みかん小説
本棚

"空港に置き去りにされた妻は、もう帰らない" 第4話

私が健の指示通り、「本来の妻である子が急病で来られず、私は臨の代理です」と流暢な英語で伝えると、マルコ氏はいため息をついた。 「それはお気の毒に。……ところで、今回の作ロットの最仕入れ価格と契約条件についてだが、回のメール通りでよろしいのかな?」

健が横から「おい、あいつ何て言ったんだ?」と声で急かしてきた。 私は微笑みを崩さず、健に打ちした。 「『契約はいつも通りでいいか』と聞いています」

「おう、いつも通りでオッケーだって伝えろ! 値引き交渉なんてケチくさいことすんなよ、うちは本の販売力があるんだからな!」

健の愚かな指示を受け、私はマルコ氏に向き直った。 そして、完璧なビジネス英語で、こう告げたのだ。

『ディレクター。弊社の健氏は、“貴社の提示する価格設定および納期条件を、切の協議・値引き交渉なしで、そのまま無条件に受諾する”と申しております。契約をその内容で作成してください』

マルコ氏の目が驚きで見かれ、やがて歓の笑みが広がった。 『本当かね!? 通常より割もい設定だが、本当に交渉なしでサインしてくれるのか! 素らしい、さすがマツオカだ!』

健は、相が笑顔で握を求めてきたのを見て、「へへっ、商談成だな!」と々に頷いていた。 自分が、価格より数千万円もく設定されたボッタクリ契約に、無のままサインしたことにも気づかずに。

広告

帰りの内でも、健はファーストクラスの座席で酒をみ、隣のエコノミークラスに追いやられた私を完全に無していた。 そして、成田空港に到着した直、義母のに乗り込んで言い放ったのだ。

『おは歩いて来い! それが嫌なら帰ってくるな!』

がりったロータリーで、私はバッグからスマートフォンを取りした。 画面をタップし、ある番号へ発信ボタンを押す。

「もしもし、智? ……ええ、今、成田に着いたわ。予定通り、あの、私を空港に置きりにして逃げていったわよ」

「迎えに来てくれてありがとう、智」

成田空港の般駐。 黒塗りの最級ミニバン――レクサス・LMの部座席からりてきたのは、私の弟の松岡智(歳)だった。 に仕ての良いスーツを着こなした智は、私のスーツケースを軽々とトランクに積み込むと、呆れ果てたように首を振った。

「姉ちゃん、本当にあいつら、姉ちゃんを置きりにしたのか? 信じられないな……がおかしいんじゃないか」

「いいのよ。むしろ、願ってもない最の証拠がに入ったわ」

私は部座席の独シートにく腰掛け、温かいお茶をんだ。 は滑るように速へ流し、都へと向かう。

「父さんには連絡してあるのか?」 「ええ。張にすべて話してあるわ。……婚の準備も、まいの配もね」

広告

智が運転しながら、ルームミラー越しに笑みを浮かべた。 「父さん、激してたよ。『うちの娘をラーメンの娘だと見すのは百歩譲って許せても、の空港に置きりにするようなクズは絶対に許さん』ってさ。姉ちゃんのために、港区のタワーマンションの最階を、買い取ってリフォームまで済ませてあるから」

「ふふ、お父さんらしいわね」

内には穏やかな空気が流れていた。 だが、私の復讐劇は、単に実の財力で逃げ切るようなぬるいものではなかった。 私は膝のに置いたビジネスバッグのファスナーをけ、成田空港をる直に探偵事務所から速達で届いていた「通の茶封筒」を取りした。

通目――【武藤子と松岡健の貞為に関する調査報告】。 ホテルの入り写真、親密なLINEのトーク履歴、そしてでの豪遊写真が、かぬ証拠としてファイリングされていた。

通目――【ミラノ・ファルコーネ社との規独占輸入契約(正本)】。 健が無ゆえにサインした、通常価格の割増し、違約条項付きの巨額契約。

そして――通目の封筒。 その封筒の表きを見た瞬、私の瞳の奥に、絶対零度のが灯った。

そこに入っていたのは、義父・正隆が入院した直から、健と義母・美佐子が会社の裏でを染めていた、

決定な犯罪の証拠

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: