みかん小説
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"婿との温泉旅行で、仲居から渡された「逃げて」のメモ" 第5話

娘の名がある類

を分ほどり、正は駅のさな商宿へ移った。女将は事を細かく尋ねず、油ストーブをつけた畳の部に通してくれた。周は自分の着替えと運靴を持たせ、帰りの賃まで封筒に入れて差しした。「返せるに返せる相へ返せばいい。義父がよくそう言っていました」。正はその言葉を聞いて、胸の奥がくなった。

夜を過ぎ、正は宿の話を借りて美咲へかけた。見らぬ番号にた娘の声はかったが、父だと分かると黙り込んだ。「の宿はた。酒はんでいないし、判も押していない」。正がそう伝えると、美咲は受話器の向こうで泣きした。転んでも涙を見せなかった娘が、息を詰まらせながら何度も「ごめんなさい」と繰り返した。

達也は、産への投資を始めたという。最初だけ配当が入り、元が戻らなくなると借をして別の案件に注ぎ込んだ。美咲が結婚から積みてていた貯も、いつのにか引きされていた。「通帳を見せたら、夫婦のだろうって。必ず返すって言われて、ずっと信じようとしてた」。その額は百万円に達していた。

頃から達也は、正のを担保にすれば借が片づくと言い始めた。美咲が断ると「おが頼めないなら俺が直接やる」

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と鳴り、父親に余計なことを話すなとを押した。温泉旅の話がた、美咲はになったが、達也が「お父さんへの罪滅ぼしだ」と言ったのを信じたかったのだという。正は妻の言葉をいした。つらいほど平気な顔をする子だと、吉は最まで娘を案じていた。

美咲は写真を撮ったのことを詳しくいした。達也がしたあと、庭用の複にが枚残っていたのだ。普段なら夫の仕事の類だとって触れなかったが、父の所が見えたのでが止まった。原本を持ちせば気づかれると考え、携帯話で表裏を撮って元へ戻した。そのさな判断が、になっての財産を守るがかりになった。

「親は配するためにいるんだ。配をかけてもらえない方が寂しい」。正はそう言い、翌会って話そうと約束した。話を切ると、巾着から実印と苗のメモをして畳に並べた。はまだ自分の名義で、判も押していない。だが達也が本当に欲しかったのが担保なのか、それとも売却代なのか、正にはまだ分からなかった。

翌朝、始発で川越へ戻る途、正は達也が内でにした数字をいした。「あの辺りなら、坪当たり……」。話を遮ったため最まで聞かなかったが、営業職の男がの値段を持ちした理由は、今なら分かる。

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正は帰宅するとすぐ、付きいのある司法士の野へ話を入れた。事を話した野は、朝番に登記の状態を調べようと約束してくれた。

そのの夕方、美咲がへ来た。正が焼いた鮭と里芋の煮物をべ終えた娘は、夫の鞄を見たことがあると言いした。「この、コピーにが残っていたの。お父さんのの番がいてあって、怖くて写真だけ撮った」。携帯話の画面には、〈産売買契約・案〉と題した枚が映っていた。売主の欄には桐正、売却予定価格には千百万円とある。

正が指で画面を拡すると、別の署名欄に目が止まった。〈同確認者 桐美咲〉。そのには、娘の跡によく似た名がき込まれていた。「これ、私がいた字じゃない」。美咲は顔を青くして言った。さらにの隅には、〈決済確認 最終曜〉という付があった。温泉から戻る翌朝に、何かがく予定だったのである。

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