"金色の髪を隠して嫁いだ私と、無口な写真師の約束" 第11話
勝に印刷された嫁
片桐の葉を止めるため、子と湊は翌朝、隣町の原印刷所を訪ねた。のには活字と油の匂いが漂い、印刷のそばに見本刷りが何枚も積まれていた。原慎という若い職は、湊の名を聞くと作業を止めた。「写真の使用について、ご本の許があると聞いていました」。子は見本を枚受け取り、自分が度も承諾していないことを伝えた。
原は注文を持ってきた。発注者は片桐で、写真の使用許欄には「親族承」とかれ、の名が添えられていた。湊の撮った写真をどうやってに入れたのか尋ねると、原は「の窓を撮り直したものを原稿として受け取った」と答えた。印刷用に使うには画質が悪く、職としては気になっていたらしい。子は、誰かが自分の顔を硝子越しに盗み撮りしたことをり、わずを握りしめた。
「印刷を止めていただけますか」。子が尋ねると、原はの奥を見た。「版はできていますが、まだ本刷りには入っていません。ただ、注文主から取り消しの指示がないと、うちも困ります」。湊は自分が撮した写真であることを示すネガと注文記録を差しし、片桐には使用を許していないと説した。原はしばらく考え、「なくとも今の作業は止めます」と答えた。
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写真館へ戻るで、子は自分のが震えていることに気づいた。に叱られたときは、黙っていればいつか終わった。しかし今は、黙っていれば何千枚もの葉が町に回り、らないが自分を見に来ることになる。湊は歩調をわせ、「怖いなら、しばらく窓の写真をしてもいい」と言った。子は首を横に振った。「私が決めて飾った写真まで、あのたちの都で引っ込めたくありません」。
印刷所をる、原は見本刷りの余に、使われた原稿の受取をいてくれた。子はそのを折らずに持ち帰り、湊の注文帳と緒に保管した。写真を撮るときの約束が、の記録によって守られることもあるのだ。を押し殺して黙るのとは違う、静かな抵抗の仕方を子はつ覚えた。
そのの午、片桐が写真館に押しかけてきた。「印刷所に圧力をかけたそうだな。町の催しを潰す気か」。湊は先での論を避け、応接へ通した。片桐はの契約更を持ちし、町の顔役に逆らって商売が続くとうなと脅した。子は湊が答えるに、注文の写しを机に置いた。「私の名で許をしたのは誰ですか。叔母さんが承しても、私が承したことにはなりません」。
片桐は子を見ろした。「嫁入りしたばかりの娘が、ずいぶんを利くじゃないか」
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。子は臓の鼓をじながらも、目をそらさなかった。「齢の話ではありません。私が写っている写真の話です」。湊は子の言葉を遮らず、片桐が持参した類の内容をつずつ確認した。結局、片桐は返事を保留し、の催しで使う別の写真を探すと言って帰った。
夜、湊は契約と帳簿を机に広げた。賃は滞納していないが、建物の所者は片桐の叔父で、契約更の条件が変わる能性はあった。子は自分の写真枚のためにを失うのではないかとになったが、湊は「を守るためにあなたを売るなら、写真館を続けるがない」と言った。その言葉を聞いた子は、するより先に、別の疑問を抱いた。
「私がいなければ、こんなことにならなかったでしょうか」。湊は首を振った。「違います。断られたことを認めないが、勝にしたことです」。子は初めて、自分のが騒ぎを招いたのではないとえた。は写真館を続ける方法をにきし、収入と支を確かめた。問題はまだ何も解決していなかったが、怖さを数字に置き換えると、次に何をするべきかがし見えてきた。
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