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"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第15話

の朝

の朝、紗季は普段どおりに起きた。窓のはい曇りで、ベランダのアスターがに揺れている。僕は先に台所へち、分のコーヒーを淹れた。紗季が「珍しいね」と笑ったので、「いつも任せてたから」と答えた。妻はカップを受け取り、テーブルに座った。僕は「今は遅くならない」と言いかけ、言葉をみ込んだ。彼女はもう、僕の帰宅を待つ必がないのかもしれない。

「だね」と僕が言うと、紗季はカップの縁を指でなぞった。「そうだね」。僕は「今まで何もしてこなくて、ごめん」と続けた。妻は驚かなかった。「何も、ってわけじゃないよ。旅にもったし、楽しいこともあった」。僕は頷いた。彼女が結婚活のすべてを否定しているわけではないことが、かえって胸に響いた。楽しいもあったからこそ、待ち続けたがかったのだろう。

「今はどうするの?」と妻が尋ねた。僕は「仕事が終わったら、しきたいところがある」と答えた。紗季は「そう」と言い、いつもよりゆっくりコーヒーをんだ。僕はの名をにしなかった。彼女が予約した席へ、勝に当然のように座ることはしたくない。って、もし入ることを断られたら帰ろう。僕はそう決めたが、胸の奥では断られることを恐れていた。

洗面所で髭をそりながら、僕は結婚指輪を見た。

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仕事ですこともあるが、最は指輪のをほとんど識していなかった。紗季はしから指輪をしている。いつからなのか聞いたことはない。僕は自分の指輪を回し、相が同じものをつけているかどうかで気持ちを測るのはやめようとった。必なのは形を確かめることではなく、彼女が話したいことを聞くことだった。

会社では、朝から企画の最終確認が続いた。が修正箇所を説し、野が取引先への送付順を確認する。僕は全員の仕事を確かめ、必な箇所だけを入れた。午、先方から受領の連絡が届いた。いつもならそこから別の案件を探して残っていただろう。けれど今は、自分が約束したを守るために仕事を終えることも必だった。

退社、相原が僕を呼び止めた。「今はもう帰るのか」。僕が頷くと、司は「珍しいな。何かあるのか」と聞いた。「結婚記なんです」と答えると、相原は目を丸くしたあと笑った。「それは帰れ。俺も昔、同じことで失敗した」。軽い冗談のように聞こえたが、僕は笑えなかった。僕の失敗は度ではない。のうち回、妻をでへかせた。その数を初めて正面から考えた。

駅へ向かう途、のでが止まった。とりどりの束が並び、員が「贈り物ですか」

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と尋ねた。僕は「し考えます」と答えてをた。紗季が好きだったのは、豪華な束よりも季節のさなを自分で選ぶだった。今夜必なのは、妻の好みを分かったふりをする贈り物ではない。彼女が何を言っても途で遮らず、聞くことだとった。

駅の改札を抜けたところで、野から企画の確認が終わったと連絡が届いた。「先方も問題なしです。今はゆっくりしてください」。僕は「ありがとう。、結果を聞かせて」と返した。仕事のことが気にならないわけではない。けれど、配だからといっていつでも仕事へ戻れば、また同じことを繰り返す。僕は通を切り、鞄のへスマートフォンをしまった。

の予約までまだがあった。僕はを本め、レストランのある通りへ向かった。駅のは入れ替わっていたが、細いと畳の部は昔のままだった。角を曲がると、真鍮の鈴ががった扉が見えた。窓際にはさな灯りがともり、いテーブルクロスが見える。僕はを止め、鞄のの封筒を確かめた。今、妻に伝えるべきことはつの謝罪では済まない。そのさを持ったまま、僕はへづいた。

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