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"十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった" 第8話

座と契約

丸デパート品フロアの央通。理のにいつくばるようにして額を擦り付けているのは、ならぬ丸デパート本社の営業本部だった。

「藤堂会、どうか……どうかご容赦ください! が社の現管理のき届き、弁解の余もございません。川さんに対する解雇通告は、社規に照らしてもな続き違反であり、今こので無効と処分決定をいたします!」

本部の声は脂汗とともに震えていた。

藤堂品グループとの取引打ち切り。それは単に「の惣菜コーナーがつ消える」などという易しい問題ではなかった。丸デパートが展する全県のつの支、さらには系列の級スーパーマーケットに至るまで、核を担う惣菜・米飯・加品の供ラインが斉に干がることをする。数億円規模の売が蒸発し、週末の目玉を失ったデパからは客がのき、系列のライバルへ客が崩を打って流する。それは方百貨にとって、文字通りの「倒産への引き」だった。

藤堂周は、に平伏する本部を見ろしたまま、表を切崩さなかった。

「本部。先で『無効だ』と叫ぶのは簡単だ。だが、昨この男が川さんに言い放った言葉を聞いたかね。『代わりはいくらでもいる』『働いたから何なんだ』……そう言って、彼女がを賭けて守ってきた誇りを、で踏みにじったんだ。

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契約社員だから? 歳だから? をただの部品やコストの数字としてしか見られない組織と、が社が対等なパートナーシップを結べると本気でっているのかね」

藤堂の静かな言言が、鋭利な杭となって本部のに突き刺さる。

「ひっ……め、滅相もございません……!」

本部は振り返り、壁際で腰を抜かして震えている森孝志を鬼のような形相で睨みつけた。

「森! 貴様、何突っっているんだ! 今すぐ川さんのにいて、座してお詫び申しげんか!!」

森の鏡が斜めにずり落ちた。額から噴きすや汗で界が歪み、胃の腑が雑巾のように絞りげられる。

「ぶ、部……私は……本部の……コスト削減の目標達成のために……」

「黙れ! 誰が現の功労者を侮辱して追いせと命じた! 私利私欲の世のために現を引っ掻き回し、取引先との信頼を破滅させた貴様の罪だ! くをげろ!」

本部の号に背を蹴ばされるようにして、森はをいずり、千鶴の元へとみた。

昨の夜、自分が「から来なくていい」「代わりはいくらでもいる」と笑を浮かべて見ろした、あの歳の契約社員。エプロンをつけたままち尽くす千鶴の元に、森は両をつき、額をに擦り付けた。

「お、川さん……! 申し訳ありませんでした! 私の……私の浅はかな勘違いでした! どうか、どうか解雇を取り消させてください! これまで通り、この売りに残ってください! お願いします!」

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けない男の嗚咽が、静まり返ったフロアに響き渡った。

周囲を取り囲んでいたパートの主婦たちや若のアルバイトたちの目には、れみすら浮かんでいなかった。あるのは、頃から自分たちを虫けらのように扱ってきた司の醜悪な末に対する、底えするような軽蔑だけだった。

千鶴は、元で震える森の背を、静かに見つめていた。

りも、復讐のも湧いてこなかった。ただ、のが、数字と世という名のに囚われ、商売の魂を売り渡してしまったことに対する、いだけが胸を満たしていた。

千鶴はゆっくりと息を吸い込み、森ではなく、腕組みをしてつ藤堂周に向かって、静かにをげた。

「……藤堂会」

千鶴の澄んだ声が、張り詰めた空気を優しく解きほぐすように響いた。

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