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"13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた" 第4話

閉ざされた扉とたい拒絶

タブレットの画面に映る型のあざを見つめたまま、雅弘の指先がかすかに震えていた。しかし、彼の理性は依然として、目のの事実を受け入れることを激しく拒絶していた。

「……偶然だ」雅弘の声は掠れていた。「あざなんて、誰にでもつやつはある。画質の粗い写真のかもしれないじゃないか。えみ、落ち着くんだ。静になってくれ」

「静に!? 自分の娘かもしれない子が写っているのよ! どうしてそんなにたくいられるの!?」

「たくしているんじゃない!」雅弘は声を荒らげた。「これまで何回同じことがあったか忘れたのか! 『うちの子に似た子を見た』という報にびついて、青森まで夜バスで向かって違いだったとき、君がどれだけボロボロになったか! 悪質な詐欺師に写真を送りつけられてを騙し取られそうになったとき、どれだけ絶望したか! 俺はもう、君が壊れるのを見たくないんだよ!」

「今回は違う! 元隣なのよ!? くるみが消えた直に引っ越していった、あの武田さんなのよ!?」

「だからこそだ!」雅弘はテーブルを拳で叩いた。「武田さんがくるみを誘拐したとでも言うのか!? あんな温なが、隣の子供を盗むなんてあり得ない! そんな突拍子もない妄で突撃して、もし違ったらどうするんだ! 名誉毀損で訴えられるぞ!」

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の激しい論は平線をたどり、の刃が互いのをく切り裂いていった。

ついに雅弘は「をやしてくる」と言い捨て、乱暴に玄関のドアを閉めてへてってしまった。

残されたリビングで、えみは息を荒げながらち尽くしていた。

夫の言うことの論理な正しさは分かっていた。だが、、娘の面を細胞の隅々にまで刻み込んできた母親の直が、全の血を沸騰させて叫んでいた。

——あの子は、くるみだ。違いなく、私の娘だ。

えみは階へ駆けがり、充を終えたばかりのデジタルカメラと、の鍵、財布をバッグに詰め込んだ。

「待っていられない……」

エンジンをかけ、軽自をバックさせて通りへびす。向かった先は、から幾度となく通い詰めた、鎌倉警察署だった。

午分。曜の警察署の受付窓は閑散としていた。

パイプ子に浅く腰掛け、膝ののバッグを握りしめるえみのは汗でぐっしょりと濡れていた。分ほど待たされた、奥の刑事課の扉がき、の女性警察官が姿を現した。

野警部補。くるみ失踪当、若刑事として捜査本部に加わり、そのも定期にを気にかけてくれていた数ない警察官のだった。今では髪にいものが混じり、ベテランの格を漂わせている。

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「さん。お久しぶりです。……何かしいきでもありましたか?」

取調のさな丸テーブルを挟んで、えみはを乗りすようにしてスマートフォンを取りし、武田竜のフェイスブックの投稿画面を提示した。さらに、持参したデジタルカメラの液晶に、歳のくるみの写真を並べて表示させた。

「野さん、見てください。この女の子……当の隣だった武田さんのSNSに投稿された写真なんです。顔の骨格、の形、そしてここ……太ももの型のあざまで、くるみと完全に致しています!」

野警部補は老鏡をかけ、スマートフォンの画面をじっくりと見つめた。指先で拡し、カメラの写真と交互に見比べる。その沈黙の数分、えみは祈るようないで刑事の横顔を見つめ続けた。

しかし、顔をげた野警部補の瞳に宿っていたのは、確信ではなく、痛ましげな同のだった。

「さん……今が何のか、私にもよく分かっています。ですね」

「ええ、そうです! でも、命だから取り乱しているわけじゃないんです!」

「写真を見せていただきました。確かに、面があるように見えます。ですが……」野は鏡をし、静かに机のに置いた。「の歳が経っています。歳の幼児の顔ちと、歳の女の顔ちを写真だけで比較して同物と断定することは、法医学にも能です。

あざについても、解像度の問題があり、単なるや別の皮膚疾患である能性を排除できません」

「武田さんには子供がいなかったんです! 妊症だとご夫婦でおっしゃっていたんです!」

「さん、それはの、しかも個な会話の記憶ですよね。そのに医療技術で授かったのかもしれないし、法な続きを経て特別養子縁組を結んだのかもしれません。……それだけで、かつての隣を未成者略取誘拐の容疑者として捜査することは、警察組織としては能なのです」

「そんな……! じゃあ、指をくわえて見ていろって言うんですか!?」

えみの声がずり、涙が界を滲ませた。

「お気持ちは痛いほど分かります。ですが、確固たる物証拠がない限り、県の所轄に協力を請してくことはできません。もしこれが違いだった、相の女やご族にどれほどの傷を残すか……さん、どうか静になってください」

「野さん……お願いです、し調べるだけでも……」

「申し訳ありません」

ちがった女性刑事の態度は、丁寧でありながら、決して崩れることのない鉄の壁だった。

警察署のにた瞬、正午の暴力な差しがえみの全を焼き付けた。

アスファルトの照り返しが目を射る。誰も信じてくれない。夫も、警察も、世も。みんな「劇に狂った母親の妄」

として、自分を憐れみの目で見ているだけなのだ。

駐にめたので、えみはハンドルに突っ伏して声を押し殺して泣いた。

しかし、ひとしきり涙を流した、えみので何かがプツリと音をてて切れた。

——誰もかないなら、私がく。

スマートフォンをちげ、武田竜の投稿をもう度確認する。

位置報に記されたタグ。『伊豆・浜岸』。そして、女がにする青いウェイクボードの表面には、特徴ないカモメのロゴマークが描かれていた。

「待っててね、くるみ。お母さんが、今すぐくから」

えみはギアをドライブに入れ、鎌倉の岸線を抜け、へと伸びる湘バイパスへとアクセルを踏み込んだ。

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