みかん小説
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"結婚翌朝、五分遅れの朝食が暴いた秘密" 第2話

老舗の厨と消された成分表

計の針を、今朝の午へと巻き戻す。

京都の奥座敷をわせる、黒崎本の巨な厨。板たちが仕込みに使うプロ仕様の厨器が並ぶその空は、の気で底えしていた。 私――黒崎美咲(旧姓:川美咲・歳)は、息をく吐きしながら、で巨な寸胴鍋のにっていた。

昨夜、披宴が終わって引き物の理すら終わっていない夜、義母の佳代が私の寝の襖をノックもなしにけ放ち、こう命じたのだ。

『の朝は、黒崎の嫁として親族全員の朝を作りなさい。ちょうどに広へ配膳すること。料亭のに嫁いできたのだから、板を頼らず、女将の卵として自分ので族の朝を賄うのは当然の務めよ』

老舗料亭グループの会族、計名。 齢も違えば、体調も異なる。何より、会である義父・正郎は、度の全と篤な脈を患っており、学病院から処方された厳格な薬剤管理にあることを、私は結婚の顔わせの段階でっていた。

私は学を卒業、管理栄養士の国資格を取得し、総病院の臨栄養科で、そのは度終末期ケア施設で栄養管理責任者として勤務してきた。 材の振り、塩分のミリグラム、カリウムやナトリウムの僅かな偏りが、病を抱えたのを分かつ現を、私は骨の髄まで見てきたのだ。

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昨夜、私は佳代に尋ねた。 『お義母様、お義父様の現の投薬状況と、塩分制限の具体な数値を教えていただけますか。減塩の特別をご用いたしますので』 すると佳代は、でせせら笑い、吐き捨てるように答えたのだ。

『嫁なら見て盗みなさいよ。いちいち聞かなきゃ何もできないの? これだからでっかちの資格持ちは使い物にならないわ。……付けはこれにしなさい。うちの族は代々、この汁ダレが好きなのよ』

佳代が私の胸元に押し付けてきたのは、ラベルが半分ほど無残に剥がれ落ちた、埃っぽい瓶だった。 原材料表示も、製造も、アレルゲン表示も切ない。瓶の底には、黒褐のい沈殿物が澱のように溜まっていた。

午半。私は番汁を引き、旬の真鯛を切り分け、野菜のごしらえをめていた。 そして、午分。 仕げとして、分の信州噌を溶いた鍋に、佳代から渡されたあの「秘伝のタレ」をほんの垂らし、加えた瞬だった。

ちる湯気。 私の腔を突いたのは、芳醇な鰹節のりではなく、微かにの奥を刺すような、独特の薬品臭と濃度の発酵エキスの匂いだった。

(……この匂い、まさか……!?)

私はお玉を握るを止め、エプロンのポケットから、事に義父の主治医から聞きしていた「お薬帳の処方箋コピー」

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を取りした。 義父が毎朝に用している薬剤――『ジギタリス製剤(薬)』、そして『ACE阻害薬(圧薬)』。 ので、化学と薬理学のデータベースが猛烈な速度で回転する。

この古い調料に含まれている独特の発酵成分――おそらく、濃度のチラミン、あるいはカリウムを異常に濃縮させた未承認の漢方抽物だ。 もし、この成分をジギタリス製剤や特定の圧薬を用している患者が摂取すればどうなるか。

篤なカリウム血症、急激な血管収縮、あるいは致な血圧――最悪の、細を引き起こして急性全に至る。

計を見る。午分。 親族が広に集まるまで、残り分。

(全員分の噌汁を作り直すはない。でも、お義父様にこれをしたら……確実に倒れる!)

私は迷うことなく、コンロの隣にさな平鍋を置いた。 昆布と煮干しから急速に別の汁を引き、減塩の噌を使い、義父専用の無塩・無添加の噌汁をゼロから仕込み直した。 加減を調し、塩分濃度計で〇・パーセントを確認した――広の柱計が、無にもボーン、ボーンと朝を告げた。

配膳が完したのは、分。 その「分の遅れ」の代償が、あの孝志の平打ちだったのだ。

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