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"出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜" 第7話

鍵穴の断絶

え切った廊に、張り詰めた沈黙が落ちた。

苗の元は依然として定まらず、コンクリートの気を吸い込んだ体は刻みに震え続けていた。亮平は美を片腕でしっかりと抱き直すと、空いたで苗の腰をく引き寄せた。

「苗、美。階へって、着替えと最限の貴品だけまとめてくれ。今すぐこのをる」

「え……あなた、てくの?」

苗のげな問いに、亮平は力く頷いた。

「このを捨てるんじゃない。おたちを全な所へ避難させるんだ。母さんたちをこのままのさばらせておくつもりは毛ない。のことはすべて俺が片付ける」

「うん……」

苗は美のを引き、元を引きずるようにして階へがっていった。階段を踏みしめるの音がざかるのを、貴子と由紀は呆然と見送るしかなかった。

分、着替えを詰めたさなボストンバッグをにした苗たちがりてきた。美は亮平のウールコートにを包み、父親のに隠れるようにして玄関へとむ。

「亮平! 待ちなさいよ!」貴子が鬼の形相で駆け寄ってきた。「母親を放りしてどこへく気だい! こののローンを払っているのはあんたかもしれないけど、あんたを産んだのは私よ! 親を捨てる気かい!」

「捨てるんじゃない、切り捨てるんだ」

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亮平は度も振り返らず、靴を履いた。

「今から弁護士のところへく。警察にも相談する。母さんたちに与える猶予は今の夕方までだ。それまでに自分たちの荷物をすべてまとめて、このからてけ。鍵は置いていけ」

「冗談じゃないわよ!」由紀が喚き散らした。「私たちにく当てなんかないのよ! ホテル代だってないのに、どうしろっていうのよ!」

「ったことか。自分の夫と話しうなり、実のマンションへ帰るなり勝にしろ。を過ぎて歩でもこの敷内に残っていれば、法侵入と退罪で即座に通報する」

亮平は玄関ドアを押しけ、をへ送りした。

朝のたいが吹き抜け、朝が宅の根を照らしていた。庭のチューリップの球根の脇を通り抜け、表通りで拾ったタクシーにで乗り込む。

向かった先は、駅にあるシティホテルだった。

亮平は最階のコネクティングルームを部確保し、フロントで「宿泊客以の部者のち入りを切禁止する」旨を徹底させた。

部に入ると、温かい空調と清潔ないベッドがを迎えた。美はベッドの端に腰をろすと、部のドアの鍵穴をじっと見つめ、ぽつりと言った。

「パパ……ここ、鍵かかる?」

その言が、亮平の胸の奥を鋭利なナイフで突き刺した。

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歳の子供が、して眠るためにまず「鍵」を気にしなければならないという異常事態。

「ああ、かかるよ」亮平は美のにしゃがみ込み、え切ったさなを包み込んだ。「ここは絶対に全だ。おばあちゃんも、由紀おばちゃんも、誰も入ってこれない。パパがずっと見張っているから、していいんだよ」

美の瞳から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。緊張の糸が切れたように、娘はベッドのに倒れ込み、シーツに顔を埋めて眠りに落ちていった。

苗もまた、ソファにく沈み込み、震えるで温かいお茶のカップを握りしめていた。

「苗、本当にすまなかった」

亮平は妻のに膝をつき、くをげた。

「俺がもっとく、おの声にを傾けていれば……こんな恐ろしい目に遭わせずに済んだ。俺は夫としても、父親としても失格だ。許してくれとは言えない」

苗はしばらく黙ってお茶を見つめていたが、やがて静かに首を横に振った。

「……話をもらったとき、本当に来てくれるとはわなかった。張を放りして、朝番に帰ってきてくれたこと……それだけで、私は救われたわ。でもね、あなた。あのたちは、これで引きがるようなたちじゃないわ」

「分かっている。だからこそ、徹底に法で包囲する」

亮平はちがり、コートを羽織り直した。

「鍵を配して、自宅のシリンダー錠をすべて最のディンプルキーに交換してくる。それから弁護士事務所へ直する。が目を覚ます頃には、すべての筈をえて戻るから」

苗はさく頷き、亮平のをく握り返した。その指先には、まだ微かなたさが残っていたが、絶望のは消えっていた。

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