"愛人と帰国した夫、30分の猶予" 第12話
、夫の収入に対する度なる当な銭の無
リストの最には、『記理由による婚姻関係の破綻に基づき、精神苦痛に対する相応の慰謝料を請求する』と結ばれていた。
悪魔の証のような、完全な虚偽の羅列だった。
「咲子さん、憲吾はね、あなたと翔太を守るために血の滲むような努力をしてきたのよ」
義母が勝ち誇った笑みを浮かべ、を乗りしてきた。
「でも、あなたが嫁としての責務を全うしなかったから、夫婦関係が修復能になったの。これに異論はないわね?」
ここで曖昧に黙り込めば、事実を認めたと曲解されかねない。
私はまっすぐに義母の目を見据え、はっきりと言い放った。
「異論しかありません。すべて完全な事実無根の鱈目です」
義母の眉がピクリとねがった。
憲吾が忌々しそうに舌打ちをし、い声で威嚇してきた。
「おい、いい加減にしろよ。寄りのない、借まみれのおを拾ってやった恩を仇で返しやがって。これが精神苦痛でなくて何なんだよ!」
「そうよ!」と義母が追従する。「憲吾はずっとしてきたの! あなたのせいで、うちの夫婦関係はずっと昔から破綻していたのよ! そうよね!?」
無理やり同を迫る義母に対し、私はややかな笑みを向けた。
「破綻していたと言い張れば、憲吾さんがでを作ったことの言い訳になるとでもっているのですか?」
広告
その瞬、リビングの空気が凍りついた。
憲吾と義母の顔から、瞬にして血の気が引いたのを私は見逃さなかった。同席していた佐藤さんが微だにしないのを見る限り、彼女も事に「息子の貞は嫁のせいだ」と吹き込まれていたのだろう。第者を同席させて私を威圧し、既成事実を作って利に婚をめようという浅はかな算段だったのだ。
き直った義母が、ヒステリックに叫んだ。
「そうよ! 憲吾がに癒しを求めたのは、全部あんたが原因じゃないの! もともと破綻していたんだから、貞為には当たらないわよ! だからあんたが慰謝料を払いなさい!」
激昂する母親の横で、憲吾は気の悪いほど穏やかな猫なで声を作り、私に提案してきた。
「まあまあ、母さん落ち着いて。……咲子、俺は優しいからさ、慰謝料はこのを譲渡してくれるだけでいいよ。母さんへの慰謝料は、別途現でを揃えて払ってもらうけどな。もちろん、婚には応じてくれるよな? 翔太を連れて、このから今すぐてってくれるよな?」
勝極まりない求の数々に、私はりを通り越して笑いが込みげてきそうだった。
最初から親権を主張する気など微もなく、私の切なを奪することだけが目だったのだ。
「分かりました。婚には応じます」
広告
私の即答に、憲吾と義母の表が気にるくなった。
「どうせ、婚届もすでに用してあるんでしょう? サインして置いておいてくれれば、私が責任を持って役所に提しておきます。ただ、しいまいを探して荷物をまとめる準備が必ですから、しだけ猶予をいただけますか?」
「ああ、もちろん構わないとも!」
憲吾は喉を鳴らして歓した。
「母さんへの慰謝料を用てるも必だろうしな。ちょうどいい、俺たちはから週、まとまった休みを取ってを空ける予定だから、そのに全部済ませておいてくれ」
「私は現がいいわよ! 切でもいいわ! ふふっ、私たちの完全勝利ね! ……佐藤さん、ごめんなさいね、お見苦しいところをお見せして。もうお帰りになって丈夫ですよ」
義母は満そうに佐藤さんを玄関へと送りした。
私は自へと戻り、息子の帰宅を待った。
すべては、翔太の描いたシナリオ通りにんでいた。
翌朝く、憲吾と義母は、本命のであるピアノ講師の結を伴って、週の国リゾート旅へと旅っていった。
かける直、憲吾が自からのたちへ「しばらく仕事で張だから連絡するなよ、してる」とマメに話をかけていた声も、すべて翔太の仕掛けたボイスレコーダーに鮮に記録されていた。
「ママ、綺麗に録音できてるよ。こういう客観なデータは、コツコツ集めておくのが鉄則なんだ」
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
三年前に署名させた離婚届
「息子は金髪美女と再婚するのよ」――玄関先で勝ち誇る義母が突きつけてきたのは、一方的な離婚届だった。大手商社勤務の夫に裏切られ、三ヶ月の海外出張中にも不貞の影に苦しめられていた妻のナナ。だが、見下され続けた妻は取り乱すどころか、冷ややかに微笑んだ。義母も夫も知らなかったのだ。三年前に署名させた一枚の用紙と、水面下で集められた決定的な証拠の存在を。鳴り止まない何十件もの着信を前に、彼女は静かに告げる。「離婚届なら、とっくに提出済みですよ」嫁姑|夫婦2.0万字5 134 -
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 321 -
完結第10話
義母に突き落とされたので、離婚します
十九年間、義母の虐待と夫の無関心に耐えてきたさつき。妊娠中、義母に階段から突き落とされ重傷を負うが、夫は愛人と過ごし、彼女の訴えを切り捨てる。 病室でさつきが残したのは、離婚届と「あなたが守らなかったものを、私は守ります」の一文。元刑事の父と証拠を集め、義母を実刑へ、夫を失職と離婚へ追い込む。因果応報|怒り|嫁姑|修羅場1.4万字5 1065 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 915 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 160 -
完結第20話
月30万円の親孝行は、誰の財布から?
夫から突然告げられた、義母への「毎月三十万円」の仕送り。妻・美奈子は反対せず、静かに「いいよ」と答えた。 三日後、銀行で残高四万円を知らされた夫は激怒する。だが美奈子は、二十二年間で家計へ補填した一千二百万円超の記録を並べ、「その三十万円、誰の収入から出すつもりだったの?」と問い返す。嫁姑|夫婦|介護|金銭問題2.8万字5 741 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 625