みかん小説
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"愛人と帰国した夫、30分の猶予" 第2話

針が音をててんでいく。

約束の分のうち、分が経過したそのだった。

ピンポーン、とく澄んだインターホンの子音が、静まり返ったのにらかに鳴り響いた。

インターホンの音を聞いた瞬、憲吾が洗面所からりでびしてきた。

「おっ、結かな! 荷物を置きに自宅へ寄ってから来るって言ってたからな」

浮きった取りで玄関のモニターへ駆け寄る憲吾の背を、義母が目を細めて見送る。しかし、モニターを覗き込んだ憲吾は、し拍子抜けしたような声をげた。

「なんだよ、郵便局員か。……おい、何か受け取りのサインが必な配達が届いたみたいだぞ」

憲吾が玄関へ向かうと、義母がパンパンと両を叩きながら、甲い声で叫んだ。

「ちょっと憲吾、それ、もしかして現留じゃないの!? ほら、あんたから私への慰謝料よ! 郵便を直接渡しで受け取るなんて、留か速達くらいしかないじゃない!」

義母はくも勝利の美酒に酔いしれ、リビングを躍りするように歩き回った。

やがて、いの封筒をにした憲吾がリビングへと戻ってきた。

「おいおい、本当に慰謝料の類か何かか? でも、現の割にはずいぶんといな……あ、そうか、額の切でも入ってんのか!」

封筒の表きをろくに確認もせず、を確かめもしないまま、は顔を見わせて「やったー!」

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と叫び、まるで子どものように両をく掲げてハイタッチを交わした。

憲吾が勝ち誇った笑みを浮かべ、私を見ろして言った。

「咲子、まあ今まで世話になったな。約束通り、もうてっていいぞ。今は度と、俺たちのに関わるなよ」

という歳を共に過ごした元妻に対して、あまりにも軽で、あまりにも酷な言葉だった。だが、私の方でもとっくの昔に、この男に対するなど欠片も残っていなかった。乾き切った砂漠のようなには、りすら湧いてこない。

「度と関わるな、ですか……それは無理だといますけれどね」

私はちがりながら、誰にも聞こえないほどのさな声で呟いた。

歓に沸くのには、私の囁きなど届いていなかった。だが、それで分だった。数、あるいは数週、嫌でもこのたちの方から、泣きついてくることになるのだから。

ちょうどその、のに型トラックがするいブレーキ音が響いた。

私の配した引っ越し業者のトラックだった。

私が玄関をけると、作業員たちが際よく、あらかじめ階の自にまとめておいた最限の段ボール箱を運びしていった。このに私が残してきたのは、両親の遺品と私自の私物だけだ。財具のほとんどは、両親が残してくれたこのとともに、旦ここに置いていくことにしていた。

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憲吾と義母は、私がみじめに追いされていく瞬を秒たりとも見逃すまいと、玄関のがり框からを乗りしてニヤニヤと眺めていた。

「せいせいするわねえ! 貧乏神がてってくれて、これでこのお敷も私たちのものよ!」

義母のけたたましい哄笑を背に浴びながら、私は度も振り返ることなく、扉のへとを踏みした。

トラックが荷物を積み終えてりった直、肩にまっていた台の黒塗りのセダンが、静かにエンジン音を響かせて私の目のに滑り込んできた。

漆黒のボディは陽を浴びて鏡のように輝き、静粛性に優れたエンジン音はほとんど無音にい。県内でも数台しかっていないとされる、最級の輸入サルーンだった。

私が迷うことなく部座席のドアをけ、優雅に内へと乗り込んだ瞬、玄関先にっていた憲吾の喉から、の抜けた叫びががった。

「は……!? な、なんだあの……体どういうことだ!?」

無理もない。そのの運転席に座り、私に向かって静かに会釈をした物は、憲吾が会社で毎恐れ敬い、そして密かに敵している、あの物だったのだから。

が滑らかに発し、バックミラーので呆然とち尽くす憲吾と義母の姿が、急速にさくなって消えていった。

窓を流れる並みを眺めながら、私はくシートに背を預けた。

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