みかん小説
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"桑の音が消えた村" 第12話

借の名

の蚕種を減らすことが決まると、今度はする現が目に見える形になった。の各戸が支払う農具代や肥料代、組が括して借りた資の返済、までの米代。子は帳面に項目を分け、約束した相と支払をいた。これまでは慎造と野のがので調していたが、両方とも都の悪い数字を族にも隠してきたため、誰も全体を把握していなかった。

野のを訪ねると、健の父は病のように横たわっていた。妻が「今は話せません」と言い、戸を閉めようとする。健は母を制し、「父さん、の帳面を見せてくれ。俺がらないなら、皆にはもっと分からない」と頼んだ。野は布団から起きがり、息子の顔を見たあと、古い箱を指さした。そのには借用証や領収控えが束になっていた。

子は枚ずつ付を理した。すると妙なことが分かった。共同で借りたの部は、の被害がるずっとから返済が遅れていたのである。薬剤の購入費だけではない。古い噴の修理代、の共同倉庫の根代、組の会計を埋めるための期借入れまでなっていた。慎造は「今回さえうまくいけば返せる」と考え、野は「あとでえればいい」と数字を先送りしてきた。

「農事組のを勝に使ったんですか」

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と子が尋ねると、野は首を振った。「盗んだわけじゃない。みんなで使っただ。でも、払ったと集めたがってなかった」。健は父の言い訳を遮り、「それなら先に見せればよかった」と言った。野の目が赤くなった。「今さら言うのは簡単だ。りないと言ったら、誰も次の作業にをさなかっただろう」。子は黙り、帳面の余へ「承認したが」とき込んだ。

数、融を扱う組の担当者が集会所へ来た。子たちが示した帳簿を見て、返済を度で求めるのではなく、現状の作付けと収入の見通しをすよう提案した。ただし全額を免除するわけではない。誰がどの支を承認したか、今の組運営をどう改めるか示す必があった。たちは「がすぐに入る話ではないのか」と落胆したが、子は初めて現実なが見えた気がした。

帰りに佐のへ寄ると、佐は町の選果へ働きにく支度をしていた。子が仕事の紹介状を渡すと、佐はそれを何度も読み、「朝と夕方には帰ってこられるんだね」と確かめた。子どもたちをへ残し、自分だけくへみ込むつもりだった彼女にとって、夕方にへ帰れることはきかった。子はその顔を見て、帳簿を理することもの暮らしを守る仕事なのだとった。

帰宅すると修が台所にいた。彼は学の願を度しまい込んでいたが、子にそれを見せ、「働きながら勉できる学も調べた」と言った。子は弟がの事を見て自分で考えたことを嬉しくった。慎造も話を聞き、以のように「俺が何とかする」とは言わなかった。「その学へくなら、費用を緒に計算しよう」と答え、修の隣へ座った。

そのの夜、トヨは子へさな包みを渡した。昔の計帳だった。祖母の若い頃の失敗や、病気で蚕を失ったの借が、古い字で記されている。「誰が偉いかを決める帳面じゃない。誰が何を背負ったか忘れないための帳面だよ」。子はその言葉を胸に、のしい帳面の最初の頁へ付を記した。

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