"孫に「ここに居たければ黙れ」と言われた私が、翌朝家を出た理由" 第17話
私のための部
私は千鶴のにく世話になりすぎないよう、さな賃貸宅を探し始めた。弘と暮らしたを売るかどうかはまだ最終決定していなかったが、自分の活の拠点は別に持ちたかった。駅から歩いて分ほどのLDKを見つけたとき、向きの窓から入るが気に入った。台所は狭く、収納もくない。それでもで暮らすには分だった。
産会社の担当者は、私が歳だと聞くとし慎な顔になった。保証会社の審査や緊急連絡先について説され、私は収入と預貯の資料を用した。千鶴は「困ったときの連絡先なら私でいいわ」と言ってくれたが、私はその親切に甘えるに、利用できる見守りサービスも調べた。誰かに負担をかけずに暮らす方法を、今度は自分で選びたかった。
引っ越しの、運び込んだ具はさな卓と子脚、布団、器棚だけだった。夫の写真を窓辺に置くと、部が急に落ち着いた。私は鍋で根の煮物を作り、分ではなく分のご飯を炊いた。しだけ作ることに慣れず、ついめに野菜を切ってしまったが、それをの昼にべればいいとうと、肩の力が抜けた。
「幸子、こんなに静かで寂しくない?」
伝いに来た千鶴が尋ねた。私は窓をけ、くをるの音を聞いた。
広告
「寂しいときもあるとう。でも、誰かの音に構えなくていいのは、こんなに楽なのね」。千鶴は笑って「それなら、は私がうるさくしに来ようか」と言った。私は「はで本を読みたいわ」と答え、で声をげて笑った。
翌週、私は域の健康相談会へ顔をした。千鶴が以から関わっている活で、護師経験のあるが伝えるを探してくれていた。私は最初、参加者として子に座っていたが、担当者から血圧測定の準備や案内を頼まれた。の話を聞き、必なを適切な窓へつなぐ仕事は、続けてきた護の仕事と通じるものがあった。
相談会の帰り、代の女性に声をかけられた。「さっきはゆっくり説してくれてありがとう。病院では忙しそうで、こんなこと聞いていいのか迷ってしまうの」。私は「分からないことは何度でも聞いてください」と答えた。そのがしたように笑うのを見て、久しぶりに自分の経験が誰かの役にったとじた。族の世話だけが、私にできることではなかった。
夜、私はしい部の計簿をつけた。賃と費、費、医療費を見積もっても、無理のない暮らしができそうだった。これまで毎の支払いに追われ、貯蓄が減るのを見るたびにをじていたが、今は先の見通しがつ。
広告
通帳の数字が急に増えたわけではない。それでも自分で決められるおが戻ってきたことは、っていた以にきかった。
健康相談会の担当者は、私に無理のない参加回数を尋ねてくれた。私は最初、頼まれれば毎週でも来られると言いかけたが、途で言葉を変えた。「に回から始めてもいいですか」。担当者は「もちろんです。く続けてもらえるほうがうれしいです」と笑った。誰かの役につときにも、自分の限界を伝えてよいのだとった。
私はしいの図を買い、歩ける範囲にある公園やを赤い鉛で囲んだ。以なら族の買い物を済ませるために急いで帰っていたを、今はゆっくり歩ける。さなパンで員と季節の話をしただけで、そのがしるくじられた。
私は引きしから弘の封筒を取りした。封はまだ切っていなかった。しい部でなら読める気がしたが、指をかけたところでが止まった。夫が何をいていても、今の選択が正しいかどうかを夫に決めてもらうことはできない。そううと、はもうしだけ、自分の気持ちが落ち着いてからきたくなった。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」
交通事故で車いす生活となった恋人・明菜と、もう一度穏やかな日常を取り戻そうとしていた聡。明菜の誕生日、二人は思い出のフレンチレストランを訪れる。しかし待っていたのは、食事時間の一方的な短縮と、三万三千円もの「迷惑料」だった。因果応報|人生逆転|真相|修羅場2.8万字5 23 -
完結第10話
