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"出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜" 第2話

物置のと千切れた通話

物置——その言葉がする景が、亮平の脳内で恐ろしい像を結び始めた。

自宅の階、暗い廊の突き当たりにある、わずか畳らずの納戸。普段は古聞の束や使わなくなった扇、掃除や脚が雑然と押し込まれている窓のない空。器具などあろうはずもなく、はたい基礎コンクリートのにい板が打ち付けられているだけの、文字通りの倉庫だった。

「物置で寝かせるって……どういうことだ!? 気はついているのか!?」

「つけたらダメって……つけたら、おばあちゃんにられるからって……」

美の声は、寒さのせいか歯の根がわなくなっていた。

「ママがね、お布団の代わりに用のいタオルケットをかけて、ずっとぎゅって抱っこしてくれてるの。でもがたくて、痛いの……。パパ、助けて……」

受話器の奥から、カタカタと震えるさな体の気配が伝わってきた。

自分のだ。自分が汗流してローンを支払い、妻と娘を守るために築いたはずのだ。その所で、妻と歳の娘が、たい物置に閉じ込められ、暗ので震えている。

「苗! 代わってくれ、苗!」

亮平の叫びに応じるように、話から苗の息を呑む声が聞こえた。

『あなた……どうして……』

「どうしてじゃない! 母さんは何をしてるんだ! なぜそんなところにいるんだ!」

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『お義母さんが……妹の由紀さんたちが急に来たからって……寝を空けろって……。私たちは嫁と女の子だから、ここで分だって……』

苗の言葉は、酷い悪寒と疲労に濁っていた。

『断ったら、美を連れててけって……鍵をかけられて……』

そのだった。

ギィィ……と、受話器の向こうからい引き戸がきしむような音が微かに漏れ聞こえた。

『……っ! 美、隠しなさい!』

苗の鳴にい囁き。続いて、バチリという鋭い破裂音のようなノイズがり、プツリと通話が途切れた。

ツーツー、ツーツー。

無質な切断音だけが、ホテルの静まり返った部に虚しく反響した。

「もしもし!? 美! 苗!」

亮平は画面を連打した。しかし、呼びし音すら鳴らず、「おかけになった話は波の届かない所にあるか、源が入っていないため……」という械音声が淡に流れるだけだった。バッテリーが切れたのか、それとも母のによって取りげられたのか。

画面が暗転したスマートフォンを握りしめたまま、亮平は膝から崩れ落ちた。

「俺は……俺は何をしていたんだ……」

界が激しく歪み、喉の奥から乾いた呻きが漏れた。

『お義母さん、私のスマホを勝に見ようとするの』

『美に、ママは必ない子だって言ったらしいの』

苗が幾度となく発していたSOSの数々。そのすべてを「考えすぎだ」「母さんも悪気はない」

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と握り潰してきたのは、ならぬ自分自だった。母親の勝な支配欲に目を瞑り、妻の耐忍を「の広さ」と都よくすり替え、娘の怯えを「成の過程」と言い訳して放置してきた。

その傲と怠のツケが、今夜、最も残酷な形でする妻子にを剥いていた。

亮平はちがり、デスクのの計を睨みつけた。午分。

千歳空港発の京き最終便は、疾うにびっただった。の始発便まで待つ猶予など、分秒たりともない。氷点の物置で、歳の子供が晩を耐えられるはずがなかった。体温症、あるいは精神な傷。最悪の事態が脳裏をよぎり、全の血が逆流する。

亮平は迷うことなく、スマートフォンで全国の交通網を検索し始めた。

千歳からの夜便はない。だが、函館まで夜特急かタクシーでれば、あるいは青森きの夜フェリーに接続できるか。いや、千歳空港の始発便は午半。それまでに羽田へ直する段はにないのか。

画面をい入るように見つめ、亮平の指が止まった。

夜の緊急チャーター便、もしくは羽田きの貨物継便に付随する臨席。民航空会社の夜デスクへ直接話を叩き込む。

「千歳から羽田へ、今すぐべる段はないか! どんな席でも、いくら掛かっても構わない!」

受話器を握る指先が、自の激しい拍にわせてく軋んでいた。

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