"誤爆LINEの夜" 第7話
張先で決めたこと
翌朝、俺は予定通り幹線へ乗った。
もできなかった。
それでも張をキャンセルする気にはならなかった。
仕事まで壊されたくなかったからだ。
取引先との打ちわせは、目ののことだけに集した。
けれど休憩になると、スマートフォンには子から量のメッセージが届いていた。
《昨は本当にごめんなさい》
《帰ってきたらちゃんと話したい》
《青とはもう会わない》
《健太も本当に何でもないから》
《お願いだから会社のには言わないで》
どの文章にも、「あなたを傷つけた」という言葉はなかった。
あるのは「ごめん」「許して」「会社には言わないで」。
そして自分の保。
昼休み、俺は昔の友に紹介してもらった弁護士事務所へ話を入れた。
婚問題に詳しいをお願いした。
そのの夜、オンラインで簡単に事を説した。
弁護士は淡々と聞いた。
「誤送信されたメッセージは残っていますか?」
「通のスクリーンショットがあります」
「写真は?」
「保しました」
「ご自宅での会話は録音?」
「はい」
「相の男性がご主のを認識していたかがになるがあります。青さんについてはどうでしょう」
俺は考えた。
同じ会社だ。
俺と子が夫婦であることは、社内ではられている。
青は確実にっていたはずだ。
「っています」
広告
「では、今は直接に交渉しないほうがいいです。証拠を消される能性もあります」
弁護士は、必以に相の携帯を勝に見るようなことはせず、自分の元へ正当に届いたものや、自宅で確認できる範囲を保するように言った。
俺はその助言に従った。
張目。
子から、
《今夜話できる?》
と来た。
俺は断った。
《帰宅してから話す》
それだけ送った。
しばらくして、
《婚だけは嫌》
と返信が来た。
そこで初めて、子が結婚そのものを失う能性を識したように見えた。
だが俺の気持ちは逆だった。
晩れてみると、りよりも別のがきくなった。
怖さだった。
俺は、緒に暮らしてきたのことを、どれだけっていたのだろう。
隣で寝ていた妻が、俺の張を数え、ホテルへ泊まるよう誘導し、そのに男をへ入れていた。
しかも。
もしかしたら、まだいる。
そんな相と「反省したから」という理由だけで再び暮らせるのか。
答えはもうていた。
張最終の夜。
俺は子へ通だけ送った。
《帰った翌、弁護士と話す》
既読はすぐについた。
話が鳴った。
なかった。
回。
回。
回。
最には、
《そこまでしなくてもよくない?》
というメッセージが届いた。
俺はその文章を見て、婚を決めた。
そこまで。
子にとって、これは「そこまでしなくてもいいこと」
なのだ。
俺は幹線の窓に映る自分を見ながらった。
りの勢いで婚するのではない。
復讐のためでもない。
もう度信じることができない。
それだけで分だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」
交通事故で車いす生活となった恋人・明菜と、もう一度穏やかな日常を取り戻そうとしていた聡。明菜の誕生日、二人は思い出のフレンチレストランを訪れる。しかし待っていたのは、食事時間の一方的な短縮と、三万三千円もの「迷惑料」だった。因果応報|人生逆転|真相|修羅場2.8万字5 23 -
完結第20話
婿との温泉旅行で、仲居から渡された「逃げて」のメモ
七十歳の元大工・桐山正三は、婿の達也に誘われ、信州の温泉旅館を訪れる。亡き妻との思い出に浸るはずだった夜、仲居から渡された一枚のメモには、「その酒を飲まず、裏階段から逃げてください」と書かれていた。達也が狙っていたのは、正三が妻と築き上げた家と土地だった。必死に逃げ帰った正三を待っていたのは、娘の貯金六百八十万円の行方と、身に覚えのない不動産売買契約書。なぜ仲居は危険を冒してまで彼を助けたのか。家族の財産と娘の人生を守るため、老大工の静かな反撃が始まる。怒り|親不孝|真実|親子関係|修羅場2.8万字5 1644 -
完結第18話
父の一周忌、兄が追い出そうとした母子の契約書
父の一周忌を終えた翌朝、45歳の西村綾子は、空き家のはずの実家で見知らぬ母娘に出会う。兄の正人は「不法占拠だ」と警察を呼ぶが、12歳の少女が差し出したのは、亡き父の署名が入った三年間の賃貸借契約書だった。さらに兄は、綾子に無断で実家の売却を進めていたことが判明する。父はなぜ、家族にも知らせず母娘を住まわせたのか。そして、兄がそこまでして家を売ろうとする本当の理由とは。父の遺した一枚の契約書から、家族が隠してきた秘密が次々と明らかになっていく――。怒り|真実|絶縁|親子関係|修羅場2.2万字5 216 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 14 -
完結第20話
花嫁のいない結婚式
結婚式を翌日に控えた長谷川由衣は、胃痛を訴える婚約者・黒田瞬のために、心を込めて雑炊を作っていた。ところが彼の部屋の前で耳にしたのは、「あいつはただの身代わりだ」という残酷な本音。三年間の愛情も、婚約指輪も、純白のドレスも、すべて元婚約者の代わりだったと知った由衣は、誰にも告げず空港へ向かう。翌朝、二百人の招待客が待つ式場に花嫁は現れなかった。人生逆転|真実|裡の顔|第二の人生|修羅場2.9万字5 22 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 28 -
完結第16話
四万円を断った朝
同僚に裏切られ、二千万円近い借金を背負った大橋拓人。再就職の面接へ向かう朝、雨の道路でパンクした車を見つけ、遅刻を覚悟でタイヤを交換する。女性から差し出された四万円を断り、代わりに面接先まで乗せてもらった拓人。しかし会社に到着すると、受付の社員たちが彼女に深々と頭を下げた。職場逆転|人生逆転|真相|修羅場2.5万字5 7 -
完結第18話
剣を捨てない花嫁
八歳の春、父から「今日からお前は息子だ」と告げられた澄は、道場の跡取りとして剣だけを教え込まれて育った。だが十九歳の秋、待望の弟が生まれると、父は突然、借金の肩代わりと引き換えに彼女を久世家へ嫁がせてしまう。女らしい振る舞いができず、屋敷の人々に笑われる澄。そんな彼女に夫の春臣だけは優しかった。ある月夜、春臣から差し出された木刀を握った瞬間、二人の間に隠されていた七年前の縁が明らかになる。そして澄は、自分の婚姻にまつわる思いがけない秘密へと近づいていく。時代|歴史|親子関係|修羅場1.8万字5 44 -
完結第10話
出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜
札幌へ出張中の宮崎亮平に、深夜十一時、八歳の娘・美和から一本の電話がかかってきた。 「パパ、ママと物置で寝かされてるの。寒いよ……」 半年前から同居を始めた母の貴子は、妻の早苗と娘を冷遇していた。しかし亮平は、妻の訴えを「母さんに悪気はない」と聞き流し続けていた。 翌朝、急いで帰宅した亮平が見つけたのは、外から扉を固定された物置で震える妻と娘。そして早苗が隠し持っていた一枚の契約書だった。 そこには、妻の不動産持分を妹へ無償譲渡するという信じがたい内容が記されていた。 家族を守るはずの家で、母と妹はいったい何を企んでいたのか――。祖父母と孫|真実|裡の顔|真相|親子関係1.5万字5 623