"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第18話
言わなければならないこと
菜が運ばれてくるまで、僕は鞄のの封筒を何度も識した。紗季はの壁に飾られた絵を見て、「これ、は違う絵だったよね」と言った。僕は気づかなかったが、彼女は「に替わったの」と続けた。こので過ぎたを、妻は僕よりずっと詳しくっている。僕はその事実を受け止めながら、今夜のうちに伝えるべきことを先延ばしにしたくなかった。
「紗季、最初に謝らなきゃいけないことがある」と切りした。妻はフォークを置き、僕を見た。僕はスマートフォンの通を偶然見たこと、が分からずになったこと、そして探偵にを調べてもらったことを順番に話した。アルバムも勝にいたと告げた。言い訳に聞こえないように説するつもりだったが、にするほど自分のしたことが勝にえた。「本当に、ごめん」と言ってをげた。
紗季はしばらく何も言わなかった。やがて「探偵まで頼んだの?」と尋ねた。僕が頷くと、彼女は唇を結び、窓のを見た。「私がどこへってるか、そんなに気になったんだ」。僕は「婚するつもりなのかとって、怖くなった」と答えた。紗季はさく息を吐いた。「、私が何をしてるか聞かなかったのに。急に怖くなったら、私に聞かずに調べるんだね」。その言葉に、僕は何も返せなかった。
広告
「嫌だったとう。って当然だよ」と言うと、紗季は「うん、嫌だよ」とはっきり答えた。「自分のきたいところへって、友達と会って、仕事をして。それをろから見られてたなんて、気持ちが悪い」。僕は調査をで終わらせたことも、追加を断ったことも言わなかった。途でやめたから許されるわけではない。妻のを自分のを埋める材料にしたことは、変わらなかった。
紗季はをみ、し落ち着いてから「アルバムも見たんだね」と言った。僕は頷いた。「の写真の裏にいたことも?」と聞かれ、「見た」と答えた。妻は目を伏せた。「あれは誰かに見せるつもりでいたんじゃない。毎、帰りに泣かないように、あそこへ気持ちを置いてきたの」。僕はその言葉を聞き、アルバムを証拠として扱った自分の浅はかさをいった。妻にとっては、誰にも見せない記のようなものだったのだ。
「今夜、ここへ来てくれたのは嬉しい」と紗季は言った。「でも、来てくれたから全部許せるわけじゃない。私のことをりたいなら、まず聞いてほしかった」。僕は「その通りだとう」と答えた。彼女は続けて「今のことは、しばらく考えさせて」と言った。僕は頷き、員に料理の提供をし遅らせてもらえないか頼もうとしたが、紗季が「事は続けたい」と言ったので、席をたなかった。
広告
「報告は、まだ持ってるの?」と紗季が尋ねた。僕は鞄から封筒をし、かずにテーブルの端へ置いた。「事務所には追加調査をしないと伝えた。データの扱いも確認した。でも、これをどうするかは、あなたの気持ちを聞きたい」。紗季は封筒を見つめ、「今は見たくない。に帰ったら私ので処分して」と言った。僕は頷いた。彼女の姿が写ったを、自分のの記品として残すつもりはなかった。
料理が運ばれ、は静かにべ始めた。僕は何度も言葉を探したが、謝罪をねて妻に返事を求めるのは違うとった。紗季は魚をべ、「このソース、昔とし変わったんだよ」と教えてくれた。僕はわってから「本当だ。より酸があるね」と答えた。妻はさく頷いた。会話が続いたからといって、信頼が戻ったわけではない。それでも僕たちは今、同じテーブルで互いの言葉を聞いていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 3 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 2 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 1 -
完結第20話
月30万円の親孝行は、誰の財布から?
夫から突然告げられた、義母への「毎月三十万円」の仕送り。妻・美奈子は反対せず、静かに「いいよ」と答えた。 三日後、銀行で残高四万円を知らされた夫は激怒する。だが美奈子は、二十二年間で家計へ補填した一千二百万円超の記録を並べ、「その三十万円、誰の収入から出すつもりだったの?」と問い返す。嫁姑|夫婦|介護|金銭問題2.8万字5 6 -
完結第16話
雪の空港で消えた四人と第七格納庫
1989年のクリスマスイブ、北海道の空港から四人の客室乗務員が姿を消した。車には荷物と靴だけが残され、手掛かりのないまま35年が過ぎる。 2024年、解体中の旧格納庫で隠し部屋が発見され、事件は再び動き始めた。浮かび上がったのは、空港内部を熟知し、彼女たちを密かに監視していた元整備士だった。ミステリー|真実|真相1.9万字5 0 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 81 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 125