すり替えた味噌汁
検事任官の最終面接を迎えた朝、神田玲奈は義母が自分の味噌汁に何かを混ぜる姿を目撃する。夫にも相談できないまま、玲奈は不審な味噌汁を密かに保管し、何食わぬ顔で食卓に戻った。同じ日、義妹の彩佳も三度目の教員採用試験に挑もうとしていた。玲奈が彩佳と味噌汁の椀を交換した瞬間、義母は血相を変えて叫び出す。嫁姑|第二の人生|金銭問題1.4万字5 9 -
完結第18話
父の一周忌、兄が追い出そうとした母子の契約書
父の一周忌を終えた翌朝、45歳の西村綾子は、空き家のはずの実家で見知らぬ母娘に出会う。兄の正人は「不法占拠だ」と警察を呼ぶが、12歳の少女が差し出したのは、亡き父の署名が入った三年間の賃貸借契約書だった。さらに兄は、綾子に無断で実家の売却を進めていたことが判明する。父はなぜ、家族にも知らせず母娘を住まわせたのか。そして、兄がそこまでして家を売ろうとする本当の理由とは。父の遺した一枚の契約書から、家族が隠してきた秘密が次々と明らかになっていく――。怒り|真実|絶縁|親子関係|修羅場2.2万字5 216 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 14 -
完結第20話
花嫁のいない結婚式
結婚式を翌日に控えた長谷川由衣は、胃痛を訴える婚約者・黒田瞬のために、心を込めて雑炊を作っていた。ところが彼の部屋の前で耳にしたのは、「あいつはただの身代わりだ」という残酷な本音。三年間の愛情も、婚約指輪も、純白のドレスも、すべて元婚約者の代わりだったと知った由衣は、誰にも告げず空港へ向かう。翌朝、二百人の招待客が待つ式場に花嫁は現れなかった。人生逆転|真実|裡の顔|第二の人生|修羅場2.9万字5 22 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 28 -
完結第16話
四万円を断った朝
同僚に裏切られ、二千万円近い借金を背負った大橋拓人。再就職の面接へ向かう朝、雨の道路でパンクした車を見つけ、遅刻を覚悟でタイヤを交換する。女性から差し出された四万円を断り、代わりに面接先まで乗せてもらった拓人。しかし会社に到着すると、受付の社員たちが彼女に深々と頭を下げた。職場逆転|人生逆転|真相|修羅場2.5万字5 7 -
完結第10話
出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜
札幌へ出張中の宮崎亮平に、深夜十一時、八歳の娘・美和から一本の電話がかかってきた。 「パパ、ママと物置で寝かされてるの。寒いよ……」 半年前から同居を始めた母の貴子は、妻の早苗と娘を冷遇していた。しかし亮平は、妻の訴えを「母さんに悪気はない」と聞き流し続けていた。 翌朝、急いで帰宅した亮平が見つけたのは、外から扉を固定された物置で震える妻と娘。そして早苗が隠し持っていた一枚の契約書だった。 そこには、妻の不動産持分を妹へ無償譲渡するという信じがたい内容が記されていた。 家族を守るはずの家で、母と妹はいったい何を企んでいたのか――。祖父母と孫|真実|裡の顔|真相|親子関係1.5万字5 623 -
完結第18話
出産の日に捨てられた私の逆転
身分を隠し、愛する夫との平凡な幸せを選んだスー・ジーイェン。 しかし出産を目前にした日、夫のティンフォンは別の妊婦に付き添い、破水した妻を病院で見捨てた。 「俺が戻るまで勝手に産むな」 助けを求めても冷たく突き放され、絶望の中で彼女が押したのは、七年前に父から渡された銀色のペンダントだった。 その五分後、病院の空気が一変する。 身寄りのない女だと見下されていた彼女には、誰も知らない秘密があった。 夫の裏切りから始まった悲劇は、やがて病院全体を揺るがす巨大な不正へとつながっていく――。夫婦|第二の人生|親子関係|修羅場|不倫2.1万字5 1645