"金色の髪を隠して嫁いだ私と、無口な写真師の約束" 第16話
所を失っても
がづくと、写真館には引っ越しのための箱が積まれ始めた。湊は古い乾板やネガを枚ずつ包み、子は客の注文帳を代ごとに理した。しいの契約は無事に結べたが、事費を抑えるため、暗の棚や撮用の子は自分たちで運ぶことになった。子は慣れないい箱を持ちげて腰を痛め、湊に笑われるどころか、しばらく座って休むよう言われた。
移転の準備と並して、子は働くたちの写真をか所に集めて展示したいと考えていた。しのの、文代の堂、初枝の裁ち台、魚の朝の景。撮したのうちが展示を承諾し、写真のに名と仕事を記してよいかもずつ確かめた。名をしたくないには「町の仕職」とだけき、顔をしたくないの写真は元だけにした。
初めは公民館のさな会議を借りる予定だった。ところが申し込みの数、管理から「別の事が入った」と連絡があり、予約を取り消された。子が程表を確かめにくと、部はそのも空いたままだった。管理は気まずそうに目をそらし、片桐の名をにしかけてやめた。子は鳴り込む代わりに、借りられない理由をにいてもらえないかと尋ねた。
管理は困り果てた顔で、「私のでは決められない」
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と答えた。子は無理に迫らず、展示に協力してくれるたちへ事を説した。しのは話を聞くなり「所ならあるよ」と言い、駅裏の空き舗を指した。しい写真館になる所は、事が終わるまで棚がなく、広い壁が残っている。子はそこをだけ借り、展示を先にけないかと考えた。
湊は壁の度との入りを確かめ、佳乃は来客用の子を所から借りられるよう配した。文代は堂の仕事が終わってから掃除を伝い、初枝は写真を飾るための布を縫った。子は誰かに無理をさせたくなくて、伝いのをずつ聞いた。しのは「みんな自分の写真が飾られるのを楽しみにしているんだよ」と言った。子はその言葉を聞き、展示がもう自分のものではないとった。
展示する写真の順番を決める作業には、った以にがかかった。子は顔の写真ばかりを並べると、働くのがれるとじ、具や仕事の写真をに入れた。湊は全体のの濃さをそろえるために焼き直しを引き受けた。の考えがい違うこともあったが、理由を話せば別の案を試せた。
準備の途、湊が古い写真を枚持ってきた。の川辺で撮った子のろ姿だった。「これも展示に入れますか」。子はしばらく考え、首を横に振った。
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「あの写真は、まだ私だけのものにしておきたいです」。湊は何も言わず封筒に戻した。子はその様子を見て、写真を撮られたことより、そのに選べることの方が切なのだとった。
展示の案内には、子自のカラー写真を載せなかった。代わりに、しののが糸巻きを持つ黒写真をさく印刷し、「この町で働いてきたたち」と題した。原印刷所がない枚数を引き受け、裏面には撮したの名を並べた。子は自分の名がほかのたちと同じきさで載っているのを見て、うれしくなった。特別な髪の娘ではなく、の写真を撮るとしてそこにいた。
ところが展示の、片桐から通のが届いた。観振興会の名で、子の写真を使わない代わりに、展示の板から「篠原写真館」の名をすよう求める内容だった。理由は、町の事と誤解されるからだという。湊は苦笑したが、子はを丁寧に折り直した。「名を消したら、今度は誰の仕事なのか分からなくなります」。
子は返事をいた。展示は観振興会とは無関係で、協力者の許しを得てくこと。写真館の名は撮者をらかにするために記していること。誤解を招かないよう、案内に主催者と所を記すること。返事を読み終えた湊は「それでいいといます」
と言い、封筒を閉じた。子は窓のを見た。の板をすがづいていたが、自分の仕事まで消えるわけではなかった。
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