"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第9話
息子の純粋な言
「そう。あなたのヶの遣いは万円。そこから万円はせない。……最初から分かっていたのね」 私の静かな指摘に、達也は顔を赤から青へと急速に変させた。
「な、何が悪いんだよ! 夫婦なんだから財布はつだろ! おだって毎取りで万くらい稼いでるじゃないか! 活費に万入れたって、まだ万残ってるだろ! それに今まで貯めた貯だってあるはずだ! 族が困ってるに、自分だけを抱え込んでし渋るなんて、母親として、妻として恥ずかしくないのかよ!!」
達也は逆し、テーブルを拳で殴りつけた。 自らの非を認める代わりに、私を「酷な悪妻」に仕てげることで、自分の正当性を守ろうと必だった。 だが、そのだった。
カチャリ。
リビングの引き戸が、静かに数センチだけいた。 隙から顔を覗かせたのは、ジャージ姿の男・陸だった。 父親の鳴り声に耐えかねて、階からりてきたのだろう。 陸は怯えた様子で部の空気を窺い、テーブルを挟んで睨みう私たちを交互に見つめた。
「……陸。部に戻っていなさい」 達也が苛ちをわにして追い払おうとした。 しかし、陸はそのからかず、議そうに首を傾げて、純粋な、何の悪もない声を父親に投げかけたのだ。
「お父さん。
広告
さっきから『座におがない』ってってるけど……お父さんのおはどこにあるの?」
ピキリ、とリビングの空気が凍りついた。
「お父さん、毎お仕事してお料もらってるんでしょ? おばあちゃんにおを送りたいなら、なんでお父さんのおから送らないの? なんでお母さんを鳴ってるの?」
学のの、あまりにもシンプルで、混じり気のない正論。 その言は、どんな法律論や計の統計データよりも鋭く、く、達也の胸のを串刺しにした。 の事も、夫婦の力関係もらない子供の目には、ただ「自分が言いした親孝のを、なぜか母親にさせようとして鳴り散らしているけない父親」の姿が、ありのままに映っていたのだ。
「り……陸……おは何もらねえ癖に……」 達也の声が、目に見えて々しく震えた。 顔面から完全に気が失われ、唇がワナワナと痙攣している。
「陸、丈夫だから。お父さんと事なお話をしてるだけよ。ご飯ができたら呼ぶから、お部で待っててね」 私が優しく声をかけると、陸は「……うん」とさく頷き、引き戸を閉めて階へと戻っていった。
階段をがっていく音が消えた、リビングには、先ほどまでの声が嘘のような、く息苦しい沈黙がりてきた。 達也はテーブルにをついたまま、力なくち尽くしていた。
「お父さんのおはどこにあるの?」という息子の無垢な問いが、の奥でエンドレスに反響しているようだった。
「座りなさいよ、達也さん」 私は対面の子を顎で示した。 「あなたが今まで、見ないふりをしてきた現実を……これからすべて、目をけて見てもらうわ」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 3 -
完結第10話
義母に突き落とされたので、離婚します
十九年間、義母の虐待と夫の無関心に耐えてきたさつき。妊娠中、義母に階段から突き落とされ重傷を負うが、夫は愛人と過ごし、彼女の訴えを切り捨てる。 病室でさつきが残したのは、離婚届と「あなたが守らなかったものを、私は守ります」の一文。元刑事の父と証拠を集め、義母を実刑へ、夫を失職と離婚へ追い込む。因果応報|怒り|嫁姑|修羅場1.4万字5 168 -
完結第12話
空港に置き去りにされた妻は、もう帰らない
欧州出張から帰国したゆりを、夫と義母は成田空港へ置き去りにした。「四時間歩いて来い」と笑いながら、彼女を貧しいラーメン屋の娘だと見下して。 彼女は、夫の不倫や会社資金四千八百万円の横領を示す証拠を、すでに揃えていた。 空港から一本の電話をかけた三時間後、取引停止が相次ぎ、夫の会社は大混乱に陥る。嫁姑|夫婦|修羅場1.8万字5 685 -
完結第14話
十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった
十八年間デパ地下を支えた契約社員・千鶴は、新店長から「高齢者の代わりはいくらでもいる」と突然解雇される。 だが、毎週安い弁当を買う老人の正体は、大手食品会社の会長。かつて倒産寸前だった彼の弁当を世に広めた恩人こそ、千鶴だった。職場逆転|退職金|金銭問題|修羅場1.9万字5 32 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 14 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 8 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 137 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 156 -
完結第20話
妻の予定表に書かれた「最終日」
妻の予定表に記された、結婚記念日の「最終日」。夫は離婚を疑うが、その言葉には、十四年間積み重なった妻の孤独が隠されていた。 毎年同じレストランに二人分の席を予約し、来ない夫を一人で待ち続けていた妻。彼女は今年を最後に、待つことをやめようとしていた。夫婦|真相|第二の人生2.8万字5 82