みかん小説
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"金色の髪を隠して嫁いだ私と、無口な写真師の約束" 第4話

の川辺

湊は袋から枚の印画を取りし、机のに置いた。写真は黒だったが、川の面から反射したが女の髪に集まり、周囲の暗いむらから浮きがって見えた。子には、その川がどこなのかすぐに分かった。町のれにあるの、夜けだけの来ない浅瀬だった。歳の頃、煤を落とすために通った所である。

「のに撮りました」。湊は言い訳を探すように度線を落とした。「朝のを撮りにって、川辺にがいることに気づいた。顔は写っていませんが、許しを得ずにシャッターを切りました」。写真の裏には撮と「未発表」と鉛で記されていた。子は自分のらないところで姿を残されていたことに、遅れて怖さを覚えた。

「どうして取っておいたんですか」。湊は写真に触れず、答えた。「の当たり方が忘れられなかったからです。ただ、それは撮っていい理由にはならない。嫌なら、ネガごと渡します」。子はすぐには返事ができなかった。に見つからないよう髪を洗っていたさえ、誰かの目に映っていた。その事実は苦しかったが、写真の女が恥ずかしいものとして写されていないことも確かだった。

「顔は見えないのに、私だと分かったんですか」。湊は首を横に振った。「昨、初めて分かりました。

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縁談を受けたときは、あなたがあの川のだとはらなかった」。子は胸の奥でほどけるものをじた。写真を撮ったから自分を妻にしたのではない。その説が必だと湊自が分かっていることに、子はしした。

はしばらく写真を見つめた。子は印画の隅に写ったさな靴跡に気づき、あののことをいした。叔母ので客の帯を焦がしてしまい、叱られるのが怖くて、まだ暗いうちにをた朝だった。川のはたく、髪を洗いながら自分が何者なのか考えていた。あのとき、誰かに「そこにいていい」と言ってほしかったのだ。

「この写真、私が預かってもいいですか」。子が聞くと、湊はネガの入った封筒も緒に差しした。「持ち主を決めるのはあなたです。私はもう枚、今のあなたを撮りたいとっていますが、嫌なら撮りません」。子は封筒を胸に抱え、初めてし笑った。「今はまだ怖いです。でも、いつか自分で決めたい」。湊は「待ちます」と答え、そこで話を終えた。

湊は暗の入に赤いさな灯りをつけ、作業は扉をけないよう説した。子が何気なく棚の瓶をかそうとすると、彼はすぐに止め、薬品は混ぜ方を誤ると危険だと教えた。叱責ではなく理由を説されることに、子はまだ慣れていなかった。

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彼女は教わったことを母の裁縫箱にあったさな帳へき留めた。

昼から、子は写真館の仕事を教わった。客の名を帳簿に記し、撮済みの台を乾いた布で拭き、現像液の瓶に触れるときは必ず湊に声をかける。湊は説がく、もなかったが、分からないことを尋ねればを止めて答えた。夕方には子の指に薬品の匂いが移り、仕物とは違う疲れが残った。

閉、所の井しのが孫の入学写真を受け取りに来た。しのは子の髪を見ると目を丸くしたが、やがて「澄さんに似た目をしているね」と言った。母の名を聞いた子が顔をげると、しのは「昔、あなたのお母さんに浴を縫ってもらった」と懐かしそうに話した。のでは母のことを尋ねても、いつも話を打ち切られていた。母をるがこの町にいると分かっただけで、子の胸は温かくなった。

しのが帰った、湊は子に古い注文台帳を渡した。「写真館を続けるには、撮ることと同じくらい、約束を守ることが事です」。子は枚ずつをめくり、預かった写真に受取の名が細かくかれているのを見た。その最のページに、見覚えのある跡があった。橘。注文欄には撮ではなく、「古い写真の複写、至急」と記されていた。

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