"桑の音が消えた村" 第18話
祖母の蚕をける
がけ、昭のがづいた。解けが畑の脇を流れ、桑の枝にはさな芽が見え始めた。トヨは相変わらず朝く起きたが、の終わりに邪をこじらせてから、い桑籠をでは持てなくなった。子が伝おうとすると、祖母は嫌がることなく、「じゃあその代わり、おが畑を見ておくれ」と言った。
子は祖母の畑にち、のに伸びた枝の状態を確かめた。昨の事故を境に、では養蚕を続けると、ほかの仕事をにするがはっきり分かれつつあった。昔のように全戸が同じ期に同じ量を飼うことは難しい。だが、それがの終わりだとも子はわなくなっていた。桑を減らしたでも畑仕事は残り、稼ぎのでしい具を買うもあった。
祖母の蚕を共同の学びにしてほしいという申しがあったのは、その頃だった。若い嫁たちが、病気の兆しや桑の扱い方を教わりたいと願っていた。トヨは「わしに教えられるのは経験したことだけだ」と言いながら、窓のを張り替え、棚を掃除する準備を始めた。子は相談所の久保田にも来てもらえるよう頼み、しい識と祖母の経験を緒に聞けるを作った。
しかし慎造は、蚕をで使うという話を聞いて、最初だけ顔を曇らせた。
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かつて自分の決定に従わなかった母のが、今度はのになることに、複雑ないがあったらしい。トヨは息子を呼び、「おも来なさい」と言った。慎造が「俺がいたら皆が嫌がる」と断ると、祖母は笑った。「違えたが番よく聞かなきゃならんだろう」。
その頃、子のところには隣のからもが訪ねるようになっていた。共同散布で被害がたという噂が広まり、何を使ったのか、どうやってて直したのか聞きたいと言うのである。子は隠さず帳面を見せたが、「この通りにすれば丈夫」とは度も言わなかった。畑も季節も違うから、必ず元の指導員に確かめてほしいと伝えた。のが欲しがった簡単な答えを、よそのへ渡すわけにはいかなかった。
最初の、蚕にはほどが集まった。久保田は畑の状況に応じた桑の扱い方を説し、薬剤については種類と使い方を記録し、分からなければ指導関へ確認することが必だと話した。トヨはそので、昔から使ってきた具を見せた。「このの箸は便利だけど、汚れたまま使えば何の役にもたない」。若い嫁たちは頷き、子は具の洗い方と置き所をへいた。
講習が終わると、が祖母に尋ねた。「おばあちゃんは、どうしての薬が危ないってったの」
。トヨはし考え、「分からんことを、分かったことにしてなかったからだよ」と答えた。「わしもらない薬だった。それならまず確かめなきゃならん」。子はの朝をいした。祖母だけが正しかったのではない。祖母はらないことを認めていた。その違いが、の蚕の命を分けたのかもしれない。
その晩、慎造が祖母の台所へで来た。トヨは湯を沸かし、分の茶を淹れた。「母さん、これからも蚕を飼うかい」と慎造が聞くと、トヨは頷いた。「できるはね。でも、でやらなくていいなら、そうしたい」。慎造はしばらく考え、「今は俺が桑を運ぶ」と言った。祖母は笑い、「先に子へ予定を聞きなさい。今度は勝に決めるなよ」と返した。
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