みかん小説
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"路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算" 第9話

創業者の朝と、庫の敬礼

翌朝、曜の午半。 美咲は護師のを詰めたバッグをに、「お父さん、ってきます! 今も患者さんのために頑張ってくるね」と、昨までとは見違えるように背筋を伸ばして勤していった。 娘のろ姿を見送った庄は、いつものように仏壇にをわせ、午分の線バスに乗り込んだ。

につけているのは、仕ての良いスーツではなく、着古した作業着のグレーのジャンパーに、くたびれた鳥打という質素なでちだ。 ハンドルを握っていたのは、やはり野だった。 曜の朝とあって、内は通勤のサラリーマンや通学ので満席だったが、駅で半の乗客がり、終点にづく頃には、内に残っているのは庄だけになった。

バスは駅の裏を抜け、郊の広い敷へと入っていった。 『島交通・央営業所』。 広な庫には、朝のを浴びて磨きげられた数台の線バスが然と並び、備士たちの気よいハンマーの音が響いている。 バスがし、扉がいた。 庄が席をつと、野は運転席から素くり、制を脱いでくをげた。

「会、お元にお気をつけて」 庄は苦笑いを浮かべ、鳥打の庇を指先で押しげた。 「野君、会と呼ぶなといつも言っているだろう。

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ここへ乗ってくるは、ただの乗客だ」 「申し訳ありません! のお客様がいらっしゃらないと、つい……」 野は恐縮してを掻き、それからし躊躇いながら、真剣な差しで尋ねてきた。 「あの……昨は、お嬢様、丈夫でしたでしょうか?」

「ああ。配をかけたな。あの子は自分で決めたよ」 「……そうですか!」 野の顔に、底堵したようなるいが広がった。 「本当に良かったです……! お嬢様、昨の帰りはずっと涙をこらえていらっしゃったので、気になって仕方がなくて……」 「野君。昨の帰りは、ずいぶんと丁寧にってくれたな。ありがとう」 「いえ! 泣いているお客様が乗っていらっしゃるは、絶対に揺らさずにれ――の頃、会から直々に教わった教えですから!」

庄は何も言わず、野のたくましい肩をポンと度だけ叩いた。 庫を歩いて本社ビルへ向かう庄に、すれ違う備士や運転たちが「おはようございます、会!」「ご苦労様です!」と次々に直でをげる。 庄はそのひとりに、「おはよう、今も頼むぞ」「邪をひくなよ」と声をかけて回った。

余り、庄が運送会社のトラック運転としてがむしゃらに働き、全財産を叩いて購入した、たった台の古バス。 部の過疎集落と町の病院を結ぶ公共交通が何つなく、いをも歩いて通院していた老たちのために始めた事業だった。

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『台で会社ごっこか、物乞いならよそでやれ』とから融資を断られ、座をして資を面した々。 庄がハンドルを握り、嫁いできたばかりのかず子が掌として切符を切り、には凍える乗客のために縫いの座布団を座席に敷き詰めた。 台が台になり、台になり、やがて県の総交通グループへと成した今も、庄の原点はあの「たった台の古バス」にあったのだ。

「会、おはようございます」 本社ビル階の役員フロアで、現社の井(歳)が駆け寄ってきた。 「本の午より、駅バスターミナル築事の最終コンペ説会が予定されております。最終選考に残った社がプレゼンをいますが、会もご同席いただけますね?」 「ああ、席するよ。……黒田産も、来るんだったな」 庄の静かな問いに、井社は「はい、参加予定です」とく頷いた。

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