かに退り、たいコンクリートの壁に背を預けた。義妹のマイはにへたり込み、腰を抜かしたまま震える指で私を指差しているが、声帯が凍りついたように言葉を発することができない。

酸素マスクの隙から黄い胃液を吐き散らしながら、浩司は血った両目で私を睨みつけていた。 信じない、絶対に嘘だ、おが俺を騙している——そう言いたげに歪んだ顔面。モニターは激しい子音を乱れ打ち、点滴スタンドが属音をてて激しく揺れていた。

「奥さん、危険ですからがっていてください!」

護師の鋭い叫び声を背で聞きながら、私の脳裏にはのあの夜の景が、昨のことのように鮮に蘇っていた。

あのも、は激しいが叩きつける嵐の夜だった。 方都のさな産婦科医院。私と、浩司のである美(たかはしあけみ)は、わずか違いで同じ病院で男の子を産した。それは決して偶然ではなかった。

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当から夫の倫に気づいていた私は、浩司がわざと私と同じ産院を美に勧め、産期を巧妙にねさせたことをにった。の体を抱え、裏切りの屈辱に耐えながら、私はただ腹ののさな命を守ることだけに必だった。

産目の夜。陣痛の激痛に耐えかねた私は、鎮痛剤をもらおうと点滴棒を引きずりながら、暗い廊をナースステーションへ向かって歩いていた。

児のを通りかかった、ガラスの向こうに男のが見えた。浩司だった。

男は周囲を盗み見るように首を巡らせながら、つの並んだプラスチック製コットのにち、素いつきで何かを付け替えていた。コットの元にげられた、青い名札だった。『佐藤ゆみ 男児』と『美 男児』。

稲妻が夜空を裂き、青いがガラス窓を照らした瞬、私は見た。 名札をすり替え終えた浩司の元に浮かんでいた、この世のものとはえない醜悪な笑みを。

——俺のする美の子を、正妻のゆみに育てさせる。そして、ゆみの産んだ邪魔なガキを、美に押し付けて遇させる。

その歪んだ完全犯罪に酔いしれた男の背を見つめながら、私は鳴をげそうになるを両で塞ぎ、リノリウムのにへたり込みそうになる膝を必で叱咤した。

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今すぐび込んでこの男を罵倒するか。夜勤の護師を呼び集めて現犯で突きすか。 だが、そのの私にはも、実の支援も、職もなかった。今ここで暴けば、夫はき直って婚を突きつけ、私をに迷わせるだろう。まれたばかりのが子を抱えてきていく術が、当の私にはなかったのだ。

浩司が満げな取りで廊のへと消えていくのを待ち、私は忍びで児のドアをけた。

つのコットので、無垢なつの命がすやすやと息をてていた。 私は震える指先で、夫がすり替えたばかりの名札を掴み、元の正しい位置へと静かに戻した。

『佐藤ゆみ 男児』。が子のさな、温かいを握りしめた、私ので徹な復讐の誓いが完成した。

——あなたはこの子をの子だと信じ込んで、湯のようにとを注ぐがいい。私はすべてを耐え忍び、あなたを騙し返してやる。

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