みかん小説
本棚

"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第20話

ずつ

席をつ、僕は員に声をかけた。「来の、同じに予約はできますか」。紗季が驚いたように僕を見たので、僕はすぐに続けた。「まだ先の話だから、仮の希望だけでいいです。妻が嫌なら取り消します」。員は予約帳を確認し、「来の受付はもうし先になりますが、ご希望を控えておくことはできます」と答えた。僕は自分の連絡先を渡し、正式な予約の期になったら連絡をもらうことにした。

のへると、夜がったよりたかった。紗季はコートの襟をえ、僕の横に並んだ。「来も来るつもりなの?」と聞かれ、「来たいとってる」と答えた。「再来も、その次も」と言いかけて、僕はを閉じた。、僕は簡単に「毎」と言った。その約束を守れなかったが、今ここで同じ言葉をねてもはない。

「まず、来」と言い直すと、紗季はし笑った。「ずつ?」。「うん。ずつ。来のそのが来るまで、何があるか分からないから」。妻は歩の先を見つめた。「私、にはをるよ。それでも?」と尋ねられ、「それでも」と答えた。「夫婦でいられるかどうかとは別に、あなたと話せるでいたい」。紗季はしばらく黙り、「それなら、来のことは来考えよう」と言った。

僕たちは駅へ向かって歩いた。いつもなら僕がになり、紗季がし遅れてついてくる。

広告

今は信号でち止まった、彼女が隣にいることを確かめた。青になってからも急がずに歩くと、紗季は「そんなにゆっくり歩くだったっけ」と笑った。僕は「今までは、急ぎすぎてたのかもしれない」と答えた。妻はその言葉に返事をせず、沿いのを見た。「あの、のがきれいだね」と言った。

駅の広で、紗季がスマートフォンを取りした。画面には「 最終」と表示されていた。僕は何も言わなかった。妻はしばらくその文字を見つめ、指先で予定をいた。「消すの?」と聞きかけたが、を閉じた。彼女がどんな名をつけるかは、彼女が決めることだ。紗季は「最終」の文字を消し、ゆっくり別の言葉を入力した。

「結婚記」。保された画面を見て、僕は胸がくなった。けれど紗季は「これで元どおりってことじゃないよ」と言った。僕は「分かってる」と答えた。「ただ、最終って決めてしまうのは、今の気持ちとし違うから」。妻はスマートフォンをしまい、「私も、まだどうしたいのか考えてる途なんだとう」と続けた。その言葉が僕にはありがたかった。彼女は僕のために予定を変えたのではなく、自分の気持ちを確かめてき直したのだ。

マンションに戻ると、紗季は玄関の照をつけ、いつものように靴をそろえた。僕は台所へき、分の湯を沸かした。

広告

「お茶、む?」と聞くと、「しだけ」と返ってきた。僕たちは卓で温かいお茶をみ、のごみしや、週末に運ぶ本の箱について話した。特別な会話ではなかった。それでも僕は、相の返事を待ち、自分の希望も伝えながら話すことが、こんなに難しく、こんなに切なのだとじていた。

寝る、僕はスマートフォンの予定表をいた。来のに「結婚記」と入力し、通を週とに設定した。けれど、それだけではりないとい、の予定に「紗季の引っ越し準備について、本に必なことを聞く」といた。来の席を予約するに、できることがある。僕は机のに置いたアルバムを見た。最の空のページに、どんな写真が貼られるかはまだ分からない。

台所で使ったカップを洗い終えた、紗季が「報告、処分してくれる?」と尋ねた。僕は鞄から封筒を取りし、彼女のでをシュレッダーにかけた。紗季はそれを見届け、「ありがとう」とだけ言った。僕はそれで許されたとはわなかった。ただ、妻が望まない記録を自分の元に残さないという、さくても必なことをつ終えた。

寝へ戻ると、紗季は窓のを見ていた。「おやすみ」と言うと、妻は振り返って「おやすみ」と答えた。僕はの帰宅を伝え、彼女の予定も聞いた。

紗季は「午は取材。夕方はまだ決めてない」と言った。「分かった。決まったら、話したいに話して」と答えると、妻はさく頷いた。の約束を、今だけで取り戻すことはできない。だからも、僕は彼女の言葉を聞こうとう。来、同じ席で会えるかどうかはまだ分からない。それでも、もう度と何も聞かずに待たせるつもりはなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: