みかん小説
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"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第8話

空いた隣席の理由

探偵事務所から受け取った報告を、僕は会社の引きしに入れたままにしていた。処分すれば証拠が消えるような気がしたが、妻に隠したまま持ち続けることも落ち着かなかった。池が撮した写真のうち、映画館の枚がかられない。紗季はチケットを枚買い、隣の席を空けて映画を見た。そんなことをするだっただろうか。僕は映画館の公式サイトをき、再映されていた作品の名を確かめた。

映画は、結婚にで見た古い恋映画だった。主公たちが約束した駅で何度もすれ違い、最には別々のを選ぶ物語で、紗季は映しばらくをきかなかった。僕は「しい結末だったね」と言ったが、彼女は「でも、会いにこうとしたことは本当だったから」と答えた。今えば、彼女は結果だけでなく、相のためにを運ぶという為そのものを切にしていたのだろう。僕はそんなことも、のいとしてしまい込んでいた。

仕事帰り、僕は映画館のを通った。改装されて入はるくなっていたが、階段のすりには見覚えがある。受付の横に再映のチラシが積まれ、「切なともう度」というい紹介文が載っていた。妻が席分買った理由を、員に尋ねることはできない。

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それでも、空いた子が誰かのを示しているようにじた。僕はチラシを枚もらい、折らずに鞄へ入れた。

帰宅すると紗季は台所で鍋をにかけていた。「最、昔の映画を見にった?」と尋ねると、彼女は僕を見た。「うん。懐かしくて」。僕は「どうだった?」と続けた。紗季はし考えてから「と違うところで泣いた」と答えた。「どこ?」と聞くと、彼女はべらを置いて言った。「昔は会えなかったがかわいそうだとった。今は、会いにこうとしたが自分を責めなくていいとった」。

その言葉を聞いた、僕は妻が自分に何かを伝えようとしている気がした。けれど紗季は鍋の蓋を閉め、卓に皿を並べ始めた。僕は伝おうとして、どの皿を使えばいいのか分からずち尽くした。妻が「そこのいの」と教える。暮らしたなのに、彼女の順をらない。僕はそれがさな恥ずかしさであると同に、これから覚え直せることでもあるとった。

夕、僕は洗い物を引き受けた。紗季は最初「いいよ」と言ったが、僕が「今は僕が使った皿もあるから」と返すと、何も言わずに台所を譲った。スポンジの置き所を探しながら、僕は妻の映画のを反芻した。会えなかったを責めるのではなく、会いにったが自分を責めなくていい。もし妻が毎レストランへ通いながら、僕のを自分のせいにしていたのなら、僕は謝るべき相にい、謝らせ続けていたことになる。

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寝る、僕は鞄から映画のチラシを取りして机に置いた。紗季はそれを見て「あなたもったの?」と尋ねた。「を通っただけ」と答えると、妻は「そう」と言って裏面の映を見た。僕は枚のチケットのことをっているとは言えなかった。聞くためには、どうやってったのかを説しなければならない。彼女に隠し事をしたまま会話を続けることの自然さが、しずつ耐えがたくなっていた。

翌朝、僕は池に話をかけた。写真のデータが事務所に残るのか気になったからだ。池は契約に従って定期保管したのち消すると説し、僕は追加の複製を頼まなかった。調査に支払った額は戻らない。それ以に、妻を信じられなかった自分の判断は消せない。僕はいつか紗季にこのことを話し、られても言い訳しないと決めた。

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