"七年後、屋上で見つかった妻の秘密" 第8話
「まさか……そんなはずはない……彼女はで……」
遺骨は慎に収容され、県警科学捜査研究所へと送られた。
元特定のためのDNA鑑定には、週のをした。そして20004末、科捜研からされた鑑定結果は、警察層部を震撼させた。
『発見された遺骨のミトコンドリアDNA型は、19934に方となったミキの実母・よし子のDNA型と完全に致』
、桜島の沖にを投げ、へ流してしたと断定されていた女性が、なぜ自分が暮らしていたマンションの、固く溶接された貯槽の底に横たわっていたのか。
辺に残されていたあのバッグは、着替えは、そしてあの遺は何だったのか。
警察の威信を揺るがす失態。県警は直ちに捜査本部をちげ、の「投自殺事案」の全記録を庫から引きずりした。
再捜査の陣指揮を執ることになったのは、捜査課の敏腕警部補・順(じゅん)だった。
順がの捜査記録をいて真っ先に目を留めたのは、ならぬ啓太が最に残したあのだった。
『本の移経を裏付ける客観証言、皆無』
「啓太、おの直は正しかったんだ」順は啓太の肩を叩いた。「彼女は最初からへなどっていない。へったのは、荷物と遺を運んだ犯だけだ」
順は直ちに、証拠品保管庫に眠っていたあの「遺」
広告
を科捜研へ回し、最鋭の画像解析・跡鑑定装置による再鑑定を命じた。
週にされた鑑定見は、決定な事実を突きつけていた。
『ミキがに作成した自治会の帳簿、および母親に宛てたの跡資料と比較。文字全体の傾斜角度や運の癖に類似は見られるものの、終部のトメ、ハライにおける圧のかかり方にな致を検。本の跡ではなく、者が本の文字資料を元に置き、図に模倣して偽造した能性が極めてい』
遺は、偽物だった。
自殺などではなかった。何者かがミキを殺害し、遺体をマンションの密閉タンクに隠滅したで、巧妙に自殺を偽装した計画殺事件。
では、犯は誰なのか。
真っ先に捜査線に浮かんだのは、夫の健だった。妻の失踪から、同じマンションにみ続け、遺骨の真で暮らし続けていたという異様さ。さらに、結婚直に妻が命保険に加入していた事実も浮した。
順は健を警察署へ呼びし、徹底な取り調べをった。
しかし、健の潔はすぐに証された。失踪当の朝から夜に至るまでの完璧な勤務記録と同僚名の確な証言。何より、妻が消えてからの、健は度たりとも命保険の請求をっていなかった。
広告
「妻がんだなんて……今でも信じられなかったんです」
取調で健は両で顔を覆い、慟哭した。
「いつか、ふらっと帰ってくるんじゃないかって……だから、保険の続きなんて考えもしなかった……! あいつが、あんなたいタンクの底にいたなんて……!」
夫の疑いは完全にれた。
だが、その取り調べの最、健が涙を拭いながらにした何気ない言が、捜査本部の空気を変させた。
「そういえば……ミキが消える数、夕のときに妙なことを聞かれたんです。『このマンションの管理さん、ここに来るにどこで何をしていたかってる?』って。僕がらないと答えると、ミキは『ちょっと気になってね』とだけ言って……」
管理のシゲル。
捜査本部の線が、あの枚の表彰状を持つ「完璧な管理」へと斉に向けられた瞬だった。
捜査本部が置かれた鹿児島警察署の取調。属のたいパイプ子に腰掛けたシゲルは、両を膝ので揃え、微だにせず正面の壁を見つめていた。
「シゲルさん。ミキさんのことは覚えていますね」
机を挟んで向かいった順警部補が、く落ち着いた声で問いかける。
「ええ。よくじております。自治会の会計を伝っておられた、とても礼儀正しい奥さんでした」
シゲルの声には、かすかな震えすら混じっていなかった。
線は泳がず、呼吸も乱れない。
「の旧型貯槽から彼女の遺骨が見つかりました。あなたが毎見回っていた、あのマンションのです。
広告
おすすめ作品
-
完結第25話
義母が倒れた夜、隣人が私を止めた理由
午前一時、夫から「母が脳卒中で倒れた」と連絡を受け、病院へ急ごうとした美緒。だが車に乗る直前、隣人の氷室に止められる。前輪の下にはブレーキ液が漏れた跡があり、義母本人へ電話すると「倒れていない」と告げられた。 防犯映像に映っていたのは、出張中のはずの夫・達也。裡切られた|夫婦|真相|介護3.0万字5 31 -
完結第13話
夫が毎日3回トイレを磨く理由
