みかん小説
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"金色の髪を隠して嫁いだ私と、無口な写真師の約束" 第6話

消印の向こう側

子は父のを全部持ち帰り、台所の卓に付順に並べた。湊は封筒をくつきがいつもより慎だったが、内容を勝に読もうとはしなかった。町の学で英語を教えている松田宗なら、古い英国式の言い回しも読めるという。子はらないに族の秘密を見せることにためらったが、父の言葉を自分のでりたい気持ちの方がかった。

翌、は松田のを訪ねた。松田は髪の混じった教師で、封筒の差を見ると目を見いた。「エドワード先じゃないか。戦、港の夜学で緒に教えたことがある」。松田は子の顔をじっと見てから、すぐに線をへ戻した。父が町に実し、誰かと机を並べて働いていたことが、子にはそれだけできな発見だった。

最初のには、父が帰国した理由がかれていた。故郷の母親が倒れ、い帰国のつもりで仕事を辞めたこと。澄と子を呼び寄せる準備をしていたが、まいと働きが決まらず、を隔てたままが過ぎたこと。松田は文ずつ本語に訳し、分からないところは分からないと断った。子は父が派なだったと証してほしいのではなく、ただ何を考えていたかをりたかった。

母がくなったのは、さらに胸に迫った。

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「子は元気ですか。学では何を習っていますか。の髪を恥ずかしがってはいませんか」。父は誕のたびにさな額を送っていたが、返信が途絶えてからは受け取られているのか分からないと記していた。最のはのもので、娘がくなったというらせを信じきれず、もし違いなら返事をほしいと訴えていた。

「叔母さんが送ったに、父は返事をしているんですね」。子が言うと、松田はうなずいた。「おそらく。けれど、誰がどんな事で送ったかまでは、これだけでは断定できない」。子はその言葉を切に受け取った。憎しみだけで結論を急げば、今度は自分が事実を見失うかもしれない。まずは残された封筒と送の記録を、ひとつずつ確かめようとった。

松田は父の字が途からし乱れていることに気づき、をいた当の気持ちを像するのは簡単ではないと話した。子はその言葉にうなずいた。父がしんだことと、娘をくにしたことは、同に本当なのだろう。を読むほど、父をい物語のではなく、迷いながらきたとして考えるようになった。

帰宅、子は便箋を取りし、松田に教わった簡単な英文をいた。私はきています。歳になりました。母はくなりましたが、私はあなたのを今初めて読みました。

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湊は隣で郵便料を調べ、航空便の封筒を買ってきた。子が「返事が来なかったら」とつぶやくと、湊は「返事のためだけにくのではないでしょう」と言った。

松田は訳し終えたを付順に封筒へ戻し、原文も必ず残しておくよう子に言った。「訳は私の言葉になってしまう。いつかあなた自で読めるが来るかもしれない」。子はその言葉を聞き、英語の勉をもう度始めようとった。父に返事をくためだけではなく、自分の過を誰かの説だけに任せないためだった。

投函のに、子は自分の写真を同封しようとしてを止めた。黒い髪の写真は枚もなく、の髪の写真もまだ撮っていない。湊は撮の用をしようかと尋ねたが、子は首を横に振った。「今の私を、まだうまく見せられる気がしません」。すると湊は、何も写っていないいカードを差しした。「だったら、先に字で伝えればいい」。

子はカードに本語で「お父さんへ」とき、そのに英語で自分の名を添えた。封筒を閉じるとき、指先がし震えたが、もう煤で黒くなってはいなかった。郵便局の赤い投函へ封筒が落ちる音は、像していたよりもさかった。子はその音を聞きながら、い自分に届かなかった声に、ようやく返事をしたのだとった。

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