みかん小説
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"花嫁のいない結婚式" 第8話

誰のものでもない搭乗券

ボーディングブリッジを渡る際、朝の澄んだが体の隙から吹き込んできた。 午分。内へを踏み入れると、客乗務員が穏やかな笑顔で会釈を返してくれた。 「おはようございます、川様。お元にお気をつけください」 渡された搭乗券の半券に印字された文字を、私は親指の腹でそっとなぞった。

【PASSENGER: HASEGAWA / YUI MS】

今、もし予定通り式を挙げていれば、私の名は数には『黒田由』という、見らぬ記号へとき換えられているはずだった。 彼のの格式にわせ、彼の親族にをげ、彼の元恋のに怯えながら名乗るはずだった偽りの姓。 だが、このチケットに刻まれているのは、父と母から譲り受け、私が積みげてきた、私自の誇りある本名だった。

座席は、主翼のしろの窓際だった。 荷物をのコンパートメントに収め、シートベルトを締める。 スマートフォンの画面を内モードに切り替える直、度だけ源を入れてみた。 画面がちがった瞬、ものすごい勢いで通のポップアップが画面を埋め尽くした。

瞬からの着信履歴、件。 瞬の母親からの着信履歴、件。 そして、LINEの通バッジは件を超えていた。

そので、午半に実の母から届いたいメッセージだけをいた。

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『由、今、式のホテルに着きました。控のにっていた瞬君に会いましたよ。「由さんは来ません、式は止です」とだけ伝えました。彼は幽霊でも見たような顔をして、過呼吸になりかけて崩れ落ちていました。あちらのご両親が鳴り込んできましたが、お父さんが歩も引かずに「理由はお宅の息子に聞け」と突っぱねてくれました。もう配いりません。良い旅を』

画面を閉じる私の元に、たい笑みが浮かんだ。 今頃、あのの見えるチャペルの控では、純のモーニングを着た郎が、狂乱と屈辱の渦に呑み込まれているはずだ。 百の参列者がロビーに集まり始め、受付が始まり、やがて司会者から「本の挙式は、婦側のい申しにより止となりました」という残酷なアナウンスが響き渡る。 完璧をし、の目を何より恐れていた男にされる、公衆の面での刑宣告。

「……自業自得よ」

私はスマートフォンの源を完全に落とし、鞄の奥くへと沈めた。 午ちょうど。型旅客の輪がい音をてて滑をれ、私の体は気に力から解放された。 窓のには、に広がる京湾の青い原と、さく霞んでいく京の並み。 私がし、信じ、そして裏切られた所が、いの彼方へと消えっていく。

私のしいを乗せた翼は、の空へと力く度をげていった。

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