結婚五年。紗季は、温厚で家事にも協力的な夫・玲央と、四歳の娘・莉乃と平穏に暮らしていた。ただ一つ奇妙だったのは、夫が毎日三回もトイレを掃除し、誰にも触らせなかったこと。 ある日、法医学者の親友・美代子が、トイレの排水設備から人間の歯と古い血痕の痕跡を発見する。調査を進めると、この家では六年前、玲央と同棲していた婚約者が突然姿を消していた。夫婦|真実|真相1.5万字5 260 -
完結第12話
二十六年目の告白
余命わずかな夫・浩司は、妻ゆみに衝撃の告白をする。二十六年前、ゆみが産んだ息子と愛人の子を、病院で密かにすり替えたというのだ。 だが、ゆみはすべてを知っていた。夫の行動を目撃し、名札を元へ戻していたため、浩司が愛人の子だと信じて溺愛してきた誠は、紛れもなくゆみの実子だった。夫婦|真相|親子関係|修羅場|不倫1.7万字5 21 -
完結第13話
成人式に消えた母と十三着目の振袖
2014年の成人式当日、貸衣装店から母・奈津子が消えた。店の960万円もなくなり、共に姿を消したカメラマンとの逃避行が疑われる。娘の紗季に残されたのは、「今日は署名をしないで」という謎のメモだけだった。 10年後、閉店する店の倉庫から、記録にない「13着目の振袖」が見つかる。その裾には、若い女性たちの名義で作られた高額ローン契約書と、母が隠した証拠が縫い込まれていた。ミステリー|真実|行方不明2.3万字5 18 -
完結第18話
昭和38年、つなぐなと言われた救急電話
昭和38年、山間の電話交換所で働く澄子は、診療所から県立病院への緊急電話を受ける。重傷の17歳を救うための連絡だったが、主任は「その電話だけは絶対につなぐな」と命じた。 少年が亡くなった後、澄子の判断ミスとして処理されようとする。しかし記録を調べると、救急回線が止められていた時間にも、工事会社と本社、町役場の間では電話がつながっていた。時代|歴史|昭和|ミステリー2.3万字5 21 -
完結第14話
赤ちゃんの声が聞こえる姪が、夫の嘘を見抜いた日
生後一か月の息子を見た六歳の姪・美久は、「赤ちゃん、お父さんにひどいことをしないでって言ってる」と告げる。その言葉に、夫・徹だけが激しく動揺した。 育児をせず、暴言を重ねる夫に違和感を抱き始めた亜鳥。やがて美久が書斎で見つけた封筒から、亜鳥を被保険者、徹を受取人とする高額な生命保険の書類が発見される。 さらに調べると、徹には隠していた借金と別の女性がいた。夫婦|真実|真相|親子関係1.4万字5 1192 -
完結第10話
31年間、母が捨てなかったマットレスの秘密
31年間、両親が頑なに使い続けてきた古いマットレス。中央は大きく沈み、父の腰痛も悪化していたが、母はなぜか買い替えを拒み続けていた。 息子のデイヴィッドは、両親を旅行へ連れ出した隙に新しいものと交換しようとする。ところが搬出業者から、「お母様を寝室へ入れず、まず一人で確認してください」と切迫した電話が入る。 マットレスの下から現れたのは、古い手紙や小さな靴、写真、ぬいぐるみ。そこには両親が31年間、息子にさえ存在を明かさなかった幼い娘・グレースの記憶が封じられていた。 娘を失った悲しみから逃げるため、名前すら口にしなくなった父。そして誰にも見つからない場所で、毎年娘へ手紙を書き続けた母。古い寝台が取り払われた日、沈黙の下に閉じ込められていた家族の時間が、ようやく光の中へ戻り始める。ミステリー|真実|真相|親子関係1.5万字5 688 -
完結第15話
午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる
午前2時17分。夜勤看護師の由衣は、面会時間を過ぎた病棟で黒いコートの女性を目撃する。 女性が立ち止まったのは、家族との連絡を拒み続ける71歳の患者・久世修一の病室前。だが受付記録にも防犯カメラにも姿はなく、乗り込んだエレベーターからも忽然と消えていた。 修一は女性の特徴を聞くと顔色を変え、10年間疎遠だった娘へ連絡してほしいと頼む。やがて判明したのは、黒いコートが10年前に亡くなった妻・美佐子のものと同じだったこと。そして彼女が息を引き取った時刻も、午前2時17分だった。 妻の最期に間に合わなかった父と、その父を許せなかった娘。再び同じ時刻にエレベーターが開く夜、10年間止まっていた家族の時間が静かに動き始める。ミステリー|夫婦|真実|真相1.4万字5 121