みかん小説
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"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第6話

の窓際

僕たちが初めてあのレストランへ入ったのは、婚姻届をしたの夕方だった。は駅の再発から取り残されたような古い通りにあり、入りにはさな真鍮の鈴ががっていた。紗季が「ここ、度来てみたかったんだ」と言ったのを覚えている。僕は仕事を終えて駆けつけたばかりで、ネクタイを緩めることも忘れていた。窓際の席に案内されると、彼女はガラスに映る僕たちを見て「なんだか夫婦に見えるね」と笑った。

その夜、紗季はデザートをべながら「毎ここへ来よう」と言った。僕は「何があっても?」と聞き、彼女は「喧嘩してても」と頷いた。僕が仕事で遅れたらどうするのかと尋ねると、「先に来て待ってる。別々に来ても、ここなら会えるでしょ」と答えた。僕はその提案を、らしい婚のいつきとして受け取った。彼女が言葉にしたのは、どちらかが忙しくても関係を確かめられる所をつ残したいという、具体な願いだったのだと今なら分かる。

結婚して最初のは、約束を守った。仕事帰りに急いで駅へ向かい、ので落ちい、互いのを振り返った。目には紗季が職で担当した展示会の話を聞き、目には僕の転職を緒に悩んだ。アルバムの写真には、そのの僕たちの顔が残っている。

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紗季は員に写真を頼むたび、僕の肩にしだけ寄りかかっていた。いつからその距が消えたのか、写真を見ればはっきり分かるのに、僕はずっと見ないでいた。

目、僕はしい部署のちげを任された。の夕方、急な打ちわせが入り、紗季から「今は何にけそう?」とメッセージが届いた。僕は会議から「無理そう。先にべてて」と返した。彼女は「分かった。お疲れさま」と送ってきた。そのの僕は、理解のある妻を持って助かったとった。帰宅すると紗季は起きていて、「おかえり」と言ったが、僕は疲れたとだけ答えて寝てしまった。

目には阪への張がなった。張先のホテルで紗季から話があったことは覚えている。「今は記だね」と言われ、「帰ったら何か買ってくるよ」と答えた。産物売りで焼き菓子を買い、帰宅して渡した。紗季は「ありがとう」と受け取ったが、レストランへったかどうかを僕は聞かなかった。目には、彼女から何も言われなくなった。僕はそれを、妻も記へのこだわりがれたのだと勝に解釈した。

週末の午、僕はアルバムにあったの名を検索した。「レストラン灯」という名は変わっておらず、窓際の席も昔の写真と同じだった。予約画面をくとのは満席になっている。

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話をかけかけて、やめた。紗季が毎そこにっているのなら、今も席を取っている能性がい。へ僕の名を告げれば、彼女の最の予定に割り込むことになる。まずは妻に直接聞くべきだと、ようやく考えた。

けれどその晩、卓で紗季と向かいうと、質問は喉に引っかかった。彼女はしい仕事で使うという資料に付箋を貼り、僕がテレビを消すと「どうしたの」と顔をげた。「昔、あのによくったよね」と言うと、紗季のが瞬止まった。「そうね。いいだった」。過形のように聞こえた。僕は「またこう」と言いかけたが、彼女は「お皿、片づけるね」とちがった。

の窓際の席は、のものだったのではない。なくとももの、そこへ通い続けたのは紗季だけだった。僕が守らなかった約束を、彼女がで守ってきた。そのことを認めるのが怖くて、僕はいあいだ仕事の予定を言い訳にしてきた。今度こそ遅れないと言いたかったが、僕のからる約束がどれほど軽いものか、いちばんよくっているのは妻だった。

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