みかん小説
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"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第11話

赤いボールペンの暴挙

「す、すまなかった……俺は本当に、計のことをおに任せきりにしていて……」 達也はテーブルに両肘をつき、くを垂れた。 通帳の束というかぬ客観証拠を突きつけられ、かつて誇っていた黒柱の矜持は々に打ち砕かれたかに見えた。 しかし、も「計の決定権を持つ夫」という甘い位に胡座をかいてきた男の傲さは、たった度の謝罪で根絶できるほど浅いものではなかったのだ。

達也はゆっくりと顔をげた。その瞳には、先ほどの反省のを塗り潰すように、追い詰められた獣のような濁ったが宿っていた。 「……でもさ、美奈子。過のことはもう分かったよ。おが苦労して補填してくれたのは謝する。だけど、今回の母さんの話は別問題だろう」

「別問題?」 「ああ、そうだ。母さんは現に困ってるんだ。俺が万送るって約束しちまった以、今更『がありませんでした』なんて親戚に顔向けできないだろ! 俺の面子はどうなるんだよ!」 達也は子をガタッと引いてちがると、胸ポケットから赤いボールペンを引き抜き、乱暴なつきでキャップをした。 そして、私が毎晩きで記録している今の計予算表を引に自分の元へ引き寄せたのだ。

「がないなら、削ればいいだけだ! 無駄な費を削って、母さんへの万を捻する! それがの主としての俺の仕事だ!」

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達也は叫びながら、赤いボールペンを計表に叩きつけた。 キュッ、キュッという障りな摩擦音をてて、私のきの文字のに太い赤線が引かれていく。

「まず費だ! 万円なんて贅沢すぎる! 万円に減額だ! 陸だって学なんだから、しはべる量をさせりゃいい! もやしと豆腐わせときゃ分育つだろ!」 「……育ち盛りの運部の子に、事をさせるの?」 「を教えるのも教育だ! それから、この教育費だ!」 達也はの学受験に向けた予備代の欄に、のきなバツ印をき殴った。 「万千円の期講習? ふざけるな! こんなの全額カットだ! にもなってい払って塾にく必なんかない! 学の教科と図館で勉させりゃいいんだよ! 親の苦労を分からせるいい会だ!」

赤いインクが、計表を無残に汚していく。 まるで、業績振に陥った子会社を切り捨てる酷なリストラ役員のように、達也は自分の子供たちの活と未来を、躊躇なく切り刻んでいった。 「これで費で万、塾代で万、わせて万浮く! あとは費と用品を極限まで切り詰めて、俺たちの遣いを削れば……ほら見ろ! 母さんに送るくらい、簡単に作れるじゃないか!」

赤いボールペンを握りしめ、ハァハァと肩で息をしながら勝ち誇った笑みを浮かべる夫。

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その姿を見て、私のに残っていた「連れ添った夫への」という最の欠片が、音をててえ切っていった。 このは、母親を助けたいのではない。 ただひたすらに、自分が親戚ので恥をかきたくないだけなのだ。 そのっぺらな虚栄を守るためなら、自分の子供の胃袋を満たす温かい事も、娘が必に目指している学への学のも、平然と贄に捧げることができる男だったのだ。

「……き殴って満した?」 私が氷のようにたい声で問いかけると、達也は怪訝そうに眉を吊りげた。 「満したかだと? 俺は現実な解決策をしてやってるんだ! おも文句ばっかり言ってないで、から費万円でやりくりしろ!」

「無駄よ」 私はちがることすら臭くじ、静かに告げた。 「の期講習の万千円なら、今の昼休みに、私の個座からすでに振り込みを済ませてあるわ」

達也の赤ペンのが、空でピタリと静止した。

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