みかん小説
本棚

"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第13話

約束の値段

翌朝、僕は紗季と計の資料を広げた。宅ローンの残額、管理費、保険、用品、の共通の貯。結婚してから何となく続けてきた支払い方を、初めて表にして確認した。妻は自分の通帳を持ってきたが、僕は残を覗き込まなかった。必な支について互いに説し、別々に暮らすの費用をどう負担するか話しった。の問題を数字で解決できるわけではないが、曖昧なままにして妻を困らせることは避けたかった。

紗季はしい部の敷と最初の賃を、自分の貯から支払うつもりだと言った。僕が「僕もすよ」と申しると、「今は自分で払いたい」と断られた。僕は理由を聞き、妻は「自分の選択として始めたいから」と答えた。その言葉を聞いて、援助を申しることさえ、相の希望を確かめなければ押しつけになると分かった。僕は代わりに、の固定費は当面自分が負担すると提案し、紗季はそれなら助かると言った。

話しいの途、妻は「器は全部持っていくわけじゃないよ」と笑った。僕はその笑い方を久しぶりに見た気がした。「本棚は?」と聞くと、「半分くらい。仕事の資料がいから」。どの本を運ぶか緒に確認しているうちに、僕は紗季が何冊も同じ作の本を集めていることに気づいた。昔好きだった作ではない。

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「いつから読んでるの」と聞くと、「くらい」と言った。、僕は同じ部でその本の背表を見ていたはずだった。

午、僕は紗季の希望で引っ越し業者の見積もりにち会った。運ぶものは机、本棚、類としの器だけで、きな具は必ないという。担当者が「ご夫婦で居へお引っ越しですか」と尋ねた、僕は答えに迷った。紗季が「私です」と言うと、担当者は事務に頷き、荷物の量を確認した。誰かの活が変わることは、から見ればこんなにも静かな続きなのだとった。

見積もりのあと、僕はベランダにた。紗季が毎植えていたさな鉢には、のが咲いている。やりを忘れたには彼女が気づいてくれた。僕はの名をらず、何度か聞いたことさえ忘れていた。部へ戻って「この、何ていうの」と尋ねると、妻は「アスター」と教えてくれた。「毎咲くの?」と聞けば、「これはだよ。毎、苗を買い直してるの」。僕は初めて、同じように見えた季節が誰かので更されていたことをった。

夕方、僕は仕事の同僚に来週以の業務の分担について相談した。これまで夜の会や休の連絡を断れず、庭の予定はすべて回しにしていた。野は「急ぎでなければ翌朝でいい案件もいですよ」と言った。僕は自分が必とされたいあまり、誰にも頼まれていない仕事まで抱え込んでいたことに気づいた。

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妻を待たせてきた理由の部は、会社ではなく僕自にあった。

紗季は「引っ越しの、荷物を運びすだけにいてくれる?」と尋ねた。僕はすぐに「もちろん」と答え、仕事の予定を確認した。彼女は「ありがとう。続きは自分でするけど、管理さんへの説を緒にお願いしたい」と言った。僕が何でも引き受けるのではなく、必な部分だけを頼まれる。その具体なやり取りが、曖昧な優しさよりずっと確かなものにじられた。

その夜、紗季は本棚ので冊ずつ本を選んでいた。僕が伝おうとすると、「これは自分でやりたい」と言われた。僕は頷き、別の部で自分の荷物を理した。古い張の資料、使っていない名刺入れ、買ったまま読んでいない本。片づけをめると、僕にもなものがたくさんあった。の活を見直すことは、妻だけが何かを捨てることではない。僕も、自分の持ち方を変えなければならなかった。

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