みかん小説
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"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第3話

らない暮らし

数、紗季は朝からかけた。洗濯を回し、テーブルに僕の昼用のパンを置いてから、紺のトートバッグを肩に掛けた。「何ごろ帰る?」と聞くと、「夕方かな」と答えた。「どこへくの」と続けると、彼女は瞬だけ目を見いた。「本と、し寄るところ。どうしたの、珍しいね」。僕は仕事の話をするのように理由をえようとしたが、何も見つからず「いや、気をつけて」としか言えなかった。

妻がていったあと、部の静けさが妙に広くじられた。蔵庫には紗季の字で「牛乳は買わなくて丈夫」とメモがあり、洗面所には彼女が替えたしいタオルが掛かっている。妻はをる準備をしているかもしれないのに、今の僕が困らないように暮らしをえている。僕はそのことをの証拠にしたくなった。しかし事を続けているかられないはずだと考えるのは、彼女の仕事を当然のものとして扱うことと何が違うのだろう。

僕は寝の棚からの結婚式の写真を取りした。紗季は当、版社の営業事務として働きながら、休にはさなの催しを伝っていた。の触りや装丁の話になると、いつまでも楽しそうに話していたことを覚えている。ところが、今の紗季がどんな本を読んでいるのか僕には分からない。

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寝の端に積まれた本の背表には、らない作の名が並んでいた。

午、紗季から「今はでべて帰ります」と連絡が入った。僕はスーパーで弁当を買い、卓にで座った。テレビをつけると、演者たちが記の過ごし方について笑いっていた。以なら何気なく見流しただろうが、そのは妻と最にでしたをいそうとした。正に義母とでべた蕎麦は違う。職の表彰式に付き添ってもらったホテルも、僕はほとんど同僚と話していた。

夕方、クローゼットの奥から冊の古い帳が落ちてきた。僕が結婚したに使っていたもので、仕事の予定と緒に「、、駅裏の」といてあった。隣には紗季がさな丸を描き、僕が「毎」ときしている。そんな約束をした記憶はかすかにあったが、いつから守らなくなったのかは曖昧だった。僕は帳を元の所へ戻し、代わりに自分のカレンダーにあった今の夜の予定をすべて消した。

夜、紗季が帰宅した。袋から文庫本といファイルをし、台所でお茶を淹れる。僕は「楽しかった?」と尋ねた。妻はし考えてから「うん。これからのことを相談してきた」と答えた。「これからって?」と聞いた瞬、彼女は湯気の向こうで僕を見た。「仕事のこと。

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今度ちゃんと話すね」。僕はそこで初めて、妻が自分のらない将来をすでに誰かと話し始めているのだとった。

その夜、僕は紗季の勤め先について考えた。以は民文化センターの受付業務をしていたが、に勤務先が変わると聞いたような気がする。具体な部署も勤務も、僕は曖昧に頷いただけだった。妻はきっと度は話したのだろう。僕が聞き流したことを「言われていない」と言い換えるのは簡単だったが、そうするたびに彼女の話す欲を削ってきたのかもしれない。

曜の昼、僕は古い旅写真を見返しているうちに、紗季が撮者になることがかったと気づいた。僕の顔が写った写真はほどあるのに、妻の顔が写っているものは驚くほどない。僕は彼女の姿を残そうとしていただろうか。ふといって、帰宅した紗季に「今度、写真を撮りにかない?」と聞いた。妻は驚き、それから「急にどうしたの」と静かに答えた。僕はまだ、その問いに答える勇気がなかった。

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