みかん小説
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"路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算" 第17話

の訪れと、菓子の桜餅

が駆けで過ぎり、季節は巡っての第曜を迎えた。 朝の、庄が戸をけると、庭には眩いばかりのの陽がり注いでいた。 犀のは瑞々しい若葉を萌えでさせ、隣の塀越しに見える梅は、名残りのびらをに散らしている。 「かくなったなあ、かず子」 庄は呼吸をし、朝の清々しい空気を肺いっぱいに満たした。

午、庄はのに包まれた商を歩き、馴染みの菓子『松堂』の簾をくぐった。 「あら、島さん! おはようございます!」 女将が割烹着の袖をまくり、満面の笑みで迎えてくれた。 「おはようございます。今朝作ってもらった桜餅を、つ包んでいただけますかな」 「はいはい、毎度ありがとうございます! 今朝番の、伊豆の島桜の葉で包んだ来てですよ」

女将は際よく箱から桃の桜餅を取りし、折箱に並べながら、ふと庄の顔を覗き込んだ。 「それにしても島さん、つだなんて……今はお客さんですか?」 「ええ、まあ……娘が、を連れてくるそうでしてね」

女将のがピタリと止まった。 そして、その顔全体が、まるでのが斉にほころんだかのようにパッと輝いた。 「まあ……! まあまあまあ! それじゃあ、奥様のお供えの分、つおまけしておかなくちゃ!」

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「いやいや、そんな気を使ってもらっては困りますよ」 「いいのいいの! あの、涙をこらえていた美咲ちゃんの顔をえば、私まで嬉しくてたまらないんだから!」

折箱を抱えて自宅に戻った庄は、真っ直ぐに仏へ向かった。 皿に桜餅をつ乗せ、仏壇へ供える。線にを灯し、鉦を澄んだ音で度鳴らした。 「かず子。美咲が、連れてくるよ」 遺ののかず子は、のを浴びて、誇らしげに微笑んでいた。

「誰だとう? ……野君だよ。うちの営業所の、あの運転の野君だ。おも覚えているだろう。入社したの暮れ、営業所の餅つき会で、おの横で真っ赤な顔をして杵を振っていた、あの朴訥な青だ」

実は、がけたの末、美咲の方から野にいを伝えたのだという。 『野さん。私の父は、バスで来たを嘲笑うようなを、わずか分で断ったです。あなたが運転さんだからといって、がっかりするような父ではありません』 野は驚きのあまりまで真っ赤にし、それから涙を浮かべて「僕でいいんですか」と答えたのだそうだ。 に美咲が台所で甘い卵焼きを焼きながら、恥ずかしそうにその顛末を話してくれた夜、庄は仏で、かず子の好きだった辛の本酒をだけ、静かに呑み干したのだった。

午分。

約束のの分。 表の通りから、トコトコと軽やかなエンジンの音がづいてきて、の脇に静かにまった。 庄が縁側から覗くと、そこには台のい軽自があった。 以は乗り古しているであろう型落ちのだったが、洗がき届き、ガラスには指紋つなく、タイヤも黒々と磨きげられていた。

からりてきた野は、着慣れない濃紺のスーツにを包んでいた。 肩幅が広いせいでし窮屈そうに見え、ネクタイの結び目は、やはりしに傾いている。 そのには――庄の目が丸くなった。 若の、真しい綿の呂敷包みが、切そうに両で抱えられていた。

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