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"金色の髪を隠して嫁いだ私と、無口な写真師の約束" 第2話

写真師のつの約束

顔わせの、は子の髪をいつもより入りに黒く塗り、襟を拭いで隠した。篠原写真館へ向かうすがら、叔母は何度も「余計なことをしゃべるな」と言ったが、子は靴ので指先をかしながら、聞くべきことをので繰り返していた。写真師は何をっていて、この縁談を受けたのだろう。自分の暮らしが、また誰かの都だけで決められるのは嫌だった。

の奥の応接には、湊と配の女性が待っていた。女性は湊の叔母に当たる篠原佳乃で、写真館の帳簿を伝っているという。は座るなり、子がどれほど働き者かを並べてた。湊は茶をんだだけで、子の顔を正面から見た。「仕物をしていると聞きました。どんな仕事が好きですか」。縁談の席でそんなことを聞かれるとはわず、子は言葉に詰まった。

「襟を直す仕事です。着るの首の形で、同じ布でも見え方が変わるので」。子が答えると、湊はしだけ頷いた。「写真も似ています。の当て方で、同じ顔が別に見える」。はその会話を遮り、嫁入り具はないが料理はできると話を戻した。湊は「具の話はしていません」と静かに言った。その言での元が固くなった。

佳乃が茶を替えにつと、湊は枚のを差しした。

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そこにはつの約束が、読みやすい字でかれていた。本の許しなく写真を撮らないこと。写真館の仕事を覚えたいなら、教えること。もし暮らしていけないとったときは、双方が話しって別のを選べること。子は番目を何度も読み返した。結婚は度決めたら、何があっても耐えるものだとい込んでいたからだ。

「こんな約束、変わっていますね」。子が言うと、湊は肩をすくめた。「変わっているとよく言われます。けれど、らない同士が暮らすのだから、先に言えることは言った方がいい」。彼は子のに残る針の跡を見て、「あなたの仕事をやめろとは言いません」と付け加えた。子は初めて、顔をげて湊を見た。気難しそうな眉のに、相の返事を待つ静かな目があった。

は隙を見て、湊を廊へ呼びした。い襖の向こうから「支度の残り」「約束が違う」という言葉が漏れ、子は膝ので両を握った。やがて戻ってきた湊は、のに封筒を置いた。「万円を渡す話はしていません。婚礼の費用は必な分だけ負担しますが、を受け取るためのおは払いません」。佳乃も帳簿をき、支払いの約束などないと確かめた。

は顔を赤くした。「この子をまでわせてきたんだよ。しぐらい礼があってもいいじゃないか」

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。子はそこで、ずっと喉につかえていた言葉をした。「叔母さん、私は品物ではありません」。自分の声がいのほかはっきり響いたので、本が番驚いた。は目を吊りげたが、湊が何も言わず子の返事を待っていたため、鳴りつけることができなかった。

佳乃は帰り支度の子を呼び止め、写真館の台所と洗いの所を簡単に説した。「湊は言葉がりないけれど、分からないことは聞いてやってください」と言う。子は、のことを女が全部察してくのが当然だとっていた。質問してもよいと先に言われたことが、いがけずに残った。

帰り際、子はの硝子窓に映った自分を見た。黒く塗った髪、借り物の帯、伏せがちな目。けれど、窓の内側には子どもたちの自然な笑顔が並んでいて、写真師がを嫌っているという噂が急に信じられなくなった。子は歩戻り、湊に言った。「お約束の、私が持っていてもいいですか」。湊は同じ文面をもう枚き、付と名を入れて渡した。

その晩、子はに縁談を受けると伝えた。ただし、写真館で働くことと、自分の持ち物を自分で選ぶことを条件にした。は嫌にを鳴らしたが、万円の話を蒸し返すことはなかった。子は約束のを母の古い裁縫箱へしまい、箱の底に残るい糸巻きを指でなぞった。

母がきていたなら、この決断をどうっただろう。

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