"白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました" 第10話
牛丼をべたまま、私は帰らなかった
牛丼をた私は、これまでのとは反対方向へるに乗った。
会社の最寄り駅まで分。
そこから居までは徒歩分。
午。
私はしい部の扉をけた。
「ただいま」
返事はない。
けれど、それでいい。
ベッド。
さなテーブル。
袋でしずつ運んだ。
蔵庫には牛乳と卵。
洗面台には自分の化粧品。
誰にも触られていない。
誰にも、
「ここへ置かないで」
「公平の物と緒にしないで」
と言われない。
私はシャワーを浴びた。
午分。
公平からLINEが届いた。
《遅くない?》
返事はしない。
零を過ぎた頃。
《牛丼何ってんだよw》
笑っている顔の絵文字付き。
それもかなかった。
翌朝。
半に起きた。
トーストを焼き、目玉焼きを作った。
自分のための朝。
そして会社へ歩いてった。
午を過ぎた頃、公平から話が来た。
ない。
分。
また。
さらに。
までに件。
には件を超えた。
昼、件くになった。
公平の焦りが、着信件数になって積みがっていく。
昼休み。
会社裏のさな公園へき、私は次の着信へた。
「おどこにいるんだよ!」
最初から鳴り声だった。
「会社」
「昨どこで寝た?」
「自分の」
「うちがだろ!」
私は静かに答えた。
「もう違うよ」
話の向こうが止まった。
「何言ってんだよ。
広告
どこに泊まったんだ?」
「で弁護士の先から連絡がく」
「弁護士?」
公平の声が裏返る。
話越しに、芳の声も聞こえてきた。
どうやら公平は会社を休んでいるらしい。
公平が朝、クローゼットをけて初めて気づいたのだ。
私のがほとんどない。
化粧品もない。
類もない。
ノートパソコンもない。
「から準備してたのか?」
「半」
「半?」
「あなたが『麻子がすれば済む』って言ったから」
い沈黙。
公平は、そんなことを言ったことすら忘れていたのかもしれない。
「ちょっと待てよ。昨の米のことでってるなら、母さんもやりすぎたって――」
「昨だけじゃない」
私は付を言った。
「。唐揚げ、個、個、個」
「……」
「。すき焼き。私の鍋に肉は枚もなかった」
「麻子」
「。あなたたちはうな。私は梅干しのおにぎり個」
「そんなの……」
「昨、特寿司と米」
公平が苛ったように言う。
「そんなのいちいち覚えてんのかよ!」
「記録してるから」
話の向こうが静かになった。
「でもね」
私は続けた。
「私が番嫌だったのは事じゃない」
「じゃあ何だよ」
「あなたが毎回、横で笑ってたこと」
公平は何も言わなかった。
「お母さんが私の皿を減らすたび、あなたは笑った。私が助けてって言ったら、流せ、しろ、面倒だって言った」
「……」
「だから帰らない」
そこで芳が話を取りげた。
「麻子さん!」
声が響く。
「そんなことでをるなんてげさよ!」
「ではありません」
私は答えた。
「別居です」
「嫁でしょう! 嫁が夫のを勝にていくなんて――」
「昨、お母さんが言いましたよね」
「何を?」
「でをやしてきなさいって」
芳が黙る。
「公平さんは好きにしろって言いました」
「それは牛丼べたら戻ってくるってでしょう!」
「牛丼はべました」
私はし笑った。
「おいしかったですよ」
「じゃあ帰って――」
「そのまま居へ帰りました」
話の向こうが完全に静まり返った。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 2 -
完結第10話
義母に突き落とされたので、離婚します
十九年間、義母の虐待と夫の無関心に耐えてきたさつき。妊娠中、義母に階段から突き落とされ重傷を負うが、夫は愛人と過ごし、彼女の訴えを切り捨てる。 病室でさつきが残したのは、離婚届と「あなたが守らなかったものを、私は守ります」の一文。元刑事の父と証拠を集め、義母を実刑へ、夫を失職と離婚へ追い込む。因果応報|怒り|嫁姑|修羅場1.4万字5 63 -
完結第14話
十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった
十八年間デパ地下を支えた契約社員・千鶴は、新店長から「高齢者の代わりはいくらでもいる」と突然解雇される。 だが、毎週安い弁当を買う老人の正体は、大手食品会社の会長。かつて倒産寸前だった彼の弁当を世に広めた恩人こそ、千鶴だった。職場逆転|退職金|金銭問題|修羅場1.9万字5 0 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 0 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 0 -
完結第20話
月30万円の親孝行は、誰の財布から?
夫から突然告げられた、義母への「毎月三十万円」の仕送り。妻・美奈子は反対せず、静かに「いいよ」と答えた。 三日後、銀行で残高四万円を知らされた夫は激怒する。だが美奈子は、二十二年間で家計へ補填した一千二百万円超の記録を並べ、「その三十万円、誰の収入から出すつもりだったの?」と問い返す。嫁姑|夫婦|介護|金銭問題2.8万字5 1 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 48 -
完結第20話
妻の予定表に書かれた「最終日」
妻の予定表に記された、結婚記念日の「最終日」。夫は離婚を疑うが、その言葉には、十四年間積み重なった妻の孤独が隠されていた。 毎年同じレストランに二人分の席を予約し、来ない夫を一人で待ち続けていた妻。彼女は今年を最後に、待つことをやめようとしていた。夫婦|真相|第二の人生2.8万字5 30