みかん小説
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"白線の先の女たち" 第4話

空きの線

に入ると、男たちの競には相変わらず観客が詰めかけた。方で女たちの控は閉められ、扉に貼られた名札もされた。久美子は顔見りの元選をずつ訪ねたが、ほとんどの返事は同じだった。「りたい。でも暮らしがある」。その言葉を否定できず、集まる数はたったにとどまった。

定吉は港にい倉庫の裏に、舗装された広い敷があると教えてくれた。箱を積んでいた所で、曜には荷がほとんど通らない。持ち主の運送会社と相談すれば、の練習くらいはできるかもしれないという。久美子と子は見にき、チョークでする輪を描いてみたが、実際の競輪のような傾斜も、周回距もない。

「これじゃ競輪になりませんね」。子が言うと、久美子は面の凹凸を見つめた。「だから競輪とは呼ばない。自転の速さを見せる会にする」。互いの距を取ってり、目印のを往復する技術も披する。賭けも、順位による賞もなし。なくとも全を守りながら、女の選がまだっている姿をにすことはできるかもしれなかった。

会を借りる話は簡単にはまなかった。運送会社の社は、事故が起きたら誰が補償するのかと尋ねた。久美子は「私が」とにしかけ、横から定吉に袖を引かれた。

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いくらかかるかもらずに引き受けてよいものではない。澄子がに必なものをきした。救護担当、入禁止の縄、の順番、止の判断、貸し切る、費用。競のさだけでは、は集められなかった。

久美子は再び冴子を訪ねた。断られるとっていたが、冴子は縫い物のを止めて言った。「怪の怖さをらないに仕切らせないなら、私が伝う」。な返事だった。冴子は昔、落で肩を傷めてか休んだ。仕事に戻ったとき、親方に「怪だけは自分持ちだ」と言われた悔しさを覚えている。「私がらなくてもいい。るのそばで、やめろと言う係が必でしょう」。

ようやく練習のが決まった。選は、見物は族と所の子どもだけ。久美子は夜、競用の自転を磨きながらし落ち着かなかった。きなスタンドも束もないのに、初めて競へたのような胸の苦しさがあった。自分たちが何かを始める。その期待と同じだけ、失敗したらどうするというがあった。

曜の朝、は倉庫裏に集まった。冴子が入に縄を張り、澄子が名を記したを掲げた。子が最初にったが、角を曲がるたびに速度を落とさねばならず、以のような迫力はない。見ていた子どもたちは拍したものの、子は悔しそうに頬を膨らませた。

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「速くなれない所じゃ、私たちを見てもらえない」。

そのの昼、久美子はかつての競輪の周囲を自転でゆっくりった。男子選が練習する輪の音は壁の向こうから聞こえるのに、自分たちの控へ続く扉だけが閉まっている。久美子はもう度へ入れてほしいと頼もうとして、いとどまった。入れてもらったところで、次の女子の競はない。競へ戻れるかどうかを誰かの気分に委ねるより、次に何を始めるかを自分で考えたかった。

その、倉庫の表できな声がした。社が血相を変えてってきたのだ。「誰がここで商売をしていいと言った!」。表へると、見らぬ男が入にち、片を配っていた。そこには『女子競勝敗当て 円』と印刷されていた。久美子たちは誰も、その男をらなかった。

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