みかん小説
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"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第14話

帰る刻

、取引先から急な修正依頼が入った。翌の午に提する企画の数字が変わり、営業部の会議は慌ただしくなった。僕はいつものように「今夜、残って対応します」と言いかけた。けれど、はだ。資料の修正自体は複数で分担できるし、僕がすべて抱え込む必はない。僕は度呼吸し、野と若のに作業を振り分ける提案をした。

司の相原は「瀬尾が最まで見てくれるとなんだが」と言った。以の僕なら、その言を評価だとって残業を引き受けただろう。今回は「最終確認は私がします。ただ、の夜は私用があるので、提は定で失礼します」と答えた。相原はし驚いたが、すぐに「分かった。では今に確認の順を共してくれ」と言った。僕が恐れていたほどきな問題にはならなかった。

作業を分担すると、これまで見えていなかったことが見えた。は僕がで修正していた表の作り方をらず、野は取引先との確認事項をメールで受け取っていなかった。僕が忙しさを誇るほど、周囲には報が残らなくなっていたのだ。僕は順を文にし、必な資料を共フォルダーへ移した。に任せることはを抜くことではない。自分だけが分かる状態を作らないことも、仕事の責任なのだとった。

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昼休み、紗季から「は夕飯いらないよね?」と連絡が届いた。僕は画面を見つめた。妻が予定を確認してくれたのは、最の記の夜に自分がへくからなのか、それとも単なる活の連絡なのか。僕は「うん。自分で済ませる。いつもありがとう」と返した。すぐに「解」と届いた。以ならそこで終わりだったが、今回は「のこと、ちゃんと話したい」と続けて送ろうとして、を止めた。妻の予定に割り込むに、まず自分がどう向きうかを決めたかった。

帰宅すると、紗季はさな箱に写真を詰めていた。僕たちが旅先で撮ったもの、親戚の集まりで撮ったもの、結婚式の写真。彼女は写真を捨てているのではなく、持っていく分とに残す分を分けていた。「この写真、持っていっていい?」と聞かれたのは、辺でが笑っている枚だった。僕は「もちろん」と答えた。写真を分けても、そのに笑っていた事実が消えるわけではない。

「あなたも好きな写真を選んで」と紗季が言った。僕はアルバムを勝に見たことをいし、胸が痛んだ。写真の箱をくと、彼女が撮った僕の寝顔や、で作った格好な料理が写っている。僕は結婚式の写真ではなく、最初のアパートの狭い台所でが笑っている写真を選んだ。妻はそれを見て「懐かしいね。

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あの頃はお皿も枚しかなかった」と言った。

帰り際、が「、取引先から質問が来たらどうしましょう」と声をかけた。僕は修正履歴と担当窓を緒に確認し、「急ぎなら野さんに連絡して。の朝には僕も見る」と伝えた。はしたように頷いた。誰かが困らないように段取りを残しておけば、僕が夜まで居残る必はない。そんな当たりのことを覚えるのに、ずいぶんがかかった。

に着くと、紗季が翌の仕事用の資料を鞄に入れていた。僕は「は僕もく仕事を終えるつもり」と伝えたが、き先は言わなかった。妻は「そうなんだ」と答え、取材で使う録音の池を確かめた。僕はその横で翌朝のごみをまとめた。が同じ部にいて、それぞれの予定を持っている。その状態をではなく普通のこととして受け止められたのは、久しぶりだった。

その晩、僕は翌のを子に掛け、財布のを確かめた。束も価な贈り物も用していない。物で埋められる空ではないことを、もう分かっていたからだ。机には探偵の報告が入った封筒がある。これを隠したまま妻のに座ることはできない。僕は封筒を鞄に入れた。妻が僕を拒む理由がつ増えるかもしれないが、それでも話さなければならなかった。

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