みかん小説
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"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第9話

彼女の友達

その週の朝、マンションのエントランスで、紗季の友のに会った。は妻が文化センターで働いていた頃からのりいで、僕も何度か挨拶したことがある。彼女はきな袋を持ち、僕を見るとし驚いた顔をした。「紗季さんに頼まれて、資料を届けに来たんです」。僕は礼を言い、つい「最、妻は元気ですか」と尋ねてしまった。

はすぐには答えなかった。エレベーターの扉がき、誰も乗らないまま閉まるのを待ってから、「それ、私に聞くことですか」と静かに言った。僕は言葉に詰まった。彼女は声を荒らげず、「紗季さんが何を考えているかは、私から話せません。でも、本に聞かないまま周りに答えを探すのは違うといます」と続けた。僕は反論できなかった。探偵にまで頼んだことをられたような気がして、線を落とした。

「はよく、あなたの話をしてましたよ」とが言った。「忙しいけど頑張ってるって、帰りが遅くても体を壊さないか配だって。でも最は仕事の話がいです。取材がうまくいったとか、しいとりえたとか」。それは妻が元気を取り戻しているという話のはずだった。僕はなぜか、自分が話題から消えたことをしくった。けれど妻が僕の話をしなくなったのは、妻の世界が広がったからだけではないだろう。

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は袋を抱え直し、「紗季さんがでかけることを、悪いことみたいにわないでくださいね」と言った。僕は頷いた。妻には妻の友がいて、僕のらない仕事があり、僕のいない休がある。それを脅威のようにじる自分の方が、おかしいのかもしれない。エレベーターに乗るへをげると、彼女は「ちゃんと話せるといいですね」とだけ言って扉を閉めた。

部へ戻ると、紗季は洗濯物をたたんでいた。「さんが来てたよ」と伝えると、「あ、資料を受け取る約束だった」と笑った。僕は袋を渡し、「最、仕事が楽しそうだね」と言った。妻は「うん。より自分で決められることが増えたから」と答えた。僕はその言葉を聞いて、いつか妻に何かを決める自由がなかったのだろうかと考えた。制した覚えはない。でも、僕の予定にわせることを当然にしていたのなら、同じことだったのかもしれない。

午、僕は久しぶりにで事をした。洗濯のフィルターを掃除し、呂の排を洗い、りない用品をきした。作業はった以にがかかり、紗季が休の半分をこうしたことに使っていたとった。夕方、妻が「ありがとう、助かった」と言った、僕は嬉しさより先に申し訳なさをじた。けれど、謝罪の言葉だけでは毎の仕事は減らない。

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翌週も自分でできるように、買い物のメモをスマートフォンに残した。

夜、紗季はから届いた写真を見て笑っていた。何の写真か聞くと、版社の企画で取材した商の古い板だという。妻は僕に画面を向け、「この字、昔の職さんがで描いたんだって」と説した。僕はその話を最まで聞いた。結婚記まであと。僕がりたいことはほどあったが、妻が話したいこともまた、ほどあるのだと初めてえた。

僕は台所の隅に置いていた古い買い物リストを見つけた。紗季の字で洗剤、米、池と並び、そのにさく「自分の本」とかれていた。活用品と同じ欄に、彼女が欲しいものがつだけ紛れ込んでいる。僕は自分の欲しい物なら迷わず買っていたのに、妻が本を冊買うことさえ予定に入れていた理由を考えた。答えを勝に決めず、いつか本に聞こうとった。

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