みかん小説
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"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第1話

古い卓と真夜の通告

夕飯の片付けを終えた午過ぎ、キッチンの換気扇が静かに回る音だけがLDKに響いていた。 私――篠原美奈子(しのはら・みなこ・歳)は、ダイニングテーブルの隅で、以使い続けて印字が擦れかけた古い卓を叩いていた。指先が弾くプラスチックの乾いた音が、静寂を規則正しく刻む。 私の目のには、き溜めてきた黒い計簿と、冊の通帳、そしての女・が広げっぱなしにして自へ戻った学学のカラーパンフレットが積まれていた。

「私理系、初度納入で約百万……これに入学と受験料、滑り止めの併願を含めると、までに最でも百万は元に確保しておかないと厳しいわね……」 私は誰に聞かせるでもなく呟き、ため息を呑み込んだ。 ため息の理由は、の学学費用だけではなかった。 学になった男の陸は野球部に所属しており、毎週末のように征や練習試が入る。成期の男子学の欲は凄まじく、毎晩炊飯器の炊きの釜が空になる。それに伴い、米代も肉代もここ数でねがっていた。スーパーの棚を見るたび、卵も牛乳もじわじわと数円単位で値がりしており、々の基礎活費は私の計算をやすやすと超えていく。

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現、がの活費は、夫である達也(たつや・歳)名義のメガバンクの座つで括管理している。 毎の料、夫の与から万円、私の与から万円をその座に振り込む。計万円。 そこから、宅ローンが万円、費が万円、費が万千円、の教育費や通信費、命保険料、雑費が引き落とされる。 見すると「夫婦共働きでゆとりのある庭」に見えるかもしれない。 だが、それは表向きの数字に過ぎなかった。 陸の部活の征費が急に万円必になった、蔵庫から異音がして買い替えた、の期講習代が引き落とされた――予定の費が発するたび、活費座の残は簡単に底をつきかける。そのたび、私は夫に「今りないからおを入れて」とは言えず、自分名義の個預座から、万円、万円と黙って活費座へ補填してきたのだ。

「今も……あと万円くらい、私の座から移しておいた方が全かしらね」 卓のクリアボタンを押し、赤鉛でさくメモをきしたその、玄関のドアがガチャリとい音をてていた。 革靴を脱ぎ捨てる音、ネクタイを乱暴に緩めながらリビングのドアをけたのは、夫の達也だった。 堅の宅建材メーカーで営業課を務める夫は、仕事に対して真面目であり、平は遅くまで働いて族を養おうとしている自負がある。

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しかし、その自負の裏側には、庭内のリアルな銭管理に対する徹底な無関が潜んでいた。

「おかえりなさい。ご飯、すぐ温めるわね」 私がちがろうとすると、達也は「飯はいい」とを軽く振って、ダイニングチェアにどっかりとく腰をろした。 眉にい皺を寄せ、ひどくい詰めたような顔をしている。 「どうしたの? 仕事で何かあった?」 私が配して声をかけると、達也はきなため息を吐きし、胸ポケットからスマートフォンを取りしてテーブルのに放りした。

「さっきまで、実の母さんと話してたんだ。……母さん、最かなり参ってるみたいでさ」 義母のふみ子さんは歳。隣町の古い県営宅で暮らしをしている。義父がにくなってからは、遺族と基礎をわせて万円ほどの支で質素に暮らしていた。 「お義母さんが? 体調でも崩されたの?」 「いや、体もそうだけど、活費だよ。物価だろ? 気代もガス代もがって、毎のじゃとてもりないって泣き言を言ってたんだ。暮らしの老に、あんなギリギリの切り詰めた活をさせとくわけにはいかないだろう」 達也の声には、母親を配する息子としての誠実な焦りが滲んでいた。親いであること自体は決して責められることではない。

私も「そうね、費や通院費くらいは援助してあげたいわね」と言葉を返そうとした。 しかし、その直に達也のからびした言葉は、私のを疑わせるものだった。

「だからさ、母さんへの仕送り、今から万な」

カラン、と乾いた音をてて、私のからボールペンが滑り落ち、フローリングのへ転がった。

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