"金色の髪を隠して嫁いだ私と、無口な写真師の約束" 第7話
写真に写らないもの
写真館での暮らしは、子が考えていたより忙しかった。朝は撮のを拭き、客のについた糸くずを取り、現像を終えた印画を台に貼る。午には配達と帳簿があり、夕方は湊が暗にこもるため、番をで任されることもあった。子は事をしているだけのつもりでいたが、佳乃から「の仕事をしているのだから賃を帳簿につけなさい」と言われ、初めて自分の働いたを数えた。
湊は写真の識を教えるとき、難しい言葉を急に使わなかった。の向き、背景との距、レンズの絞り、印画の濃淡。子が理解できない顔をすると、彼は窓際に子を移して同じ物を違う所から写して見せた。写真ののは何も変わっていないのに、表だけがるく見えたり、肩が縮こまって見えたりした。子はそこに、幼い頃から受けてきたの線をねた。
子は帳簿をつけながら、写真枚が仕がるまでに使うや薬品の値段を覚えた。撮料を受け取っても、全部がの利益になるわけではない。佳乃はその計算を教え、「自分の仕事の値段をっておくのは事なことよ」と言った。子は以、縫い物枚の代さえらされなかったことをいした。
ある、を過ぎた井しのがでに来た。
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夫の遺をしくしたいという依頼だったが、持参した写真はさく、傷もかった。湊は修復にがかかると説した、「ご自の写真も撮りませんか」と勧めた。しのはを振った。「こんなしわだらけの顔、残しても仕方ないよ」。その言葉を聞いた子は、わず顔をげた。
「しのさんのも、緒に写したいです」。子は自分でも驚くほど自然に言っていた。しののは太く、指の節が曲がり、の畑仕事で爪のにのが残っていた。しのは困ったように笑ったが、子が「そのでお母さんの浴も縫ってくださったんでしょう」と尋ねると、しだけ背筋を伸ばした。「ああ、澄さんの帯を直したのは私だよ」。
湊は撮を子に任せた。子はしのの子を窓からしし、元に母の裁縫箱から持ってきた糸巻きを置いた。しのがその糸巻きに触れた瞬、固かった表がやわらいだ。子は息を止めてシャッターを押した。現像した写真には、齢を隠さないしのの顔と、働き続けてきたが静かに写っていた。
「私、こんな顔をして笑うんだね」。写真を受け取ったしのは、しばらく黙ってからそう言った。子は褒め言葉を期待していたわけではなかったが、胸の奥がくなった。しのは写真を枚余分に注文し、くなった夫の写真の隣に置くのだと話した。
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子は帳簿に代を記しながら、誰かが自分の姿を見て嫌な気持ちにならない写真を撮りたいとった。
撮の、子は暗で初めて印画が像を結ぶところを見た。いのにしのの指先がゆっくり浮かび、次に目元のしわが現れた。子はわず息をのんだが、湊はを測る計を見ながら、薬液からげる頃いを教えた。写真は魔法ではなく、細かな仕事の積みねなのだとった。
夜、湊は子が撮った写真を机に並べた。「にが当たりすぎています。でも、表はいい」。褒めるときも直すときも同じ声だった。子はし悔しくなり、翌朝もう度撮の練習をした。失敗した印画を隠そうとすると、湊は「失敗を残しておくと、次に何を変えるか分かります」と言った。
その週末、しのが友を連れて戻ってきた。友は仕物を伝っている女性で、「自分の働いているところを撮ってほしい」と言った。子は初めて自分の名を指名されたことに驚き、湊に相談した。湊は撮料の部を子の仕事として帳簿に記し、「どこで何を写すかは、あなたが決めてください」と言った。子のさな仕事が、町のでき始めていた。
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