みかん小説
本棚

"孫に「ここに居たければ黙れ」と言われた私が、翌朝家を出た理由" 第7話

守らなかった息子

蓮斗のがれたあと、私は壁にもたれたまま呼吸をえた。護師だったころの癖で、まず自分の識がはっきりしているか、にしびれがないかを確かめた。首をかすと痛みがり、部にも鈍いさが残っていた。ではが夫の写真のへ広がり、誰かの靴が濡れていた。

「おばあさん、丈夫ですか」

蓮斗の友のが、ためらいながら声をかけてくれた。私は「ありがとう。帰り、気をつけてね」と答えたが、はすぐにはかなかった。蓮斗は「げさなんだよ」と吐き捨て、真理恵は「お母さんも言い方を考えてください」と私を責めた。私は孝太だけを見た。息子は私の襟元の乱れを見ているのに、妻にも息子にも何も言わなかった。

「孝太。あなたは、今見たことをどううの」

しばらくの沈黙のあと、孝太は「蓮斗、もう寝なさい」と言った。それは私への返事ではなかった。蓮斗は舌打ちし、友たちを玄関へ追いてた。私は孝太にもう度尋ねようとしたが、彼は「、落ち着いてから話そう」とだけ言い、濡れたを拭き始めた。私が傷ついたことより、目のの騒ぎをく片づけたいのだと分かった。

寝に戻る、私は夫の写真を抱えて仏へ入った。弘がきていれば、蓮斗を鳴りつけたかもしれない。いや、きっと最初に私の肩を確かめ、「病院へこう」

広告

と言っただろう。夫は数のないだったが、困ったときに何を優先するかを違えないだった。私は写真を仏壇の横に置き、をわせずにしばらく座っていた。

計が午零を回ったころ、首の痛みがくなってきた。私は救急相談窓に話をかけ、症状を説した。識ははっきりしていても部への衝撃があったことを伝えると、今夜受診できる医療関を案内された。私は孝太の部をノックし、病院へくのでをしてほしいと頼んだ。息子は寝着姿でてきたが、「今から? の朝じゃ駄目かな」と言った。

その返事を聞いて、もう頼まないと決めた。私は千鶴に話をかけ、事をく伝えた。夜にもかかわらず、彼女は度目の呼びしでてくれた。「けるなら玄関で待ってて。タクシーで迎えにくわ」。私は必な薬と保険証を持ち、音をてないようにをた。階からはテレビの音がかすかに聞こえていた。

病院では首の状態を診てもらい、部を打った経緯も医師に説した。きな異常が見つからなかったことに堵したが、医師は症状が変わったの注点を丁寧に教えてくれた。診察の記録が残ることも、私には切だった。病院をると、千鶴は何も尋ねず温かいお茶の入った筒を差しした。

広告

「幸子、今夜はうちへ来なさい」

病院の待で、千鶴は私のを握りながら「これからどうしたい」と尋ねた。私はすぐに答えず、まず今夜起きたことを携帯話のメモにき始めた。刻、部にいた、蓮斗が言った言葉、孝太の返事。いているうちに、誰かに信じてもらうためだけでなく、自分が事実から目をそらさないための記録なのだと分かった。

医師に説するとき、私は「孫にやられました」と言うまでしがかかった。にした途端、それが庭ののさな論ではないと分かったからだ。診察をるころには、恥ずかしいのは私ではなく、暴力を放置した状況のほうだとえるようになっていた。

私は首を横に振った。「度だけ戻らせて。持っていかなきゃいけないものがあるの」。千鶴は黙ってうなずき、玄関まで付き添ってくれた。私がに戻ると、リビングの気は消えていた。孝太からの着信は件もなかった。私はその静けさので、息子が私を守らなかった事実を、ようやく自分のものとして受け止めた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: