みかん小説
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"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第12話

座名義という名の刃

「……は? 振り込んだ……?」 達也の目が、信じられないものを見るように見かれた。 「お……俺に相談もなしに、勝に万も振り込んだのか!?」

「ええ。振り込んだわよ。あなたが私に相談もせず、勝にお義母さんへの仕送りを決めたのと同じようにね」 私の揺るぎない返答に、達也の顔面が屈辱とりで赤黒く染まりがった。

「ふざけるな! 俺の稼いだを勝に使うな!」 「あなたの稼いだ? 聞き捨てならないわね。私が今振り込んだのは、私の名義の、私の料から貯めた個の預よ。あなたの座からは円もいていないわ」 「お個の預だろうが、夫婦の共財産だろ! 万もポンとせる余裕があるなら、なんでそれを活費座に入れなかったんだ! そうすりゃ母さんへの万のしになったのに!」

喉元までかかった言葉を、私はグッと呑み込んだ。 この男の脳内では、自分名義の座は「自分の」、妻名義の座も「族の共財産だから自分のもの」という勝極まりない理屈が、完全に常識として固定化されているのだ。 の犠牲のに成りつ自分の面子。それに疑問すら抱かない精神構造の浅ましさに、眩暈がしそうだった。

達也は荒々しく息を吐きながら、テーブルに置かれた活費座の通帳を鷲掴みにした。

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「いいか、美奈子。屁理屈をこねるのもいい加減にしろ。この活費座の名義は、誰になってる?」 達也は通帳の表をバシバシと指先で叩いた。 「俺だ! 野達也だ! 法にこの座の管理権と決定権を持っているのは、名義であるこの俺なんだよ!」

夫の元に、相の逃げを塞いだつもりの卑た笑みが浮かんだ。 「おがいくらケチをつけてもな、名義の俺がの窓にけば、座にあるはすべて俺の志でかせるんだ。曜の朝番で、俺はこの座から万円を母さんの座へ制に振り込む。定期送の続きもしてやる!」

「……そう。それをやるとどうなるか、分かって言っているの?」 私が瞬きもせずに見つめ返すと、達也はを鳴らした。 「どうなるだと? 来週の宅ローンが引き落とせなくなるんだろう? そんなのったことか! おが自分の貯から穴埋めすりゃ済む話だ! を差し押さえられたくなけりゃ、おがを面しろ! これはおの責任だぞ!」

族のむを質に取り、妻を脅迫してを巻きげる。 、同じ根ので暮らし、の子供を育ててきた伴侶がにしたとはえない言葉だった。 だが、その卑劣な脅迫に対して、私のは恐怖に怯えるどころか、むしろ滑稽さに失笑が漏れそうだった。

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「好きにすればいいわ」 私が穏やかな笑みすら浮かべて答えると、達也の勝ち誇った表がピシリと凍りついた。 「な……何だと……?」

「曜の朝番に、全額お義母さんの座へ送しなさいよ。止めないわ」 私はゆっくりとちがり、見ろすように夫の瞳を見据えた。 「でも達也さん。宅ローンの契約、誰の名義になっているか覚えているかしら?」

達也の喉仏が、ゴクリときくした。 「このの宅ローンはね、あなたの単独名義よ。私は連帯保証にもなっていないわ。もし残で引き落としが滞れば、から督促を受けるのはあなた個。ブラックリストに登録されてクレジットカードが制解約されるのもあなた個。そして、もし競売にかけられて自己破産することになれば、親戚に『母親に見栄を張ってを失った愚か者』としてれ渡るのも……すべて、あなたよ」

「っ……!!」 達也の顔から、完全に血の気が引いた。

「会社の総務部にも通がくでしょうね。料が差し押さえられれば、あなたが必に守ろうとしている課の子も、親戚の叔父さんへの見得も、すべてになるわ。……それでもやりたいなら、どうぞ。曜の朝、番に窓へってらっしゃい」

達也のから、活費座の通帳がポロリと滑り落ち、に転がった。 自らが振りかざした「名義としての権力」

という刃が、そのまま自分自の首筋を切り裂くブーメランだったことに、この男はようやく気づいたのだ。

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