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"出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜" 第6話

のの簒奪者

亮平のので、しわだらけになった『産持分譲渡契約』の端が細かく震えていた。

りで血圧が急昇し、蓋の奥でドクンドクンと激しい脈が波打つ。文字面を追うごとに、胃の底からい酸が逆流してくるような吐き気を覚えた。

『産持分譲渡』『無償譲渡』『美の親権を放棄し、速やかに退』——。

「母さん……これはいったい何だ。説しろ」

亮平のくをうような声音は、もはや息子としてのそれではなく、徹な告発者の響きを帯びていた。抱きかかえられた美が、父親の異様な気迫に怯えたようにさな指先で亮平のシャツをく握りしめる。

貴子は揺を瞬わにしたものの、すぐに元を歪め、ふんとを鳴らした。培ってきた「母親という絶対の権威」を盾にして、無理やり押し通そうとするき直りだった。

「何よ、その目つきは。親に向かってそんなを利くもんじゃないよ。体ね、このは誰のおかげで建ったとってるの? あんたをに育てげたのはこの私よ。息子の持ちなら、母親である私のものも同然じゃないの。それを、この嫁がが物顔で居座って、私を邪魔者扱いするから……し権利関係をきっちり理して、族の序列を教え込もうとしただけよ」

「族の序列だと?」

「そうよ! 由紀のところの翔太ちゃんは男の子で、将来はこの宮崎の督を継ぐ子なのよ。

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美ちゃんは女の子なんだから、いずれへ嫁いでいくでしょうが。嫁の持分なんて定なものを残しておくより、由紀に名義を移して、このを本として確固たるものにするのが親の務めでしょう!」

その言葉が、貴子の喉から何の躊躇もなくびしてきたことに、亮平は背筋が凍るいがした。

督、本、跡取り——そんな代な妄言で塗り固められた欲の塊。

このを建てる際、百万円のうち百万円を面してくれたのは、ならぬ苗の実の両親だった。苗が独代からコツコツ貯めていた貯も全額投入され、残りの宅ローンも夫婦共働きで折半して返済してきたのだ。母の貴子は、父の遺産を自らの遊興や着物に浪費し、このの建築費には円たりとも資していなかった。それどころか、同居を始めてからの活費すら銭も払わず、費も費もすべて亮平夫婦の座から引き落とされていたのだ。

「騒がしいわね……何なの、朝から」

リビングの引き戸が乱暴にかれ、パジャマ姿の由紀が目をこすりながら現れた。

しかし、廊につ亮平の姿を認めた瞬、由紀の眠気は瞬に吹きんだ。元をふらつかせ、壁にをついてずさりする。

「お、お兄ちゃん……? なんで……張はまでじゃ……」

「由紀、おもだ」

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亮平は契約の束を由紀の胸元へ突きつけた。「お、夫と喧嘩してく当てがないから泊めてくれと言って転がり込んできたんじゃなかったのか? なぜ苗の持分をおに譲渡させる類がする? 答えろ!」

「そ、それは……」

由紀の線が激しく泳ぎ、助けを求めるように貴子を見た。貴子は舌打ちをし、由紀のにちふさがった。

「由紀を責めるんじゃないよ! 由紀の旦の浮気が原因で、あの子は着の着のままで追いされそうになってるんだよ! に迷いそうな妹を助けるのが兄貴の役目だろうが! このには部がいくつもあるんだから、苗さんが実へ引き取られて、由紀と翔太ちゃんがここにめば丸く収まる話じゃないか!」

「丸く収まるわけがあるか!」

亮平の声が、吹き抜けの廊に轟いた。

窓ガラスがビリビリと共鳴し、階の階段のすりが微かに震えた。美がビクッと肩を震わせ、苗がそっと美のを塞ぐ。

「の庭を破壊し、自分の孫と嫁を真の物置に閉じ込めておいて、何を勝な理屈を並べているんだ! 犯罪だぞ、これは! 監禁罪であり、未遂罪だ!」

「か、監禁だなんてげさな!」由紀が切り声をげた。「晩をやせって言っただけじゃない! 物置の鍵だって、ちょっと紐で縛っただけで……!」

「自したな、由紀」

亮平はポケットからスマートフォンを取りし、画面の録音アプリの止ボタンを押した。

「今の会話、全部録音させてもらった」

貴子と由紀の顔から、完全に血の気が引いていくのがにとるように分かった。

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