みかん小説
本棚

"桑の音が消えた村" 第7話

空になった繭籠

の終わり、トヨのでは蚕が次々と繭を作り始めた。枝のにいさな塊が増えていくたび、子はほっとしたが、放しではべなかった。隣の佐は空の蚕箔をへ積みげ、その横で娘のが制の袖を繕っている。学へ持っていく裁縫具まで節約するようになり、々の台所からは魚の焼ける匂いが減っていた。

子は祖母の繭を荷する伝いをしながら、の々を訪ねた。どのがどれほど蚕を失ったか、の肥料代をいくら借りているか、次の養蚕へ向けて桑が残っているかを聞いて回った。数字を尋ねられると恥ずかしがるもいたが、子は自分のの事から話し始めた。「うちも修の学のことを考え直さなくちゃいけない。隠してても腹は膨れないから」。その言葉にしずつをくが増えた。

の側にむ助は、桑畑を減らして蕎麦を作ろうとしていた。若い嫁は町の製糸へ稼ぎにくと言い、姑はを空ける嫁を責めている。原田のでは、牛を売るかどうかで夫婦喧嘩が続いていた。養蚕の被害は繭の数だけでなく、つつの族の予定を壊していた。子は皆の話を聞き、父が「のため」という言でまとめていたもののに、こんなにも違う事があることを初めてった。

広告

その晩、子が集めた帳面を慎造へ見せると、父は最初だけ真面目に読んだ。だが、佐の負債の欄へ来たところで閉じてしまった。「そんなことは俺もってる」「ならどうするの」「組が資を借りて、の蚕種をまとめて買う」。子は首を振った。「葉が使えるか分からないのに、蚕だけ買ってどうするの」。父は「までには何とかなる」と言ったが、その根拠を示せなかった。

翌、農協の窓で子は、組がすでに相当の借入れをしていることをる。共同の噴使用料、薬剤代、夫賃。さらに次の養蚕のため、信用払いで蚕種を仕入れる相談までんでいた。父はのを静めようと、次の収入が入る提で話をめていた。子は怖くなった。次も失敗したら、の誰もが返せない借を抱えることになる。

帰りで健に会った。彼は共同倉庫の仕事をやめ、父の野とはほとんどをきいていないと言った。「俺が類を見せたとって、親父はってる」。子が詫びると、健は笑って首を振った。「止めるべきところで黙ってたのは俺も同じだ。昨から桑畑のと葉を、散布した所としなかった所で分けて預かってる」。子は健の作った図を見て、初めて共同散布の経が各戸の桑畑を横切るように描かれていることに気づいた。

「トヨばあさんの畑だけ、杉林の向こうで切れてるだろ」。健は図に指を置いた。「けれど佐さんの畑は、噴が通った畝の隣から採ってる。全部同じように撒いたとい込んでたけど、実際には濃さも刻も違ったはずだ」。子は図を畳み、佐のへ急いだ。確かめたいのは犯の名ではなく、どこの桑がまだ使える能性を持っているかだった。

戸をけた佐は、子の顔を見るとし困ったように笑った。「何か分かったのかい」「まだ。でも、桑を全部捨てなくていいかもしれない」。佐はすぐ笑顔を消した。「希望を言うなら、確かめてからにしておくれ。もう度失敗したら、うちは本当にっていられない」。子はくをげた。その約束だけは守ろうと決めた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: