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"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第14話

「の財布で親孝するな」

スピーカーから漏れる母親の問いかけに対し、達也はをパクパクとかすだけで、声を発することができなかった。 額から流れ落ちた粒の汗が、顎を伝ってフローリングへポタリと落ちる。

『達也、答えなさい』 義母の声は、厳格さを増していた。 『お、まさか……美奈子さんの稼いだお料から、私への仕送りをすつもりだったんじゃないだろうね?』

「ち、違うよ母さん!」 達也は追い詰められ、みっともなく叫んだ。 「夫婦のだから、俺たちの活費からせばいいとってたんだ! 俺の取りだって万あるんだから、夫婦で協力すれば万くらい何とかなるとって……!」

『何とかなるわけがないだろうが、この馬鹿者が!!』

義母の号が、スピーカーを激しく震わせた。 あの温で慮がちな義母が、話でここまで激昂したのを、私はで初めて聞いた。

『取り万のから、宅ローンを払って、ちゃんの学費をして、陸ちゃんの部活の費用をして、どうやって万も浮くっていうんだい! りない分は全部、美奈子さんがを削って埋めることになるのが、どうして分からないんだ!』

「だ、だけど俺は! 男として、母さんに楽をさせてやりたかったんだよ! 田舎の叔父さんたちにも、俺がちゃんと親の面倒を見てるって見せたかったし……!」

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『見栄のために、の財布にを突っ込むんじゃないよ!!』

義母の痛烈なが、達也の胸のを々に砕した。 「の財布」――その言葉に、達也はまるで殴られたかのように体を震わせ、そのに崩れ落ちた。

『美奈子さんが汗垂らして働いたお料はね、美奈子さんののものだよ! おが見栄を張るための具じゃない! 嫁の財布からを毟り取って親に横流しするような真似をして、それを親孝だと胸を張るなんて……けない! 親として、けなくて涙がてくるよ!』

話の向こうから、義母がをすする音が聞こえてきた。 く、い、息子の浅ましさを嘆く母親の慟哭だった。 『私はね、最キャベツがいとか、の灯油代がだとか、そんな愚痴をこぼしただけだよ。万なんて、最初から受け取る気なんてこれっぽっちもなかった! おたちの活を壊してまで、誰がぬくぬくと贅沢なんてできるもんかい!』

達也は両で顔を覆い、フローリングのに額を押し付けて呻いた。 「母さん……ごめん……俺は……」

『美奈子さん、そこにいるんだろう?』 に、義母がスピーカー越しに私を呼んだ。 私はスマートフォンのマイクに顔を寄せ、静かに答えた。 「はい、お義母さん。美奈子です。お話、聞いております」

すると、義母の声は転して、消え入りそうなほど申し訳なさそうな、震える声に変わった。

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『美奈子さん……本当に、本当にごめんなさいね……。この愚息が、あなたにどれだけの苦労とをいてきたか……。母親の私が、もっとくに気づいて叱ってやるべきだったのに……』

「いいえ、お義母さん。謝らないでください」 私は穏やかに、だがハッキリと告げた。 「お義母さんが悪いのではありません。私たち夫婦が、おのこと、活の痛みのことについて、真剣に向きってこなかった結果です。……お義母さんのお気持ちは、よく分かりましたから」

『達也』 義母は最に、にいつくばる息子へ向けて、徹な最通牒を突きつけた。 『度と見栄を張るんじゃないよ。本当に私を助けたいとうなら、妻の財布を当てにせず、自分の稼ぎと自分の活ので何ができるのか、から考え直しなさい。……それまで、顔も見たくないよ』

ツーツーツー……。 通話が切れ、静まり返ったリビングに、無質な子音だけが響き渡った。

達也はにをついたまま、微だにできなかった。 自分が拠ってっていた「親孝な誇りき男」という虚飾の鎧は、実の母親のによって、完全に剥ぎ取られたのだ。

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