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"妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘" 第12話

参観の教と壁面のパパ

の半ば、厳しい寒波が押し寄せた曜の午、が通う公幼稚園での保育参観が催された。 周囲を見渡せば、ほとんどの庭が両親揃って席しているか、母親同士で談笑の輪を作っていた。濃紺のビジネススーツにを包み、しを縮こまらせて教の隅につ介は、どうしても周囲から浮いているようにじられた。 母親がいないことで、が肩の狭いいをしていないだろうか――そんなが介の胸を絶えず締め付けていた。

「それでは園児の皆さん、保護者の方と緒に、遊びをいましょう!」 担任の若い女性教諭がピアノを弾き始めると、教の央に座っていた園児たちが斉にちがった。 は介の姿を見つけると、周りの子たちには目もくれず、真っ直ぐに介の元へと駆け寄ってきた。

「お父さん! の隣に来てですよ!」 さなで介の指を力く引き、保護者の輪の最列へと引っ張っていく。 周囲の母親たちが、物珍しそうに、あるいは微かな同の線を投げかけてくるのが分かった。しかし、自はそんな線などまったくに介していなかった。 「きな栗のので、あなたと私、仲良く遊びましょう!」 は介を見げ、全を使ってきな振りをしながら、誰よりもきな声でい続けた。

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介も照れを捨て、しゃがみ込んでのを取り、緒に拍子を打った。の頬は林檎のように赤く染まり、その瞳は眩しいほどの誇らしさに輝いていた。

が終わると、担任教諭が「保護者の皆様、教のろの壁に、子供たちが描いた『好きな族』の絵を展示しておりますので、ぜひご覧ください」と声をかけた。 介はにを引かれ、保護者の垣を縫うようにして教の方へとんだ。

壁面に並べられたつ切り画用。 の園児たちの絵のくは、優しそうに微笑む母親の姿や、族、がを繋いでいるカラフルな景だった。 そして、の席番号の所に貼られていた絵のにった瞬、介のが止まった。

画用いっぱいに描かれていたのは、黒い丸鏡をかけ、し垂れ眉で笑っている、のの男性の顔だった。 青いクレヨンで丁寧に塗られたスーツ、胸ポケットから覗くネクタイ、そしてそのきなには、自のさながしっかりと握られていた。 絵の余には、黒いクレヨンで、懸命に練習したであろう平仮名がきくかれていた。

『せかいいち かっこいい おとうさん』

母親の姿は、すら描かれていなかった。 そこには、ただ、のために毎朝くから起きて弁当を作り、夜には絵本を読み聞かせ、どんなも隣にいてくれる父親の姿だけが、画面いっぱいのを込めて描かれていたのだ。

「お父さん、どうですか? 、に描けたですか?」 がから介の顔を覗き込んできた。 介は界が急速に滲んでいくのを止められなかった。鏡をし、スーツの袖で慌てて目元を拭う。 「お父さん……また鏡が曇ったですか?」 「……ああ。すごくに描けてるよ、。ありがとう……本当にかっこいいよ」 介はそのに膝をつき、のさな体をぎゅっと抱きしめた。 周囲の母親たちの囁き声も、の憐憫の線も、もはやどうでもよかった。 この子にとって、自分が世界のすべてなのだ。そして自分にとっても、この子がきるのすべてなのだと、確信していた。

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