"愛人と帰国した夫、30分の猶予" 第19話
「本当に驚いたよ。翔太君と初めて直接会った、付き添いで現れたのが咲子ちゃんだったんだからね。全然変わってないから、すぐに分かったよ。相変わらず綺麗だしね」
竜君の変わらぬ褒め言葉に、私はし頬を染めた。
今回の件では、全なウィークリーマンションの配から、敏腕弁護士の紹介、そして証拠集めの法なアドバイスに至るまで、竜君には数え切れないほどの恩義を受けることになった。
「翔太君が『方になってくれる力いが必だ』って相談してくれたからけたんだよ。昔の友のピンチを助けられて、僕の方こそ嬉しかったよ。……さあ、今は僕の奢りだから、慮しないでたくさんべてね」
「えっ、今はお礼の席なのに!」
「いいの。これでも国のの主だからね、格好つけさせてよ」
屈託なく笑う竜君は、、私たちを坂ののマイホームまでで送り届けてくれた。
夜の吹き抜けるので、私と翔太は、のテールランプが坂のへと消えていくまで、何度もを振り続けた。
その、事態は急速に収束へと向かった。
社内調査の結果、憲吾は社内規定違反、背任未遂、なハラスメント為が認定され、懲戒解雇を免れる形で自主退職へと追い込まれた。あの週の国旅すら、「張」と偽って会社の経費で落とそうとしていたことが発覚したのだという。
広告
憲吾と義母は、弁護士のち会いのもとでがから完全に退させられた。
私と弁護士は、憲吾に対して額の貞慰謝料を請求し、特定された複数のたちに対しても法な請求をった。ただし、憲吾が既婚者であることを隠して騙されていた女性たちに対しては請求を取りげ、「今はあのような誠実な男に引っかからないように」と助言するにとどめた。
本命だったピアノ講師の結も、憲吾が会社を追われ、無文になったことをるや否や、あっさりと彼の元をっていったそうだ。自業自得というない。
唯の救いは、あの決戦のに翔太から告げられた最の言葉がに刺さったのか、憲吾が翔太の学学のための養育費だけは、滞りなく毎満額を振り込んできていることだった。彼のに、父親としての最の良が残っていたのだとすれば、それだけは素直に認めてあげたいとう。
義母に対しても、にわたるモラハラと暴言に対する慰謝料請求の続きがんでいる。もはや私と直接話す気力すら残っていないらしく、すべては弁護士を通じて粛々とめられていた。
そして何よりも――。
叔父への借を完済し、両親の遺産であるこの切なが、完全に私の元に戻ってきたことが、番のびだった。
広告
弁護士を通じて聞いた話では、憲吾は最初、私がこの広な豪邸を所しているという事実に目をつけ、「結婚すればこの豪邸が自分のものになる」という浅ましい野からづいてきたのだという。結婚も女性関係を清算する気など微もなく、むしろ既婚者のステータスを利用して遊び回ることを楽しんでいたらしい。
どこまでも、救いようのない男だった。
「ねえ、ママ。ママはもう、再婚しないの?」
あるの夕、リビングでくつろいでいた翔太が、唐突にそんな質問を投げかけてきた。
私は湯呑みを置き、し困ったように井を見げた。
「うーん……ママもまだ歳だからねえ。絶対にしないとは言い切れないけれど……でも、翔太がそばにいてくれれば、ママはそれだけで分に幸せよ」
そう言ってソファーの隣に座る翔太をぎゅっと抱きしめようとすると、息子は照れくさそうにひらりとをかわした。
気がつけば、翔太の背丈はとっくに私を追い越し、見げるほどの青に成していた。
誠実な父親の悪いところはつも似ず、優しくて真っ直ぐな青に育ってくれたことが、私のの何よりの誇りだった。
今は、翔太の歳の誕だった。
翔太のたっての希望で、私たちは清川竜君を自宅の夕会へと招待していた。
竜君は「翔太君、誕おめでとう!」と言って、最型の性能タブレット端末をプレゼントしてくれた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
三年前に署名させた離婚届
「息子は金髪美女と再婚するのよ」――玄関先で勝ち誇る義母が突きつけてきたのは、一方的な離婚届だった。大手商社勤務の夫に裏切られ、三ヶ月の海外出張中にも不貞の影に苦しめられていた妻のナナ。だが、見下され続けた妻は取り乱すどころか、冷ややかに微笑んだ。義母も夫も知らなかったのだ。三年前に署名させた一枚の用紙と、水面下で集められた決定的な証拠の存在を。鳴り止まない何十件もの着信を前に、彼女は静かに告げる。「離婚届なら、とっくに提出済みですよ」嫁姑|夫婦2.0万字5 134 -
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 321 -
完結第10話
義母に突き落とされたので、離婚します
十九年間、義母の虐待と夫の無関心に耐えてきたさつき。妊娠中、義母に階段から突き落とされ重傷を負うが、夫は愛人と過ごし、彼女の訴えを切り捨てる。 病室でさつきが残したのは、離婚届と「あなたが守らなかったものを、私は守ります」の一文。元刑事の父と証拠を集め、義母を実刑へ、夫を失職と離婚へ追い込む。因果応報|怒り|嫁姑|修羅場1.4万字5 1065 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 915 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 160 -
完結第20話
月30万円の親孝行は、誰の財布から?
夫から突然告げられた、義母への「毎月三十万円」の仕送り。妻・美奈子は反対せず、静かに「いいよ」と答えた。 三日後、銀行で残高四万円を知らされた夫は激怒する。だが美奈子は、二十二年間で家計へ補填した一千二百万円超の記録を並べ、「その三十万円、誰の収入から出すつもりだったの?」と問い返す。嫁姑|夫婦|介護|金銭問題2.8万字5 741 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 625