みかん小説
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"自治会を抜けたら、ごみを返されました" 第20話

黒いファイルのない

しい規則ができてからかほど過ぎた頃、スーパーの帰りで恵さんを見かけた。最初は誰か分からなかった。黒いファイルを抱えておらず、片にはねぎのびした買い物袋、もう片方には値引きシールの貼られた豆腐が入っていたからだ。いつもきちんとまとめていた髪も、でし乱れていた。

私はスーパーの袋のの卵が割れないよう、持ちを握り直した。恵さんの方も、ねぎが袋から落ちそうになってし困った顔をしていた。役職の名がなくなれば、私たちは同じ町で買い物をするの女でしかない。それでも、以の言葉がなかったことになるわけではないと分かっていた。

は狭く、どちらかが端に寄らなければすれ違えない。私は以のように気まずくなって目を伏せるのも、わざと堂々と歩くのも嫌だった。恵さんが先に端へ寄り、私もし体を斜めにした。目がうと、彼女はさな声で「おはようございます」と言った。午なのに朝の挨拶がたのが笑しかったが、私は「こんにちは」と返した。

それだけで終わるはずだったのに、恵さんはしち止まった。「しいネット、使いやすくなりましたか」。私は「より袋がはみさなくなりました」と答えた。彼女は頷き、「から替えた方がいいとっていたんだけど、ほかの仕事が先になって」

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と言った。言い訳のようにも、ただの世話のようにも聞こえた。

恵さんの目が瞬、昔の自治会館の方へ向いた。私には、彼女がどれほどいをあの建物で過ごしたか分からない。けれどのにかけてくれた話や、祭りで釣り銭を数えていた姿は覚えている。謝していることを取り消さずに、違っていた点を指摘するのは難しい。それでも、どちらか方だけを選ぶ必はないとった。

「役員の仕事、かったですものね」。私がそう言うと、恵さんは買い物袋を持ち直した。「でも、任せてもらっていたから」。彼女はそこまで言ってを閉じた。私は続きを待たなかった。昔の仕事を全部誇りにってもいいし、違ったところは違ったと認めてもらいたい。そのつは同にあってよいはずだった。

別れ際、恵さんが「ごみ袋のことは、あそこまでしなくてもよかったのかもしれませんね」と言った。私は驚いて顔をげた。謝罪と呼ぶには回しだったが、彼女のから初めて聞く言葉だった。「私は、す所がなくて困ったんです」と答えると、恵さんは「そうでしょうね」とだけ言った。私たちは互いにをげ、それぞれのへ向かった。

角を曲がると、源さんがいつもの子をかぶって歩いてきた。「黒田さんと話したのか」

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と聞くので、私は「挨拶しただけです」と答えた。源さんは「それでええ」と言い、歩く速さを変えなかった。私は隣を歩きながら、自治会館の古い写真を元の封筒に戻したか尋ねた。彼は「ちゃんと戻した。写真はなくしても、あの所を作ったことは忘れん」と言った。

「昔から、って便利な言葉ですね」。私がそう言うと、源さんはし考えた。「便利だからこそ、何が昔からなのか確かめんとな」。私は笑い、写真のでまだ若かったたちの顔をい浮かべた。の誰かが決めたことを、今のがずっと同じ形で守る必はない。ただ、なぜそう決めたのかをることにはがある。

に戻ると、台所の窓から夕方のが差し込んでいた。夫とんでいたきなを放し、このさなを選んだ、私は誰にも迷惑をかけず静かに暮らせればいいとっていた。けれど、迷惑をかけないことと、自分の困りごとを言わないことは違う。私は買ってきた豆腐を蔵庫にしまい、次の清掃当番のをカレンダーにき込んだ。

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