みかん小説
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"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第3話

魔法の財布のからくり

翌朝、達也は何事もなかったかのように嫌で勤していった。 玄関で見送る際、「美奈子、通帳は借りるからな。窓で続きするのに印鑑と緒に持っていくから」と軽く言い残していった。 私は「ええ、引きしに入れておくわね」と静かに見送った。

子供たちを学へ送りし、洗濯を回した、私はリビングのテーブルに座り、達也名義の「活費座」の通帳を広げた。 表には、達也の名が印字されている。 、私たちが結婚した当初、活費をどう管理するか話しった。 「別々の座から引き落とされるとややこしいから、活費専用の座をつ作ろう」と提案したのは達也だった。本の法規、夫婦の共同名義座は作れないため、世帯主である達也の名義で座を設した。 当は、お互いの取り与から同額ずつ、あるいは収入比率にわせてしっていた。週末になればで通帳を記帳し、「今は費が浮いたからにこうか」と笑いっていた期もあったのだ。

だが、女のがまれ、そのに男の陸がまれると、活の景は変した。 おむつ代、ミルク代、予防接種代、幼稚園の謝、習い事の謝、学の費、学の制代、そしての模試代や塾の費用――。

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子供の成とともに、毎決まってていく固定費だけでなく、突発に発する流費がだるま式に増えていった。 現、がの基本な取り決めでは、達也の取り収約万円のから万円を活費座に入れ、残りの万円は達也が自由に使える遣い(昼代、ゴルフ代、み会代、趣の具代)としている。 方、私の堅商社での経理事務としての取り収は約万円。そこから毎万円を活費座に入れている。

達也の万円と、私の万円。 わせて万円。 これが、がの「表面の活費」の全貌だった。 だが、現実は万円で綺麗に収まるなど、のうちに度か度あるかないかだった。 陸の野球部のスパイクが破れて買い替えた、の歯列矯正の定期調費がかかった、自税の納付が届いた、湯器が故障して修理を呼んだ――。 毎のように、万、万、には万円の「予算オーバー」が発した。

その赤字を、体誰が埋めてきたのか。 でもない、私の個座だった。 私は自分の取り万円から活費座へ万円を入れた、残った万円のから、自分の化粧品代やわずかな代を捻し、残りを将来のための貯に回すはずだった。

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だが、活費座がショートしそうになるたび、私は夫に言えなかったのだ。 『今、陸の征費がなって万円りないの。ししてくれない?』 そう相談すれば、仕事で疲れて帰ってきた夫は必ず嫌になり、『おのやりくりがなんじゃないのか? 毎万も入れてるのにりないってどういうことだよ』と責めててくるのが目に見えていたからだ。 夫の嫌な顔を見るくらいなら、リビングの空気がくなるくらいなら、私が黙って自分の座から万円を補填した方がずっと楽だった。

私は自分のを買うのをやめた。美容院へく回数を半に度に減らし、ドラッグストアのいカラー剤で髪を染めた。学代の友からのランチの誘いも、「仕事が忙しいから」と嘘をついて断り続けた。 そうして削り取った私のおが、すべて達也名義の活費座の赤字の穴埋めへと消えていったのだ。

その結果、達也の目にはどう映っていたか。 夫にとって、この活費座は「毎決まった万円さえ放り込んでおけば、どんな費があっても自に計が回り続ける魔法の財布」になっていたのだ。 スーパーの肉の値段ががろうが、気代の請求が倍になろうが、子供が宿にこうが、座の残がりなくなることは度もない。

夫は、自分が万円を入れているだけで、の黒柱としての義務を完璧に果たしていると信じ込み、元に残った万円で休にゴルフへき、輩に酒を奢っていい気になっていた。

「魔法の財布なんて、どこにもないのにね」 私は通帳をパタンと閉じた。 夫が母親に「万送る」と豪語できたのは、この魔法の財布のに、常に無尽蔵のが眠っていると錯覚していたからだ。 そして、その錯覚を作りした最の共犯者は、波をてることを恐れて沈黙し続けてきた、私自だった。

私はスマートフォンの画面をタップし、のアプリをいた。 毎、私の与座から活費座への自送設定。 私はその額設定画面をき、震える指先で数字を打ち直した。 今、私が振り込むのは、夫婦で取り決めている正規の基本負担額と、今確定している固定費の引き落とし分だけ。 夫がいつきで約束した「万円の親孝」を支えるための余剰など、円たりとも入れない。 画面の「設定完」の文字を見つめながら、私はく息を吐きした。 賽は投げられたのだ。

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