みかん小説
本棚

"花嫁のいない結婚式" 第11話

反撃のデータフォレンジック

アパートの窓ガラスを激しく叩く帯のスコールが、静まり返った部に反響していた。 机のに置いたノートパソコンの液晶画面が、徹な青いを放っている。 私は元のグラスに注いだを気にみ干すと、キーボードのに指を置いた。 瞬が周囲にばら撒いたあの醜悪極まりない嘘――『由は数ヶから計画に準備し、キャリアのために式をドタキャンして逃げた』という物語。 それを根底から瓦解させるための第歩は、な反論ではなく、改ざん能な「子タイムスタンプ」を突きつけることだった。

私は本本社で使っていた社用メールのアーカイブサーバーへリモート接続した。 検索窓に『シンガポール赴任』と打ち込み、ヶの送信トレイをく。 すぐに見つかった。事部および商品発本部宛てに送信した、正式な辞退届のメールだ。

送信: 分。 件名:シンガポール支社赴任打診に関するご回答および辞退のお願い。 本文には、私自の跡として、こう記されていた。 『この度の過分なご評価、より謝申しげます。しかしながら、内に予定しております結婚ならびに今の庭活を最優先に考えたくじます。誠に勝ながら、今回の赴任の打診につきましては辞退させていただきたくお願い申しげます』

私は画面を凝しながら、唇の端を吊りげた。

広告

これこそが、私が彼のために自らのを切り捨てた、紛れもない証拠だった。 計画に逃げる準備をしていたが、ヶに本部のでをげ、千載遇の昇辞令を自ら棒に振るはずがないのだ。

続けて、式夜――末のログを抽した。 タクシーのから本部の社用携帯へ送信したショートメッセージの送信刻は、分。 本部からの折り返し通話の履歴は、分。 さらに、羽田空港のベンチから航空会社の予約サイトでシンガポールきの片チケットを決済したクレジットカードの利用細データ。 決済:翌未、分。

(ヶの辞退メール、そして式夜の午くになって突如として発した通信ログ)

このつの事実を系列に並べれば、誰の目にも真実はだった。 私は式の夜半を回るまで、本に残って結婚する気満々だったのだ。 その半からのに「何か決定な破綻の原因」がじたからこそ、夜にチケットを買い、翌朝の便で国をびさざるを得なかった。 私が数ヶから逃を企てていたという瞬の主張は、この通のデータフォレンジックだけで完全に息の根を止められる。

私はそれらの画面キャプチャをPDF形式にまとめ、タイムスタンプ付きの子署名を付与した。

そして、姉の彩子から事に紹介されていた都内の法律事務所――『百法律事務所』のオンライン相談フォームをいた。 担当弁護士である佐藤(さとう)女性弁護士宛てに、静かつ事務な文面を打ち込んでいく。

『結婚式当のキャンセル料百万円に関する損害賠償請求の代理交渉、ならびに郎・黒田瞬氏による事実無根の名誉毀損に対する法措置を依頼いたします。破綻の真の理由は郎側の背信為にあり、客観証拠を添付いたします』

送信ボタンをクリックすると、画面には「受付完」のダイアログが表示された。 敵が狡猾に世論を操作しようとするなら、こちらは法のメスでその喉元を掻き切るまでだ。 私の反撃の蓋は、赤直のので静かに切って落とされた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: